ヒミツノコイ

「やっと来た。今日は遅かったね、先生」


「ごめん、ちょっと生徒たちに捕まちゃって」


「ハハッ、人気者だもんな」


「そんなことないって」


「――あっ、そうそう、聞いた? この教室のこと」


「え、何?」


「一部の生徒たちからは『ヤリ部屋』って呼ばれてるみたいだよ?」


「えぇ……ちょっとっ……先生にそんな話聞かせないでよぉー……」


「面倒事は嫌いだもんねぇーここもそろそろ使えなくなるかなぁー……」


「そうね……あっ、そうだ。はいこれっ」


「え? なにこれ?」


「誕生日プレゼント。今日でしょ、誕生日」


「あぁーそういやそうだっけかぁー……」


「もう、自分が忘れてどうすんのよ……」


「ありがとっ、


「ちょっと! その呼び方やめなさいって言ってるでしょー? 私あなたより歳上なのよ?」


「ふっ。その歳上の、しかもみんなのお手本となる先生が歳下の、しかも生徒に落とされてるなんて、ウケるね」


「くぅー……あなたのせいなんだからね、こんなにも好きにさせて……」


「ふふっ、先生可愛い」


「ああー! もういいから! それ開けてみて」


「うっす――おっ、腕時計じゃん!」


「うん、身につけられるものがいいと思って」


「ありがと。でもいいの? こんな高そうなもの」


「ええ、あなたもこれから社会に出ていくことになるのだから、それぐらいはちゃんと持っておかないとね」


「なんか、お母さんみたい」


「ちょっとーそういうこと言わない! ただでさえ、歳気にしてるんだから……」


「どんなに年増になったて、俺の天使であることには変わりないよ」


「あっ、ありがと……」


「――それにしても、俺ももう今日で18かぁー」


「そうね、早いものね。あの頃はまだ15だったのに」


「それもおばんくさい」


「むぅー……」


「それよりもさ、てことは、ようやくできるようになったね」


「え、何が?」


「結婚」


「はっ!?」


「いや、法的にはオッケーっしょ?」


「そうだけど……」


「それに俺ももう後数ヶ月で高校卒業なんだし、これでようやく堂々と恋人として街歩けるじゃん!」


「でもあなたはまだ大学があるんだから、まだちょっと早いわよ……」


「ちぇー……でも『まだ』ってことはいずれは――ってことだよね」


「まっ、まあ、その時が来たらね……」


「そっか。それ聞いて安心した。ねえ、日奈子」


「……何?」


「愛してるよ」


「うん、私も大好きっ」

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