第185話 パウロ 第二回宣教旅行 2

 フィリピからアンフィポリスとアポロニアを経由して、パウロはシラスとテモテと共にテサロニケに向かいます。


 むち打ちを受けた背中が痛みます。荷物はテモテが持ってくれたことでしょう。


 傷をかばいながら130キロの旅です。


 テサロニケに到着。ユダヤ人の会堂で伝道を開始します。

「彼らと聖書から論じ、キリストが苦しみを受け、そして死人の中からよみがえる事が必要であったことを説明したり、関連した事柄を挙げて証明したりして、『私があなた方に広めているこのイエス、この方がキリストです』と言いました」

 使徒たちの活動17:2~3


 さすがパウロです。大胆に、そして説得力を持って人々の理性に訴えます。


 ここでも幾人かが信者となりました。多くのギリシャ人がパウロの話を信じるようになると、ユダヤ人が妬みます。パウロとシラスを排除するために暴動を起こします。


 パウロとシラスは65キロ離れたべレアに逃げます。べレアでも伝道します。


 パウロはマグロのような男、泳いでいないと死んでしまうように、伝道をしないと死んでしまうのです。知らんけど。


「べレアの人たちは、心が広くきわめて意欲的な態度で聖書の言葉を受け入れ……た」


 べレアの人の特質はおおらかです。懐疑的でも批判的でもなく、パウロの話を聴くと、その通りかどうか注意深く聖書を調べました。イエスがキリストであると確信すると、信者になります。


 残念な事にべレアでもパウロたちは、ユダヤ人に業を行う事を阻止されます。


 パウロは先に一人でアテネに案内されます。シラスとテモテを待つ間、先に伝道を開始。


 アゴラと呼ばれる広場に目をつけました。そこは五ヘクタールもあり、人がうじゃうじゃいます。


 アテネは経済、政治、文化の中心で、ギリシャ中の知識人が集まっている場所です。大学はこのアテネ、アレキサンドリア、タルソスにありました。パウロはタルソス大学出身の高学歴者です。


 パウロは伝道を始める前、あることに気付き義憤を感じます。そこは神殿と女神の像だらけです。今でこそパルテノン神殿は世界遺産ですが、パウロの目から見たら、偶像なのです。


 イライラを抑えて、パウロは知的な論議をしている人に向かって話します。


 エピクロス派とストア派、簡単に言うと哲学者相手に話します。エピクロス派は唯一物に基づく快楽主義者です。神様はいるかもしれないが、人間に無関心なので、普通に生活すればいいという考え方をします。ストア派は、理性的で人格神などいない、復活などあり得ないと考えます。


 そもそも哲学者に伝道するパウロのメンタル強いですね。

「このおしゃべりは何を言おうとしているのか」とバカにされ、アレオパゴスに連れ出されます。


 アレオパゴス丘でパウロは思う存分話す事を許されます。アレオパゴス説教と言われます。


「アテネの皆さん、あなた方は信仰心がおありのようです。町を歩けば多くの祭壇が目にとまります。ところでその中に、「知られない神に」と刻まれたものがありますね。あなた方は、この神様がどういう方かも知らずに崇拝しているわけですが、私は今、この方の事をお話したいと思います。この方は、世界とその中の全てのものを造った天地の造り主です。……この方は全ての人に命を与え、必要な物は何でも十分に与えて下さるのです。神は一人の人間アダムから全ての国民を造りました。……事実、人々が神を求め、神を探し出すため、神は私たちから遠くに離れておられるのではありません。私たちは神の中に生き、動き、存在しているのです。……神は金や銀、あるいは石などで人間が造った偶像のようなものと考えるべきではありません!」

 

 パウロはギリシャ人の信仰心を誉めてから、人間に命を与えている方は、神殿のような狭いところには住みませんよ、まして人間が造った偶像が神様なんてちゃんちゃらおかしいと思いませんか?とオブラートに包んで話します。


 ギリシャの有名な詩人の言葉も引用し、知識人のプライドを刺激します。


 理性に訴えられると、謙遜な人は自分の固執した考えを調整します。


 哲学者でも、高学歴でも、無神論者も、このパウロの演説に耳を傾けて、幾人かが信者になりました。


 イエスがメシアだと信じた者が、イエスを地上に遣わした神に転向したのです。


 皆さま、お好きな考え方、信じ方でどうぞ。


 アテネでキリスト教を伝えたパウロは、コリントに向かいます。

 パウロがんばれー!

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