第51話 来た、見た、買った!

 三重県下にはシオンショッピングモールが点在している。創業者・鷹山たかやま宗一郎そういちろうのお膝元でもあるからだ。北伊勢高校近くにもシオン北伊勢があり、夕方には学生服姿も多く見られる。市内最大のショッピングエリアであり、老若男女で賑わう。シオンは三重の台所だ。


 北伊勢シオン内に、間宮模型まみやもけいという店がある。模型店と言うと、車やロボットのプラモデルばかりを扱っている店を連想するが、この店は建築模型材料も販売している。メシヤたちはここへ技術課題の材料を買いに来ていた。


「お~、メシヤくんにイエスくん。それにマリアちゃんまでいらっしゃい! 他にも今日は大勢で来てくれたね」

 店主の間宮械造まみやかいぞうが出迎える。整理整頓された模型・各パーツが、天井まである棚のすべてを埋め尽くしている。


「うわ~、パラダイスだネ!」

 エリの好きな日本のロボットアニメのプラモデルが、ショーケースに飾られている。新しいものだけでなく、昭和の古めかしいロボも鎮座していた。

「械造さん、今日は建築模型を見に来たんだ」

「まいどあり! OK じゃあスチレンボードだね」

「いえ、今回はナゴブロックを使おうと思ってます」

「ああ、それじゃ残材が出ないように、積算しないとね」

 ゴミ減量が叫ばれる中、まだ使える資材を捨てているようでは後ろめたい。おもちゃでも同じことだ。


 メシヤたちはナゴブロックビルダーというアプリで、各色ブロックの必要数を割り出してもらう積もりだ。このアプリは、ナゴブロック社の定型の図面をベースにブロック数をはじき出すためのものなのだが、メシヤたちの作る模型は自作の図面を使うので、桁行方向けたゆきほうこう梁間方向はりまほうこうなどの寸法を正確に打ち込まないといけない。そもそも、このアプリに入力するための元の設計図がしっかり完成していないと駄目なのだが、十九川工務店の協力もあり、一級建築士顔負けの図面が出来上がっていた。


「うわ、今回はいままで以上に気合いが入ってるね」

「とりあえず、4件分お願いします」

「ほい、わかった。学校の机のサイズがW60cm✕D40cmだから、それにギリギリ収まるサイズにしておくね」

「はい、それだけあれば十分です」

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