ランチパック(とんかつとハムカツ) 1点

「日米安全保障条約って、米日安全保障条約じゃダメなの? アメリカのほうが軍事力で圧倒してるはずなのに── もしもトランプ大統領が語順に気づいちゃったら怒り出すんじゃないの?」

 ハルヒ。言わせてもらうが、おまえの普段の言いがかりはトランプ大統領でさえ「ギブアップ」って半泣きで言いながら白旗を振って降参するレベルのものだ。

 きょうのヤマザキパンは『ランチパック とんかつとハムカツ』である。

「商品名。あたしは納得いかないのよね。なんでとんかつが先なわけ。とんかつってそんなに偉いわけ? とんかつは絶対君主なわけ? ハムカツだっておいしいのに。ハムカツに人権はないっていうの? ねえ、何で??」

 さすがにハムカツ氏に人権はないだろうよ。だってハムカツだからな。ハルヒの言いがかりにおれは言葉を失っていた。くだらなすぎる。

「表記の都合ではないでしょうか? 接続助詞である、と、のあとに、とんかつ、の頭文字である、と、が配置されてしまうと──ハムカツととんかつ、になってしまって表記のおさまりが悪くなってしまいます」

 ととんかつ。電線音頭。あ、それは、ずずんがずん、か。どどんがどん。そちらは太鼓の達人。

 なるほどねえ。接続助詞ねえ。そんなこと考えたこともなかったが。日米安保の表記は、たんに自国を優先しているだけでは? たとえば、日韓なんたら条約ならば、韓国の新聞紙やら公文書の表記は「韓日」になってるだろうし。

「キョン×古泉。古泉×キョン」

 ぼそっとつぶやいたのは長門だった。おれと古泉のあいだに挟まっている「×」って何だ?

「ふぇぇっ!──その語順はぜんぜん違うものですぅ! え、え、えっちなのはいけないんですよっ!」

 なぜ突然、朝比奈さんがなぜ取り乱したんだろうか。わからん。

 とにかく。ここらへんで『とんかつとハムカツ』のテイスティング結果について述べておくか。

 とんかつソースは甘ったるい。おれの好みではなかった。

 パンに挟まっているとんかつはいわゆるソフトカツである。カツサンドを再現しているつもりのようだが、ランチパック(メンチカツ)に比べると完成度はあまり高くない。

 なぜか? メンチカツっていうのはひき肉をつかう。ひき肉っていうのはそのまま売るには見映えがよくないいクズ肉に近づいているものを再利用したもであり、そんなものを材料にしているメンチカツは安っぽいのがあたりまえ。「メンチカツとはそういうものだ」という社会通念があるわけで、たとえランチパックの具材としてのメンチカツの仕上がりが安っぽくてもあまり気にならない。ひき肉でつくるハンバーグを具材に使っていたランチパックも違和感がなくてうまかった。

 ランチパックシリーズの売価は、高くても200円程度に抑えなければいけないだろうから、たとえばピーナッツとかツナマヨネーズなどの「安く仕入れることができるのにそこそこうまく仕立てられる下賎な食材」であるほうが、大衆向けの商品であるランチパックという土壌を活かしやすい。これが菓子パンや調理パン(しょっぱい菓子パン)と呼ばれるジャンルの面白いところだ。

 受験シーズンを見越した商品は、年を追うごとに増え続けている。きょう買ってきた『ランチパック とんかつとハムカツ』も「競争に勝つ」と「カツレツ」をこじつけた商品だ。言霊信仰が根強い日本ならではの風習といえるかもしれない。外国のことは知らないが。

 『ランチパック とんかつとハムカツ』は、実際に食べてみればわかるが──食後にすこし胃もたれする。おれは『ランチパック メンチカツ』のほうを昼飯に買ってくることがあるけれど、おれのような健全な男子高校生の異袋をもってしても、ヤマザキ謹製の合成メンチカツが2個も詰まったランチパックを食べたあとには胃が重たく感じる。

 験担ぎをするだけならば、とんかつだけにするべきだが、受験生の夜食になる可能性を考えたとき、ひとつは軽めの「ハムカツ」にして、お腹が痛くなったり眠くなったりするのをなるべく防ぐ、という山崎製パン株式会社の思いやりなのかもしれない。


 ・・・・・・・


 きょうもSOS団はにぎやか。つづく。


 商品名『ランチパック(とんかつとハムカツ)』

 今回の獲得シール 1点

 累計 22点

「白いフローラルディッシュ」獲得まで、あと3点

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