第2話 城塞都市への訪問
「腹がへったな…」門番はつい口から一言漏れてしまった。
この門番達が守る国『ニューカリメア』は、都市の近くに流れる巨大な“ノソダフ川”からもたらされる水と作物の恵みが豊富で、人々の往来も多く、長いこと周辺都市国家連合の長という地位をもった国ではあったのだが…
「今日で川が枯れて何年だ、ライト」左側の門番が、右側の門番に声をかける。
「四年目だったと思うよ。レフ」両者は痩せた顔で会話をしていた。
「もうそんなになるのか。初めの二年は忙しかったよな、仲が良かった周りの国がいつの間にか険悪になって、食べ物をめぐって戦争になって」
「そうそう、レフなんて戦いの中で左足に矢が突き刺さってたよな。」
レフは左足の古傷を鎧ごしにかいた。当時のことを思い出していたのだ。「三年目だよな、北の方からあいつらがこっちにやって来たのは」
「そうだったな。魔王のヤツらが攻め混んで来たのはその頃だったっけ、それまで二五ヵ国もあった国が今はもう二つしかなくなったもんね。また来るとしたら、次はこの国だろうね?」
そう。この国は食糧難だけでなく、北の魔王の軍勢に脅かされているのだ。軍勢の手から同じく逃れた南の『カンテサス』と共に細々とこの国の人々は暮らしているのだ。
そんな国に笑顔は忘れられて久しいものだった。
「そういえば、魔王軍の奴らがこう言ってたっていう噂があるじゃない レフ」
「“我らの魔王様がノソダフ川の水を干上がらせた”っていう話か?もしかしたら本当なのかもな、あんなにも強いんだ、水を干上がらせることだって…」
急に話を切るようにライトが言った。「遠くから人が見える。無駄話はやめておこう」
「ヘイヘイ、それもそうだな」遠くに見える人影は二人。話し合いながらこちらに向かっているようだった。
その影は近づく程、どんどんと大きくなっていく。そして彼らの顔が見える頃になって門番達は気がついた。自分達の身長が彼らの脇に来るほどに巨大であることに!この国の門を守る任務を司る二人は国で特に身長が大きく力も強いため選ばれた精鋭である。だがそれ以上に近づいた来た二人が巨大であった。
「きょ…巨人!」二人は驚き戸惑った。こんなに大きな人間は見たことがなかったからだ。彼らこそ今は亡き大国『リヴァ・ティーベル』が魔王軍によって攻められた時、城壁を打ち砕いたという巨人族ではないのだろうか。門番達の足が震えるなか、巨人達が口を開いた。
「おいジム!意外と言葉が通じるかも知れないぞ!」
「ああボブ!今確実にこのボーイは巨人と言ったな!ヘイボーイズ!俺達の話していることがわかるかい?」
ニヤニヤしながら近づいて来たから食べられると思っていた門番達は人の言葉を喋る巨人に安心感が芽生えた。
「いや良かった。俺達二人だけで知らない所に放り出されて、心細かったんだ。人に出会えて良かったよ。俺の名はボブ!後ろの奴はジム!」「イエーイ!」
ニッコリとした顔で自己紹介する巨人に対し警戒しつつも二人は答えた。
「僕は門番のライト…」「同じくレフ…」
ボブとジムは周りを興味深そうに見ていた。横には自分らの詰所、後ろには人が十人分程の高さの国を守る壁があるぐらいだか…
「この壁の中には何があるんだい?」ジムと名乗った巨人が言う。それに対しレフが答えた。
「ようこそ。ここは俺達の国。ニューカリメアだよ」
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