愛を叫べ
「おっ来た来た。おーい!」
「あら、早かったのね。待たせたかしら?」
「いや、大丈夫。そんな待ってないから。それよりもキレイだね、浴衣」
「ええ、当然ですわ! 貴方とのデートですもの、このための特注なんですから!」
「うん、めっちゃ似合ってるよ」
「ありがとう」
「さてっ、ちゃっちゃと行こうか。早くしないと穴場とはいえ、誰かがいい場所取っちゃってるかもしれないし」
「でも、ホントにそんな『穴場』なんてあるんですの?」
「うん、まあ地元民しか知らないような場所だけど。そこ遮るものがないから、花火がちょーキレイに見えるんだ」
「へぇーそれは楽のしみねっ! 早くいきましょっ!」
「そだねっ――」
◇◇◇
「――なんとか始まる前にこれたな」
「だーれもいませんわね」
「そうだねーどうやらボクの思い過ごしだったみたい……ゴメンね、急がちゃって」
「いえ、構いませんわよ。私から言わせれば、こうして……2人きりになれたのですから」
「ハハッ、そっか。んじゃ、どうせ2人きりなんだし、手繋ごっか!」
「えっ!? ど、どうして?」
「いや、なんとなく? そんな気分になったから、かなっ?」
「しょっ、しょうがないですわね……はい」
「うん」
「――おっ、始まった!」
「うわぁ……キレイ……」
「すごいね。それに迫力もハンパない」
「視界も良好、最高の眺めですわね」
「……ねぇ、ちょっと耳貸して?」
「えっ、何ですの?」
『愛してる』
「は、ははっ、ハァ!? な、なななっ、なに言ってますの!?」
「いや、直接言うのは恥ずかしいからさ、花火の音に紛れ込ませたらイケるかなぁーって」
「イケるかなぁーじゃありませんわよ! そういうのは……」
「そういうのは?」
「ちゃんと聞こえるように言ってくださいまし……」
「そっか。じゃあ、改めて――」
「あいしてるうううううううううううううううううううううううう!」
「ちょっと、あなたッ!」
「だって『聞こえるように』って言ったじゃーん」
「もうっ」
「で、返事は?」
「むぅー……しょうがないですわね。すぅーはぁー……」
「私も、あいてしるうううううううううううううううううううううううううううううううう!」
「ハハハハ、すっげぇ声量。これ下にいる人に聞かれてるかもね」
「だとしたら……ちゃんと責任取ってくださいねっ」
「もちろんだよ」
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