第24話 美学はどこへ

 小説の書き手なら誰もが、美学を持っていると思います。ときに書き手を導き、ときに足を引っ張る。そんな美学が。わたしにもありました。


 といっても、ずっと同じ美学を持ち続けていたわけではありません。そのときどきで、美学は形を変えました。詳細な心理描写を美学とすることもあれば、逆に心理描写を徹底して排すことが美学であったときもありました。しかし、重要なのは、常に何らかの美学があったということです。いまのわたしはそれをなくしてしまった。


 なぜ美学を失ってしまったのか。考えるに、美学とは半ばオカルトなのでしょう。下手をすれば、当の本人以外誰も価値を見出さない、無意味なこだわり。そう言いかえてもいいかもしれません。無意味と知ってそれでも貫くのも一つの道でしょうが、わたしの場合、無意味さに気づいてしまった結果、美学を失ってしまった。


 いまでも美学を持つことが無意味とは思っていません。むしろ、それがなければ創作ははじまらないとも思っています。しかし、いまのわたしにはどんな美学をもって作品を作りだせばいいかさっぱりわからないのです。

 


 

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