第55話 導入部に求められるもの

 Twitterでアンケートを取ってみました。テーマは「どんな導入部なら続きを読みたくなる?」。結果は以下の通りになりました。


 投票数30票


 わかりやすくて共感できるもの―― 23%


 謎めいて興味を引かれるもの――53%


 夢があってわくわくするもの――13%


 スリルやサスペンスがあるもの――10%


 https://twitter.com/Tomatsu_A_Tick/status/1185451919965220864


 なんだ、やっぱり「謎」って強いんじゃん、というのが個人的な感想です。自分もそういうのが読みたいので。ただ、わたしのフォロワーはミステリ読みの方が多いのであんまり真に受けない方がいいかもしれません(いや、リツイートで見た方の投票が多かったとは思うのですが……いつもはこんなに票が集まらない)。「小説の」と指定するのも忘れてますし、「導入」の範囲も曖昧ですのでご注意を。


 なお、上記4つの選択肢は、わたしなりに考えたキャッチーな導入部のパターンだったりします。他には「胸がきゅんとするもの」も浮かんだのですが、それも言ってしまえば「夢があってわくわくするもの」のバリエーションかなと思って選択肢には入れませんでした(選択肢は4つしか設定できませんし)。


 個人的にこの中で一番書くのが苦手なのが「夢」のタイプです。物語に夢……ロマンを求めていないわけでは決してないのですけど……たとえば未来社会だったり、イケメンとか美少女といったわかりやすいロマンにはあんまり興味が持てないんです。


 わたしにとってフィクションにおけるロマンっていうのは物語そのものなんです。日常の延長線上で、何か物語になるような事件が起こってそれに巻き込まれる。その体験自体にロマンを感じるんですね。


 だから、重要なのは、日常と事件の落差ということになります。これが意識された導入部は入っていきやすい。名作『海と毒薬』なんかはこの辺が強く意識されてますね。web小説の基準だと、ちょっとスロースターター過ぎるかもしれませんけど。


 web小説の1話だったら、冒頭の一行で事件を予告し、日常描写、そこから事件に遭遇して2話に続くって形が無難ですかね。


 さて、他の選択肢にも触れておきましょうか。


 意外と伸びたなあ、と思ったのが「わかりやすくて共感できるもの」で、確かに重要な要素かもしれませんが、この選択肢の中からこれを選ぶ――つまり最も重要だと思ってる人がこれだけいるとは思いませんでした。


 だって、「わかりやすくて共感できる」だけのものってちょっと退屈そうじゃないですか? よっぽど新しい視点を持っているか、ドラマチックな展開があるものじゃないと続きを読む気にはなれないかなあ、と。


 一方、最も伸びなかったのが「スリルとサスペンスがあるもの」で……まあ、自分からマイナスな環境を追体験したいという人はあんまりいないのかもしれませんね。あ、でも、プラスの環境を追体験させる「夢があってわくわくするもの」もほとんど同数票なのか。


 ただ、このパターンって、実際に読んでみたら意外と引き込まれるのではないかと思ったり。ゴシップ記事だって読みたくないとは思っても見出しが目に入ったら気にはなってしまうわけで。


 と、そろそろまとめです。結果から分析するに、文字媒体には「わかる」ことの快感が求められているのかなと。2位の「わかりやすく共感できるもの」は言うまでもありませんが、ダントツで1位の「謎めいて興味を引かれるもの」だってけっきょくはその謎が解き明かされること、「わかる」ことが期待されているわけです。プラスにしろマイナスにしろ体験そのもののおもしろさは映像作品の方が強いのかなあ、と。逆にハードSFとか本格ミステリみたいな「理屈」のジャンルは映像には向いてないわけです。心理小説もそうですね。

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