1344.聖剣に、なっちゃったらしい……。

 刀を打ち終えた俺は、『竜断丸りゅうたちまる』という名前をつけた。


 そして、『命名』スキルを使って正式に名前をつけたほうがいいと言われ、スキルを発動し命名した。


 その途端、刀は光を発したが、その光は一瞬で収まった。


 当然俺は驚いたわけだが、周りにいる人たちも驚愕の顔をしているので、珍しいことなのだろう。


「おお、今の光は……。

 も、もしや……。

 ちょ、ちょっと失礼しますよ」


 トウショウさんが慌てたようにして、俺から刀を持っていった。


 そして、全体を凝視した後、おもむろに鞘から抜いた。


 ゆっくりと舐めるように、刀身を見ると、目を見開いた。


「あぁやはり……これは……聖剣……聖剣だぁぁぁ!

 聖剣が出来たんだぁぁぁ!」


 突然トウショウさんが涙を流しながら叫んだ。


 てか……聖剣って言ってたけど。


「聖剣ですか?」


「そうです!

 グリムさん、我らは聖剣を作ってしまったんですよ!」


「「「おお」」」


 周りの職人さん達からも、驚きの声が漏れた。


「ついに、ついに聖剣を作ることができた……。

 一度は聖剣を作ってみたかったんです。

 鍛治師なら、みんなが持つ夢ですよ。

 でも聖剣の作り方なんて、我が里にも伝わっていないのです。

 おそらく……特殊な素材と特殊な条件が必要だったはずです。

 ……さすがグリムさんだ。

 あなたの力なくしては、できなかったでしょう……」


 トウショウさんが、感動に打ち震えている。


 話がどんどん広まっていったのか、周りにいる鍛治師たちだけでなく、コボルトの里の大勢の人たちが興奮してきている。


 実は俺たちが鍛治をする様子が評判になって、どんどん里の人たちが集まって来ていたんだよね。


 まぁそれはいいんだが、ほんとに聖剣なのか確認をしてみよう。


 『波動鑑定』すると……


 おお、ほんとだ!

 聖剣になっている。


 『名称』が、『聖剣 竜断丸りゅうたちまる』となっている。


 刀なのに剣なのかというツッコミを入れたいところだが、そこはツッコんでもしょうがないところだろう。


 『階級』は……『究極級アルティメット』だ。


 詳細表示を確認すると……『聖なる属性を帯びた刀。そして、可能性を秘めた刀。竜種と悪魔に特攻がある』と表示される。

 それ以上の細かい表示は無い。


 鍛造で出てきた刀なので、『魔法の武器マジックウェポン』のような魔法の術式や魔法陣が組み込まれているわけではない。


 だが表示を見る限り、何かの機能が発動する可能性はあるのではないだろうか?

 それが“可能性を秘めた”ということなのではないだろうか?


 『青鋼剣せいごうけん インパルス』は、術式を組み込んでいるわけではないが、使い込んで使いこなせるようになると電撃などを出せるようになる。


 それと同じ『コボルト青鋼』を使っているから、この聖剣も使い込むと何らかの機能が発現する可能性は十分にある。


 なかなかに楽しみだ。


 もっとも何も機能が発現しなかったとしても、聖剣というだけで充分だし、竜種と悪魔に特攻があるという時点で桁違いの武器なんだけどね。


 これから悪魔を倒そうとしている俺には、ぴったりの武器である。


 それに何より、見た目のかっこよさも気に入っているのだ。


 『魔剣 ネイリング』や『魔力刀 月華げっか』のように、魔剣の類は持っていたわけだが、聖剣は初めてとなる。


 これは、早く使ってみたいね。



 ニアが打った刀は、形こそ俺の刀と一緒だが、なんと刀身がピンク色に染まっていた。


 『ライジングカープ』のキンちゃんの落とすピンク色の鱗を使っているからかな?


 ニアのイメージも影響してるのかもしれないけどね。


 ニアは、俺の『竜断丸りゅうたちまる』の名前にちなんで、『桃断丸ももたちまる』という名前にするらしい。


 桃色だから付けたんだろうが、なんとなく桃を割って出てくる桃太郎のイメージが思い浮かんでしまう。


 そういえば、ニアは『猿軍団』を持ってるんだよね。

 『犬軍団』と『キジ軍団』がいないのが救いだが、下手に桃太郎の話をすると、調子に乗って二つの軍団を作っちゃいそうだから、絶対言えないな。


 それに、本当はニアは俺の中のイメージでは、孫悟空なんだよね。


 『如意輪棒』という『如意棒』にそっくりな武器を使っているし、暴れん坊的なイメージが孫悟空と被るんだよね。

 まぁこの場合でも、三蔵法師ポジションや沙悟浄ポジション、猪八戒ポジションはいないんだけどね。

 豚の貯金箱の付喪神のセントンちゃんたちが、猪八戒ポジションになれなくはないけど……ちょっと違うよね。

 そんな事はどうでもいいか。


 改めて考えると……今のニアって、孫悟空と桃太郎を足したような存在になりつつあるのかな。

 いや、『飛猿』のヤシチを従えて、水戸のご老公的な特性もあるから、三つの特性がごちゃ混ぜになったわけのわからない存在だな。

 属性過多なんですけど!


 うーん、考えたら負けだな。


 ニアも『共有スキル』の『命名』スキルを持っているので、自分で名入れをした。


 さすがに、ニアの打った刀まで聖剣になることはなかった。


 ニアは、ちょっとだけ残念そうな感じだったが、あまり気にしていないようだ。


 聖剣でなくても、すごい逸品になっているからね。


 俺も改めて『波動鑑定』させてもらった。


 『名称』が『竜鋼刀りゅうごうとう 桃断丸ももたちまる』となっていた。


 聖剣でもないし魔剣の表示もないわけだが、『階級』はなんと俺の聖剣と同じ『究極級アルティメット』だった。


 詳細表示を確認すると……『竜をも断てる刀。そして、可能性を秘めた刀』とだけ表示されている。


 聖剣ではないので悪魔に対する特攻はないようだが、明示されていないが竜に対する特攻のようなものはあるんだと思う。

 そして今後、何かの機能が発現する可能性があるというのは、俺の聖剣と同じだ。


 この刀も、今後が楽しみだな。


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