1343.自分で打った、自分の刀。
俺たちは、それぞれ鍛治師のパートナーとともに、懸命に刀を打った。
魂を込めて、強い想いを込めて、生命エネルギーを込めて、魔力まで込めるイメージで打ち続けた。
実際に、魔力も少し流している。
トウショウさんの話では、無理矢理魔力を流すのではなく、打ち込む中で、自然に漏れ出るというか、注がれるというイメージが大事なのだそうだ。
逆に言うと、魔力を流すことはあえて意識しなくても、集中して打っていれば、自然に少しの魔力が注がれるらしい。
俺の場合は、『限界突破ステータス』なので、少しの魔力でも多すぎるということになるかもしれないが、そんなところまで調整はできない。
とりあえず、心を込めて打ち込むことだけに集中した。
時々奇妙なスパークのようなものが発生していたが、多分大丈夫だろう。
トウショウさんからは、特別問題視されなかったので、俺は集中して打ち続けた。
打ち込みを続けて、かなりの時間が経っている。
トウショウさん曰く、『コボルト
本来は、基本素材となる『コボルト
だがそれには、かなりの時間がかかるということで、今回は別の方法で作ることになったのだ。
それは、インゴットを溶解して素体を作った後で、鱗粉末を混ぜながら鍛造するというものである。
鱗粉末をふりかけながら打ち込むということを何度も繰り返して行う方法で、事前準備が入らない代わりに、鱗の量が多めに必要になる。
俺は鱗を大量に持っているので、全く問題なくできたというわけだ。
それから、この方法では、打ち込み回数も増えるとのことだった。
おおよそだが、打ち込み回数は二倍に増え、作業時間も当然倍以上になる。
まぁ二人がかりで打っているから、二倍以上の打ち込み回数と言っても、トウショウさん達にとってはそれ程の負担では無いのかもしれない。
ただ、神経を使う作業だから、時間がかかるのはやはり大変だろうけどね。
もちろん、初めてやる俺たちにとっては大変な作業だ。
とにかく集中を続けるのが大変である。
ほぼ修行に近い。
この作り方には、労力が大変な反面良いこともあるのだそうだ。
打ち込む回数が増える分、本当に集中し気持ちを尽くして打ち込めば、それだけ良いものができる可能性が高くなるらしい。
打ち込んだ人の想いが、しっかり伝わればそれに応えるような質の高いものが作れるということのようだ。
そんな話を聞いていたので、俺も、ニアたちも真剣に魂を込める感じで、気持ちを乗せて打っている。
普通ならかなり疲れる作業だが、誰も根を上げない。
無駄話をすることもなく、“一打入魂”という感じで打ち込みを続けている。
どのくらい時間が経っただろうか……実際の時間として三時間ぐらいだと思うが、体感としてはその倍以上だな……。
四人とも、見事に刀を打ち終えた。
そう、完成したのだ。
俺の刀は…… 鈍色に輝き、ほんとに日本刀のような感じになっている。
刃の波紋が綺麗な波形になっている。
トウショウさんによれば、この色と波紋は俺の持つイメージも影響しているだろうとのことだ。
もちろん一緒に打っているトウショウさんのイメージも影響しているわけだが、今回は使う俺たちのイメージが入りやすいように、職人さん達は、色や形状等についてはイメージをセーブしてくれていたらしい。
ありがたい心遣いである。
刀身は無事に完成したわけだが、刀としてはまだだ。
トウショウさんたちは、鍔と柄を装着して完成させてくれた。
これらについても、同時並行で他の職人さん達が作ってくれていたのだ。
もちろん、鞘についてもそうだ。
色についても事前に打ち合わせしていたしね。
俺の刀は、鍔も柄も鞘も落ち着いた黒色で、見た目は本当に日本刀のようになっている。
「グリムさん、せっかくですから、この刀に名前をつけてください」
トウショウさんがそう言って、ニヤリと笑った。
「名前ですか……?」
「そうです。名前をつけて完成ですよ。
本来なら私がつけるところですが、これはグリムさん専用の刀ですし、ご自分でつけてください」
「はい、分りました」
ネーミングセンスのない俺には、これまた難しい仕事が回ってきた。
でもここは必死で考えるしかないよね。
亜竜『ヒュドラ』の鱗を混ぜて作った刀だから……亜竜刀とか……?
うーん、いまいちかな……。
本流じゃない亜流みたいな感じで、微妙だし……。
竜をも殺せるという意味で……
亜竜を殺して得た素材で作っているから、ちょっと皮肉な感じではあるが……結構強そうな名前だよね?
うーん、これでいいかなぁ……。
「『
「おお、素晴らしいですね!
グリムさんは『命名』スキルを持っているということでしたので、スキルを発動して、ご自分で命名してください。
名入れには、必ずしも『命名』スキルを使う必要はありませんが、どうせならスキルを使って行った方がより良いものになると思います」
「分りました」
俺は言われるままに、『命名』スキルを使った。
「命名、
そう声に出した途端、刀が光った!
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