1342.みんなで、刀を作ろう!
一緒に来ていたニアが、突然自分の剣も欲しいとわがままを言いだした。
まぁその気持ちは、わからなくはない。
ちなみに、一緒に来ているのはニアだけではない。
『キジムナー』のカジュルちゃんも来ているのだ。
『キジムナー』は、妖精と精霊の中間みたいな存在の妖精族である。
他の妖精族に会ってみたいし、里も見てみたいというので、一緒に連れてきてあげたのだ。
そんなこともあり、『ドワーフ』のミネちゃんも呼んでいる。
『アメイジングシルキー』のサーヤと、霊域の代行者である『ドライアド』のフラニーには、もう会っているので、二人は呼んでいない。
『ハーフエルフ』のハートリエルさんには、もちろんクランで既に会っている。
それはともかく、ニアが自分専用の剣が欲しいというわがままについてはどうしようか。
どうせ何本か作らなきゃいけないから、作ってあげてもいいかな。
俺がそんな風に思っていると、トウショウさんが答えてくれた。
「分りました。何本も作りますから、誰が使う剣をあらかじめ決めて作るというのはいいかもしれませんね。
ご希望する皆さんの分を作っちゃいましょう!」
「ほんと! やったー! うれしい! ありがとう!
じゃぁ私も、グリムみたいに一緒に刀を打てばいいのかしら?」
ニアは超喜んで飛び回っている。
そしてやる気満々だ。
てか、あの人……羽妖精サイズだから打てないよね?
いや、人型サイズになれるから打てちゃうか。
「ええ、そうしましょう。
グリムさんの刀は、私とグリムさんで打って、ニアちゃんたちの分は、別の職人をつけますよ」
「ほんと! やったー!」
ニアが、大喜びだ。
そして、俺の顔を見てくる。
「わかった、じゃぁそうするか。
素材との組み合わせで、誰の剣にするかを決めちゃうか?」
俺がそう言うと、ニアたちは嬉しそうに頷き、トウショウさんも笑顔で頷いてくれた。
「オッケー、じゃあ私が決めちゃうから!」
なぜかニアさんが仕切ってますけど……まぁいいけどさ。
「じゃぁ私の剣は、キンちゃんのピンクの鱗で、ミネちゃん用の剣をキンちゃんの金色の鱗で作りましょう。
それからカジュルちゃんの剣は、オリョウちゃんの鱗にしよう」
ニアが、サッと組み合わせてを決めてしまった。
「構わないけど……カジュルちゃんは、ニアと同じ位の大きさだから、剣を作っても持てないよね?」
「私大丈夫だよ。『キジムナー』はねぇ、ある程度大きさを変えられるから、人間の子供くらいの大きさまでには大きくなれちゃうから」
おお、なんとそんなことができるのか!
さすが精霊っぽい妖精族。
サイズ変更が、普通にできちゃうのか。
『種族固有スキル』とかではなく、もともと持っている能力としてできるようだ。
ただ、人間の子供くらいのサイズになれるって言っても、大きな剣だと使いにくいと思うが……。
まぁ作るときに小さめの剣にすればいいのかな。
サイズ関係なく使いこなせちゃうかもしれないけどね。
「じゃぁグリムさんは、亜竜『ヒュドラ』の鱗ですね?
楽しみですね」
トウショウさんは、目を輝かせた。
俺と一緒に剣を打ってくれるのはトウショウさんで、ニアの剣を打ってくれるのは、なんと族長のメイショウさんになった。
ニアは、やはり人型サイズになって、一緒に打つつもりのようだ。
ミネちゃんとカジュルちゃんには、トウショウさんに次ぐ実力の鍛治師がついてくれることになった。
どのようなデザインの剣にするかと尋ねられたので、俺は日本刀のイメージで作りたいと思い、そんな絵を描いて説明をした。
この世界で日本刀と言ってもわからないからね。
「なるほど……この形は……刀と言われている剣ですね。
この里でも作れますよ」
トウショウさんがそう言って、目を輝かせた。
日本人の俺としては、鍛造で剣を作るとなれば、やはり日本刀を作りたくなるんだよね。
俺の描いた刀の絵の出来が良かったせいか、ニアたちも気に入ってしまい、今回作る四つの剣は、皆お揃いの刀のデザインにすることになった。
鍔も、持ち手である柄も、鞘も同じデザインで色違いにすることにした。
俺の刀は黒、ニアのはピンク、ミネちゃんは金色、カジュルちゃんのは青だ。
そこまで決めて、早速刀作りを始めることにした。
俺は、当然ながら刀を作るのは初めてだ。
元の世界の知識で、なんとなく鍛造で刀を作るやり方はわかるが、実際の手順を知っているわけではない。
だが、かなり面白いだろうと予想できる。
今後、刀鍛冶の技術を本気で身に付けたいとも思ってしまう。
今からやるのは、体験工房的な感じのやつだが、のんびりできるようになったら、しっかり教えてもらおうかな。
すべての段取りは鍛治師の皆さんがやってくれるので、俺たちは自分の刀に自分の思いを込めて打ち付けるだけだ。
いわゆる魂を入れるというやつだね。
「では、私が刀を打つタイミングで、同様に打ってください。
同じ場所を打ちつけてもらえばいいですよ。
私が打つ場所をづらしていきますので、繰り返し打ってください」
「はい、分りました」
「いたってシンプルなように聞こえるでしょうが、実際はかなり難しいですよ。
正確に打つのは大変だし、それを続ける集中力も必要ですからね」
ニヤリとするトウショウさんの指示に従って、俺たちは作業を開始した。
——トンッ
——カンッ
——トンッカンッ
——トンッ
——カンッ
——トンッカンッ
俺は、トウショウさんに促されるまま魂を込めて、そして強い想いを込めて、生命エネルギーを込めて、魔力まで込めるイメージで打ち続けた。
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