第8話 立てば竜胆、座れば百合、君見る姿はひなげしの⑧

とりあえず、私はエントランスを離れて彼が向かいそうな場所を考える。


教室からエントランスまでは階段と他クラスがあるくらい。

彼に友達がいるって感じもなさそうだから、他クラスに寄るってことはなさそう。

次に思いつくのが職員室。

今朝方遅刻してきた件で担任に呼び出されたとかありえるのでは。

一先ず、私は職員室に向かう。

エントランスからも近いからね。

とかなんとか思っているうちに到着し、早速中に入る。


「しつれいしまーす」


職員室の中は先生方もまだあまり戻ってきていない為、数人の先生がいるくらいだった。

部活の顧問をしている先生が多いし、それも当然か。

きょろきょろと職員室内を見渡すが、お目当の人物は見当たらない。

ここではないらしい。


「どうしたの紅さん?」


入り口付近にいた、別クラスの担任の先生に呼ばれる。


「えっと、人を探してたんですけど、来てなかったみたいです、お邪魔しました」


そう言ってすぐに扉を閉めた。

先生からの追及も特にない為、そのまま1つため息をついて、探索を続ける。


次に行きそうなのは・・・部活?

でも部活をしてるって感じもしないし・・・ 。

彼は見た目も少しひょろっとしてて、あんまり運動部という感じでもない。

強いて言うなら。


そうだ、いつも本を読んでるじゃん。


図書室か。

それなら学校の特別棟の方だ。

教室棟からエントランスを中心とした、反対側に特別棟がある。

ちょうどその一階に職員室もある形だ。

次の目的地が決まった。


-prrrrrrr


と、その時、制服の左ポケットのスマホが鳴る。

誰からだろう。


「はいはーいもしもし」


『ももちんどこ行ったのー!?』


耳にキーンとくる大音量。

私は急な大声にびっくりしてスマホを耳から離す。


『今朝約束したカラオケどうすんのー!?

男子すごい集まってて、合わせて15人くらいで行くことになっちゃったんだけど!』


うわー多いなー。

女子だけで行くといつも5人くらいなのに、男子がくると急にそんな感じになるよねー。


『ももちん目当ての男の子いっぱいいるし、きっと楽しいよー行こうよー!』


あー・・・うん、そうね。

いつもだったら二言返事なんだけど、今日の私はやることがあるのだ。


「ごめん!また今度誘って!じゃね!」


そう言って返事も聞かずに切っちゃった。

あとでメールでも入れとこう。


まったく、私にここまでさせるとは!高槻大地、何者なのだ君は。

と、勝手に一人で彼を脳内でラスボスみたいな感じに仕立てあげる。


よし、図書館に向かおう。

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