変わらないもの
勝利だギューちゃん
第1話
生まれ育った村の、最寄駅に降り立った。
高校を卒業してから、都会にでたので、もう10年近くになる。
「変わってないな」
この村を出た時と、全く変わっていない。
ここまで変わっていないと、逆にすがすがしい。
村は変わらなくても、人は変わる。
村に住んでいた時、お世話になった方で、もう他界した方も多い。
「久しぶりだね」
声をかけられる。
懐かしい顔がそこにいた。
高校時代の同級生の女の子だ。
「うん、まあね」
「元気だった?」
「何とか生きてる」
「そっけないね。相変わらず」
「悪かったな」
「まっ、安心したよ。都会色に染まってなくて」
どういう意味だ・・・
「じゃあ、行こうか?」
「えっ」
「みんな、待ってるよ」
彼女に言われて、その後を付いていく。
「みんなって、全員いるの?」
「もちろんだよ、君のお祝いだもん。全員呼び寄せたよ」
「そっか・・・」
正直、会いたくない人もいるんだが・・・
「さっ、ついたよ。私たちの母校へ」
ここも、変わっていない。
ホッとしたような、憎たらしいような・・・
そして、彼女の後をついていく。
教室の前に立ち止まり、彼女はドアを開けた・・・
その瞬間、まばゆい光が視界に入ってきた・・・
ガタンゴトン
「・・・夢?」
僕は列車の中にいた・・・
生まれ育った村に、約10年ぶりに帰る。
浮かれていたのか、日頃の疲れが出たのか、
寝てしまった。
「どうしようもないな」
やがて、列車は駅に着く。
生まれ育った村の駅に・・・
列車の中で見た夢とは違い、すっかり変わっていた。
村とは名のみで、もう町と言っていいだろう。
ショッピングモールができ、道路はアスファルトと化し、
昔のなごりはなかった。
「久しぶりだね、迎えに来たよ」
振り返ると、見知った顔があった。
「変わってないね。すぐにわかったよ」
「この村は、変わったな・・・」
「寂しい?」
「まあな」
でも、住んでいる人にとっては、この方が便利だろう・・・
「さっ、行こう。みんなが君を待っている」
村は変わった。
でも、彼女の優しさは変わらない。
いつまでも・・・
変わらないもの 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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