第2話 過去の囚われ

ローゼ「ふわぁぁ、眠い…」

ケイト「そうだな…」

ローゼ「zzz…」

ケイト「歩いたまま寝るなよ!」

ローゼ「あ…ごめん」

俺は眠い、だがローゼの方が倍ぐらい眠そうだ

暖かな明かりが灯る宿屋に着いた

ローゼ「おじいさん、これで泊めてくれない…」

ローゼは白く輝く銀貨を取り出した

「はい、部屋は上だよ」

よぼよぼとした爺さんは、かすれていて苦しそうな声を出した

ローゼ「ここだって…ふわぁぁ」

ケイト「寝ぼけてスッ転んだりするなよホントに」

ローゼ「わかってるって…」

ローゼは扉を開けるなり鎧とその下の服を脱いで、下着だけになった

俺は照れで目を咄嗟に塞いだ

ケイト「おい!ここで脱ぐなよ!」

ローゼ「え?ケイトは脱がないの?」

ケイト「そういう話じゃねぇんだよ!!」

ローゼ「じゃあどういう話?」

ケイト「知らねぇよ!」

ローゼにあっさり論破されてしまった

ローゼ「ケイト君の服はローゼお姉さんが脱ぎ脱ぎしてあげよーう」

ケイト「おい待て!うわぁっ!」

か細い腕に見合わないゴリラのような腕力で抵抗出来ずにパンツだけにされた

ローゼ「ほーら脱ぎ脱ぎできまちたよー」

ケイト「マジで…お前…」

ローゼ「怒ってるの?」

ケイト「当たり前だろ!」

ローゼ「気が小さい男はモテないぞー」

ケイト「ぎっ!」

血管が浮き出る位イライラする

ケイト「俺は寝るからな!お前も眠いんだろ!」

そう言って目をベッドに落とすとベッドは一つしかなかった

ケイト「(あのジジイやりやがったっ…)」

ローゼ「私も寝るー」

ローゼが先にベッドへ寝転がり先制攻撃を仕掛けた

ケイト「…」

ローゼの布団に入るのはめちゃくちゃ恥ずかしかった

ローゼ「なんでそんな黙ってるのよー」

ケイト「うわっ!」

俺の体をローゼが後ろから抱きしめた

その拍子で俺の股間にローゼの手が当たる

ローゼ「あれ…?何か硬い感触が…」

ケイト「ああーっ!」

ローゼの手を払っう

ローゼ「どうしたの?もしかして…」

ケイト「知らん!もう俺寝るぞ!」

ローゼもしばらくして黙り、熟睡している様子だった

プニプニした感触が肩甲骨に伝わる

そんな感じで思っていると、気を失った



ローゼ「あ、起きた」

ケイト「……何してるんだよって!何してんだよ!」

そこには俺の股間を親指でつついているローゼがいた

ローゼ「なんでここ、こんな山みたいになってるの?ツンツンしたらピクピク… 」

ケイト「ちょっとお前黙れ!速くそのツンツンをやめろ!」

ローゼ「昨日も固かっ…」

ケイト「黙れって!年頃の男の子は…いやなんでもねぇ」

ローゼ「えー言ってよー」

ケイト「何でもねぇって!」

俺は音速で仰向けの状態からあぐらを作った

股間を隠すように前かがみになる

ケイト「昨日のカイトだっけか?あいつにギルドまでこいって言われてるんだ!」

ローゼ「カイトが?どうしたの?鎧に泥でもつけた?」

ケイト「いやそうじゃないが…」

俺は頭をフル回転させ言い訳を考える

ケイト「昨日化け物が俺たちを襲っただろ?それで傷が出来てるか見せろってよ…」

ローゼ「ふーん、私今日は一応休みだから待ってるねー」

ケイト「おう、わかった」

俺は一人で宿の外からでた

元の地球での世界の空気はこの世界の風と比べ物にならないぐらい汚染されている事が一瞬でわかった

すごい快い風だ

昨日の記憶を頼りに、ギルドまで歩いた

しばらく歩くと、昨日の化け物が荒らした地域に入っていた

そこには親を無くし、泣き叫ぶ子供の姿や貧しそうな物乞いの姿がよく目立った

多分姉だろうと思われる亡骸を前に泣いている子供が目に入り、記憶が甦る

ケイト「…お姉ちゃん」

その空間を目の当たりにし、どこの世界も結局は同じと安堵させた、同時に怒り、憎しみも

