第52話 主人公について

 最近、本を読むかわりにアニメをよく見ます。それで、引っかかることが多いのが主人公の見せ方です。ストーリーテリングの不備から感情移入できなかったり、単純に造形が下手で魅力がなかったり、と。具体的に作品名を挙げて腐したいのですが、ファンが多い作品もあるので控えます(本当になんで売れてんだ、アレ……)。


 というわけで今回は主人公について語ろうと思っていたのですが……なんかうまくまとまらなくて困っています。なので以下、箇条書きになるのですが……


 ・主人公には大きく分けて3つのタイプがある気がする。狂言回しタイプと、スーパーパワーで物語を牽引するタイプ、物語の中で成長していくタイプ。それぞれ例を挙げると、狂言回しタイプが喪黒福造、スーパーパワータイプが夜神月、成長していくタイプは……例が多すぎて絞るのが難しいですね。ルーク・フォン・ファブレとか? 書き手は作品の方向性から自分の主人公のタイプをあらかじめきちんと見定め、戦略を持たなければならない。たとえば、ドラマ性を排した頭脳戦が売りのデスノートで、夜神月が悩んで立ち止まったら興醒めである。


 ・作品のタイプにもよるが、主人公は人柄ではなく、立場や目的に共感させるもの。どれだけいけ好かない奴でも、立場や目的に共感させられれば読者の心を掴める。逆に言えば、人柄に共感できても、立場や目的のプレゼンが下手だと話に入り込めない。目的に共感させる、と言うのは共感できる目的を作れ、ということではなく、どんな目的であれ動機付けのシークエンスをきちんとやれ、ということ。たとえば「家族を守る」といった好感が持てる目的でも、家族の姿がまったく描かれなければ共感できない。


 ・動機付けにおいて重要なのは、主人公にとって本当に大事なものを一つに絞り込むこと。大事なものが三つも四つもあっては何がモチベーションなのか伝わらない。


 ・物語の推進力となるのは、何らかの欠乏感とそれに伴う目的設定である。導入部においてこの欠乏感の演出がうまくいけば、読者を引き込める。読者は主人公の目的に共感し、応援したくなるだろう。これが動機付けのシークエンスの役割である。重要なのは、主人公に動機が生まれる瞬間から逆算してそのシーンが際立つように設定や演出を調整することである。


 ・成長する主人公は、物語の序盤で克服すべき弱点(精神的なもの、能力的なもの、いずれでも)が明確にされなければならない。そうでなければ成長の過程がわかりづらくカタルシスが生まれない。


 ・スーパーパワータイプの主人公は、基本的にプロットを淀みなく進めるため要請される。SFやミステリなどロジックを重んじる作風と相性がいい。俺TUEEEもけっこうだが、強さのロジックやプロットに面白さがないと印象が安っぽくなる。

 

 ・目的に向かってぶれない主人公は、その危うさが表現されていないと読者を突き放してしまう。


 ・ある程度完成された主人公を描くなら、視点人物を別に設けるのも手。


 ・主人公に限った話ではないが、キャラクターを好人物に設定することで好感を持たせようというのはあまりにあさましい。


 ・これも主人公に限った話ではないが、キャラクターの描写にはメリハリを設けるべきである。たとえば、好意を描きたいならツンデレさせるなどしてギャップを作るべき。


 余談ですが、更新を再開するにあたってネタを求めています。語ってほしいテーマなどありましたらお気軽にご提案ください。

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