5 勇者殺害作戦第一段階
「じゃあ、ルキも旅をしているんだね!」
「ああ。お前みたいにクエストを受けたり人助けするつもりはないから冒険者ではないけどな」
いつの間にかミカエラも敬語を外すようになるほど親密な仲になった二人。この時ルキは、ウキウキと買ったアイテムをバッグにしまうミカエラの隣で、内心込み上げてくる笑いを堪えていた。
そう、これはルキの作戦である。勇者に優しくし仲良くなることで警戒心を無くさせる。そして、魔物が住み着いている森に連れ込み、隙をついて殺す。それが、ルキの考える勇者殺害作戦の全容であった。勇者の少女があっさりとルキを信用したおかげで、計画は順調に進んでいる。
(そろそろあの話題を持ち込んでもいい頃か……)
「なぁ。お前が冒険者なら、ひとつ頼みを聞いてくれないか?まぁあれだ、クエストってや__」
「__クエスト!?うん!やる!」
ルキが言い切る前に被さるようにミカエラは断言した。その目は星のようにキラキラと輝いている。
「ずいぶん食い付くな……俺はまだ何も言っていないが?」
「だって、冒険者になって初めて依頼されたんだもん!任せて!何でもするよ!」
これが別世界なら、「え?今何でもって?」と露骨な反応を示すところだ。しかしルキもそれに似たようなことを思う。何せ本人にここまでのやる気があるのだ。作戦には好都合すぎるのである。
「頼まれてくれるのならありがたい。実は、今日この街を出たところにある森を抜けようと思っているのだが、そこには魔物が住み着いていてな。俺は戦う術を持っていないから、襲われても対処ができないんだ」
「つまり、私がその魔物を倒して、ルキの護衛をすればいいってことね!」
「そういうことだ。森を抜ければ村もある。クエストを受けられたりと、きっとお前の旅に役立つこともあるだろう」
「そうなんだ! 私もこの街を出ようと思っていたけど、特に目的地とかも考えていなかったしちょうどいいわ! ふふっ、旅が楽しみになっちゃった! ね、そうと決まれば早く行きましょ!」
突然ミカエラはルキの手を握る。ルキはまたさっきのような一瞬の胸の痛みを感じるが、それが何なのか、どうしてなのかを考える暇も与えられず、ミカエラに引っ張られて駆け出した。喜びと期待に満ちた笑顔、繋がれた手から伝わる彼女の温もり。今度は心臓の鼓動が速くなっていることにルキは気がつく。
(ほんと……何なんだよこれ……)
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