元の世界よりこの世界は色々おかしいんじゃないかと思い始めた

ギルドが目の前になると、入り口にはカイトが立っていた

カイト「ああ、来たかケイト、ここは明るく人通りが多い、ちょっとあそこで話すか」

カイトは薄暗い路地を指差した


カイト「単刀直入に言うがお前日本人だな?そして異世界人」

ケイト「そ…それがなんだよ」

カイト「なぁお前…」

カイトの目元が暗くなったような気がした

俺は唾を飲み込み、冷や汗を垂らした

カイト「マジで居たんだな!俺と同じような奴!」

ケイト「…え?」

予想の真上を行く発言だった

カイト「いや実は言うと俺もよぉ、1年前ぐらいにここにいきなり飛ばされてよぉ!」

ケイト「そうなのか…ようするにお前も異世界から来たってことだな」

カイト「おおそうだとも!俺たち“相棒”だぜ!」

ケイト「ギルドに13の使徒だっけか、そんな本が落ちてたんだが…」

カイト「俺もお前も13の使徒だぜ!」

ケイト「おお…そうなんだな、なんか能力みたいのはあんのか?」

カイト「俺は“海斗”ってことで海の力が使える、ようするに海水のパワーとか海水自体を操れるんだよ、お前は?恵斗とかか?」

ケイト「俺は…慧人、慧ってことで賢いっていうだけだ」

カイト「ま…まぁそんな事もあるだろ!ドンマイ!って所だぜ!」

ケイト「ははは…(マジでふざけんなリューカとかいう奴!)」

カイト「まぁとりま困ったら俺に相談しろよ!じゃあなー!」

ケイト「また今度だな」

そうして俺は帰ろうとして道を戻った

特に何事もなく宿に戻って、部屋の扉を開ける

ケイト「お待たせローゼ、ってどうしたよローゼ、なんか具合悪いのか?」

ローゼ「ああお帰り、…少し昔の事思い出してた」

ケイト「昔の事ってなんだ?」

ローゼ「…別にケイトに関わる事じゃないから大丈夫だよ」

ケイト「俺が気になったんだよ」

ローゼ「…じゃあ話したく…ない」

ケイト「なぁローゼ」

ローゼ「なによ…」

俺はローゼの両手腕を掴んだ

ケイト「俺も…ローゼの役に立ちたいんだよ!昨日も頼りっぱなしで、俺にもなにかやらせてくれよ!なぁ!」

ローゼ「じゃあ聞かないでよ…それの方が私は嬉しい」

ケイト「あ…」

ローゼに拒絶され、俺は絶望の淵に立たされた

あと少しローゼに嫌われよう物ならその底へ突き落とされるような気がした

ケイト「…ごめんな」

ローゼ「…こちらこそごめんね、なんか自分勝手だよね」

ケイト「…」

しばらく静かになり、冷たい空気が流れる

ローゼが口を開きだした

ローゼ「私ね、バルトっていう弟が居たの」

ケイト「…」

ローゼ「バルトはね、とっても可愛くて、私はバルトだけが生き甲斐だったんだ。でもね…」

ケイト「…」

ローゼ「私が住んでた街がモンスターに襲われたの、それで私はモンスターに床に押し付けられて、その私を助けようとしてバルトは…」

ケイト「…」

ローゼ「私戦ってる時なんか怖いでしょ?それは私が過去に囚われてるからだと思ってる」

ケイト「…」

ローゼ「ケイトってすごくバルトに似てるんだ、だから私はケイト君のお世話をしてるんだよ、なんかバルトへの罪滅ぼしになる気がして」

ケイト「…」

ローゼ「ほらね、私がこの話したらケイト君傷つくかなって…」

ケイト「そんな訳ないだろ!」

俺の声が静寂を切り裂いた

ケイト「なんで!俺に相談しろよ!辛いんなら身近な人に言えよ!少なくとも俺は何を言われても不快にならない!だから…」

ケイト「頼むから…もう君の笑顔を失わさせたくないから…」

ローゼ「…本当にケイトは…」

両腕でローゼに抱きしめられた

「生意気なんだから…」

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