やわらか卵のシフォンケーキ 1点

 きょうもラピタまで遠出してきた。行きつけの総合ショッピングセンターだ。北高からは遠いが、おれの家からは近いから馴染みがあった。休日には妹の買い物に付き合わされることもある。ザスコもたまに行く。

 さて、なぜ北高の最寄りのコンビニに行かなかったのか? 我らが団長殿の方針だからである。ハルヒいわく──

「──ひたすらシールを集めるのは芸がないから、同じパンを買ってくるのは一度だけ。ちがう種類の菓子パンや惣菜パンに貼ってあるシールを集めるのがルールよ。ヤマザキ春のパンまつりをレッツエンジョイ!」

 ご高説ごもっともだが……いろいろな店をめぐって遠路はるばる買いに歩いて行くのはおれなんだが。

 まあ、ハルヒの方針にも一理ある。単純にシールを25点集めたければ、ダブルソフト(3点)を特売の日にまとめ買いすればいい。でもそれは味気ない。つまらない。


「あ、キョンくん。おかえりなさい」

 ドアを開けるとそこにはメイドの格好をして天使が。『北高、天使の詩』はーじまーるよー。朝比奈みくるさんである(解説しておく。おれこと北高1年5組のキョンが朝比奈みくる大天使のことをさん付けで呼ぶのは朝比奈エンジェルみくるさんが北高2年2組の生徒だからある。ちなみにハルヒは朝比奈さんの後輩だがみくるちゃん呼ばわりしている)。

「ほかの連中は?」

 ハルヒと古泉がいないのはともかく、いつも一番乗りの長門も来ていない。珍しいな。

「寒かったでしょう。ちょうどポットのお湯が沸いたから、すぐに熱いお茶を淹れますからね」

「あ、いつもすみません」

「ふふふ。きょうは何パンを買ってきたんですか?」

「やわらか卵のシフォンケーキ、ってやつです。ラピタで買ってきました」

「それ、わたしも好きな菓子パンですよ。急ごしらえケーキを手作りしたいときに便利だから」

 つまりホールケーキの土台になるスポンジケーキを代用できる、ってことか。おもむろに『やわらか卵のシフォンケーキ』の包装パッケージを裏返すと、たしかにそれらしき解説があった。「ケーキを作ろう」と題して、わかりやすいイラスト付きである。ホイップクリームとイチゴを用意すれば、あっというまにストロベリーショートケーキが出来上がる。

「なるほど。スポンジを焼かなくてもこれを買ってくるだけで良いってわけですね」

「そのまま食べてもおいしいですよ。黄身の味が濃くって、甘さも上品で」

 よほど気に入っているらしく、いつも控えめな朝比奈さんらしからぬ『やわらか卵のシフォンケーキ』猛プッシュである。パッケージ裏の原材料名の筆頭は「卵」である。朝比奈さんの実感の正しさを裏付けるものだった。


 その後。ハルヒたちが部室に集まってから、朝比奈さんの提案でショートケーキをつくることになった。

 つまり──寒空の下、おれはパシリとしてイチゴやらホイップクリームやらを買いに行かされたのである。でも朝比奈さんが喜ぶ顔が見られたので良しとするか。


 ・・・・・・・


 きょうもSOS団はにぎやか。つづく。


 商品名『やわらか卵のシフォンケーキ』

 今回の獲得シール 1点

 累計 15点

「白いフローラルディッシュ」獲得まで、あと10点

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