第74話 オカルトチックが止まらない

「手に入れるの、大変だったんだよ。バックナンバーも残っていないからね」

「まさか、というか、案の定、モー民だったのね」

「安倍さんもそうなの?」

「よしてよ、安倍さんなんて。マリアでいいわ」

「うん、分かったよ、マリア」

「あたしはさ、オカルトなんて半信半疑だったんだけど、いまの話は信じてもいいわ」

「うん、そのほうがいいよ。『モー。』を読んでると、ロマンチックが止まらないよ」

「あたしは『モー。』は結構。あのジャンルは頭が痛くなってくるから」


 話の尽きないメシヤとマリア。一方、1年3組の教室では。

「おーい、藤原メシヤと安倍マリアは、入学早々欠席かー?」

 担任の野太い声が、物静かな教室にこだました。




「ボウスハイトさま」

「うむ」

「メシヤは、デスヘブンに向かうようです」

「そうか」

 遠い目をするボウスハイト。

「今後のボウスハイトさまの英図ですが、世界統一政府を樹立するためには、第三神殿を建設する必要がございます」

 ボウスハイトの反応をうかがう側近。

「構わん。続けろ」

「はい。ですが、第三神殿をエルサレムに建設しては、また新たな戦争の火種を生むでしょう」

「その通りだな。あそこはユダヤ教だけの聖地ではない」

「そこで私は、第三神殿建設の、別の候補地をご提案いたします」

「ほう、その場所とは?」

「失われた10支族が世界中に散らばっているのは、少々調べれば誰しもがたどり着く事実でございます。10支族の現在の居住地、それならユダヤ人の理解も得られます」

「元々、ユダヤ人の本当の故郷ふるさとは、デスヘブンだからな。テラに最初に降り立った、天孫降臨の地が良かろう」

「では、その方向で調整を開始します」

「うむ。吉報を待つ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る