パウロに恋して

第180話 パウロ 生い立ちと迫害

 新約聖書を語るうえで、パウロはやはりはずせないので、ご紹介します。


 パウロという名前はローマ教皇にも付けられたように、聖人として有名ですね。


 しかし、聖書にはパウロの黒歴史があり、パウロ本人が謙遜にその点を書いています。


 パウロは現在のトルコ、キリキヤのタルソスで生まれました。ベニヤミン族のイスラエル人です。ヘブライ名はサウロです。


 両親は熱心なユダヤ教徒で、生まれはタルソスですが、エルサレムで育てられました。


 金持ちで地位の高い父親は、パリサイ派の信奉者でもありました。なので、サウロはユダヤ人なのに生まれた時からのローマ市民権を持っていました。


 それがあれば、イエスのように十字架刑になることもありません。良かったね。


 サウロはパウロとして、パリサイ派の律法教師ガマリエルのもとで厳格な教育を受けました。


 パウロはヘブライ語とギリシャ語に精通し、ユダヤ教徒として超エリートな人生を歩んでいました。


 とても熱心なユダヤ教徒です。熱心なユダヤ教徒がすることは……イエスの弟子の迫害です。


 イエスが亡くなると、イエスの弟子たちは、キリスト教を広めるためあちらこちらで伝道を開始しました。


 ある日、キリストの弟子ステファノが、伝道した罪でサンヘドリンの裁判で石打ち刑になります。


 パウロが初めて聖書に登場する場面です。彼はまだ青年で、石打ち刑を行う処刑人の服の番をしていました。いわゆる部下の立場です。


「サウロはステファノの殺害に賛成していた。その日、エルサレムの会衆に対して激しい迫害が起こり、使徒たち以外は全員ユダヤとサマリアの全域に散らされた」 使徒たちの活動8章


 新参者キリスト教徒を迫害することが、パウロの使命となりました。


 幼い頃からパリサイ派のラビ直伝「ユダヤ教徒だけが神の民である」と教えられてきたのです。


「パウロは会衆に対して手荒な事をするようになった。次々と家に浸入しては男も女も引きずり出して、これを牢屋に送った」使命活動8:3


ちなみに「使徒たちの活動」を書いたのは四福音書筆者のルカです。ルカは仲間を迫害し牢屋に送るパウロが憎たらしかった事でしょう。


 パウロは来る日も来る日も、イエスの弟子たちを脅し、殺そうと意気込んで、大祭司の所に行きサンヘドリンの裁判にかける許可を得ていました。


 キリストの弟子を石打ちにして根絶する事が、パウロの生き甲斐になっていたのです。


 オソロシヤ。信仰の深さと、信仰心をどう行動に表すのかについて考えさせられますね。


 パウロの親も、教師ガマリエルも人徳があり、穏やかな性格でした。


 パウロの熱心さは本来のものでしょう。イスラエルの神への愛を動機として、キリストの弟子を迫害したのです。


 ではなぜ、パウロはこのあとクリスチャンと呼ばれ、新約聖書の大部分を書く特権を与えられたのか不思議に思いますね。


 次回パウロの改宗についてお伝え致します。


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