第75話 屋根裏の宇宙少年

 北伊勢高校には小規模のプラネタリウムがある。だが、天体観測などいまは流行らないのか、いつもガラガラだ。メシヤは屋根裏の宇宙少年なので、もちろん宇宙に夢中だ。メシヤに言わせると、宇宙が夢中とのことなのだが。

 夏休みにマリアを誘ってプラネタリウムを眺めている。


「あれがヒミコだよ」

「へえ、どこにあるの?」

「宇宙の最果て。地球から129億光年離れてるよ。約1225がいkmだね」

がい?」

「数字の単位だよ。兆の次がけいでしょ? さらにその次の単位ががいなんだよ」

「え~と……」

「1225のうしろに0が20個ついたkm数だね」

「気が遠くなる、というか、気が狂いそうな距離ね」


 あのマリアですらも、宇宙の広さにはバンザイだ。

「マリア」

「うん?」

「僕と一緒に宇宙の果てまで付いてきてくれる?」

「!!」

(なによ、これって……プロポーズ!?)


「メシヤくん・・・・・・? わたし、まだ心の準備が・・・・・・」

 初めてくん呼びをしてしまうほど、あわてふためくマリア。

「アーッ! ここにいたーッ!」

 プラネタリウム内に侵入してくるエリとレマ。

「あらあら、お邪魔でしたかしら? マリア様」

 顔は笑っているが、いつになくねっとりとした声を出すレマ。

「やあ、エリにレマ。ちょうどよかった」

「なんの相談してたノ?」

「うん、話すと長くなるんだけど―――」


 メシヤはマリアたちに地球の命運、そして、デスヘブンのことを伝えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る