妖怪『チョコくれ』

「あーあ……今年も誰からもチョコもらえんかったなぁー……」


「この世の終わりみたいな顔してんねーそんなになる?」


「だって花の高校生がチョコ1つももらえないんだぞ? 俺の人生終わったわぁー……」


「たかがチョコで、そんなに落ち込まないの」


「たかが? 否! 男子にとって、これはッ!」



「いわば、ステータスなのである!」



「す、ステータス?」


「そう! もらった数によってそいつの強さが決まるんだよ! いっぱいもらったヤツは周りの男子から妬まれ、羨ましがられる。もちろん、そんなヤツは完全なるリア充野郎であろう! 俺は、それになりたいッ!」


「はぁーあきれた……」


「ふん、お前には俺の気持ちなんてわかるかいっ!」


「ああー羨ましいぃー! チョコいっぱいもらってるヤツめっちゃ羨ましいぃ! つーか1個ぐらい俺に回してくれたっていいじゃないか、女子たちもよおー! なんで……なんで、俺には誰もくれる人がいないんだ……」


「……ねえ、ちょっと目をつぶって口開けて」


「は?」


「いっ、いいから……」


「こ、こうか……?」


「えいっ」


「んっ!? この苦味交じりの甘さで、口の中に残って後味を残してくこれはッ!?」


「余ってたから、哀れな男子高校生にあげるっ」


「な、なあ、でも……この感じ……てっ、てて、手作りじゃ――」


「さっ、さあねっ」

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