第178話 マタイ イエスの死と復活 3

ハナス――「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」イエスが詩編22:1の言葉を言われました。訳すと「我が神、我が神、どうして私をお見捨てになったのですか?」ですね。もう死が近づいています。埋葬され復活までをマタイさんに語って頂きます。


マタイ――イエス様はその言葉を発する事で預言を成就させました。そして「成し遂げられた!」と叫び、ご自分の霊を神にゆだね、息を引き取られました。


ハナス――沒薬を口にしなかったのは、この言葉を言うためだったのですね。もし、意識が朦朧としていたら「ぺテロの奴、裏切りやがって(怒)」と口走ったかもしれませんね。


マタイ――失敬な(怒) イエス様は息を引き取る寸前まで穏やかに、威厳を保っておられました。母親マリアの世話をするよう、うっ、兄弟に、うっ、頼んで……最期までマリアの事を心配しておられました。お優しい方なんです!


ハナス――スイヤセン。……で、イエスが息を引き取られた時に地震が起きたんですよね。神殿では、垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂けたと聞きました。これはイエスを殺した事に対する神様の怒りだったらしいですね。


マタイ――神はご自分の大切な子供が、人間に惨殺されるのを、天から見ておられたんです。それが神のご意志といえ辛かったでしょう。また地震で岩が裂け墓が開いて死体も転がりました。


ハナス――ホラーじゃないですか。イエスを殺したローマ兵は怖かったでしょうね。百人隊長は「本当にこの人は神の子だった!」と叫んだらしいですね。……神殿の垂れ幕が裂けた事は、神がキリストの犠牲を受け入れた事の証しで、人間が天に行けるようになった事を示したとも言われてますね。マタイさんやったね。あなた天国に行けるんですね。(ズルイ。ニゲタクセニズルイ)


マタイ――イエス様は生前、私たちの住む場所を用意して待っていると約束して下さったんです。

イエス様の弟子は死んだら天国に行けるんです!


ハナス――そうですか。そりゃ良かった。……そういえば、十字架刑の死者は引き取り手がないと、そこら辺の穴に放り込まれて、火で焼かれるか、動物と鳥の餌になるんですよね。イエスは?


マタイ――聞いて下さい!嬉しいことにアリマタヤのヨセフが、イエス様の体を頂きたいとピラトに願い出てくれたんです。彼は処刑場から近いところに新しい墓を所有していました。


ハナス――アリマタヤのヨセフ?あの人、確かサンヘドリンの一人でしたよね。まさかイエスの体を頂くって食べちゃうんですか?黒魔術的な‼怖


マタイ――そんなわけないでしょ!彼は密かにイエス様の弟子になっていました。とてもお金持ちなんです。それで上等な亜麻布を買ってイエス様の体を包んでくれました。あっ、ニコデモって知ってます?彼も隠れ弟子で沒薬と沈香を混ぜた高価なもの三十キロ用意してくれました。


ハナス――それはありがたいですね。どちらも勇気を出して信仰を表したんですね。マタイさん達とは大違いですね。


マタイ――ンンっ、神様は適材適所に人をお用いになるんです!私を含めてみんな貧乏ですからね。二人に感謝してるんですよ。


ハナス――ふぅん。……でイエスは新しい墓に埋葬され、三日で蘇る事を怖れたローマ兵に監視されたんですね。祭司長もパリサイ派のオッサンも本当は信じてたりして、笑える。


マタイ――ですね。でも本当に三日目の日曜日の朝、墓が空っぽになったんです。マグタレネのマリアと母親マリアが、その事を報告しに来ました。ビックリしますよ、天使からそう弟子に伝えろと指示されたと言うもんですから。


ハナス――へぇ、警備していたローマ兵は?


マタイ――彼らも天使を見て死んだようになってしまったらしいです。それで、キリストの弟子が遺体を盗んだ事にするよう祭司長にお金を渡され、命令されたようです。


ハナス――隠蔽ですね。よくある話です。弟子達はこのあと、復活したイエスに会えたんですか?


マタイ――うっ、イエス様。ガリラヤの海で魚を焼いて下さったそうです。食いしん坊のぺテロはそれをムシャムシャ食べて、三度の否認を許してもらったそうです。


ハナス――言い方、笑える。あっ、疑い深いトマスは手の穴を触るように言われたんですよね。


マタイ――はい。そのあとガリラヤの山にも現れ、五百人の弟子が目撃しました。そしてイエス様は私たちにこうお命じになりました。

「私は天と地の一切の権威を授かっている。だから、あなた方は行って、全ての民を私の弟子にしなさい!彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなた方に命じておいた事を全て守るように教えなさい!私は世の終わりまで、いつまでもあなた方と共にいる!」


ハナス――そうですか、ずっと共にいて下さるなんて心強いですね。……マタイさん頑張りましたね。今、キリスト教徒がたくさんいるのも、初期クリスチャンの働きのお陰ですね。特にあなたは四福音書を書く特権を与えられて、あなたの名前を知らないクリスチャンはいませんよ。お疲れ様でした。また天国に戻ったらイエスに宜しくお伝え下さい!


マタイ――ハナスさんも、山上の垂訓を当てはめて生活して下さい。きっと幸せな人生を送れます。イエス様の言葉ですから、絶対に!

ではさようなら。


 マタイさんは笑顔で手を振って、天に昇って行きました。お疲れ様でした。


 

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