1341.特別竜の鱗に、感動。+トピックス『絆メンバー通信〜クラン周りの仲間たち編④空での独り言『飛猿』のヤシチ〜』

 ブルールさんの提案に乗って、俺は早速コボルトの里を訪れた。


「やぁグリムさん、ようこそおいでくださいました」


 コボルトの里の族長メイショウさんや、その弟のトウショウさんが出迎えてくれた。


「すみません、突然お邪魔しちゃって。実は専用の刀を作ってもらいたいと思って来たんです」


「おお、それは嬉しいのう! やっと来てくれましたな」


 メイショウさんが、満面の笑みだ。


「今からでも大丈夫ですか?」


「もちろんです。いつも窯に火が入ってますから。

 ただし……グリムさん、一緒に刀鍛治をしましょう!」


 トウショウさんが、これまたいい笑顔で、誘ってくれた。


「私も一緒にですか?」


「あなたが使う特別な武器を作るんです。

 自分でも打ったほうがいいと思うんです。

 なあに、心配いりませんよ。

 私が言うように素材を打っていけばいいんです。

 グリムさんほどの方なら、強い思いを込めて打てば、必ずや名剣に仕上がるんと思います」


「分りました。ぜひお願いします」


「それで、前にブルールから話が行ってるかと思いますが、どうせなら特殊な素材を混ぜ込んだほうがいいのです。

 より優れたものができますよ」


「はい、聞いてます。

 亜竜『ヒュドラ』の鱗と、あと『特別竜エキストラドラゴン』の鱗を二種類持っています」


「……えぇ、『特別竜エキストラドラゴン』?

 『ヒュドラ』の鱗だけじゃなくて…… 『特別竜エキストラドラゴン』の鱗も持ってるんですか?」


 トウショウさんは、腰を抜かさんばかりに驚いた。


 『特別竜エキストラドラゴン』の鱗というのは、『ライジングカープ』のキンちゃんが『種族固有スキル』の『登竜門』を使って、『昇龍ライジングドラゴン』という『特別竜エキストラドラゴン』になった時に取れるものだ。


 『昇龍ライジングドラゴン』の状態を解除して元に戻る時に、大量の鱗を落としていくのだ。


 キンちゃんの落とす鱗は、黄金に輝く鱗だ。

 数は少ないが、桜のようなピンク色の鱗もある。


 それから『龍馬たつま』のオリョウも『種族固有スキル』の『臥龍転生がりゅうてんせい』を使って、『臥龍シークレットドラゴン』という『特別竜エキストラドラゴン』になることができる。


 オリョウも元の状態に戻るときに、大量の鱗を落としていくのだ。


 黒くメタリックな感じに光る見事な鱗である。


 この二人の落としていく鱗は、竜種の鱗の中でもかなり貴重なものになると思う。


 おそらく、亜竜『ヒュドラ』とは比べ物にならないくらい貴重なはずだ。


 なぜなら、竜種には階級があって『特別竜エキストラドラゴン』は、かなり上に位置するからだ。


 一般に存在するドラゴンの階級は、基本的に下から『亜竜』『下級竜』『中級竜』『上級竜』『龍竜たつりゅう』となっていて、『特別竜エキストラドラゴン』は、『上級竜』に匹敵する階級なのである。



 俺は、実際に鱗を出してみた。


 亜竜『ヒュドラ』の鱗、キンちゃんの色違いの二種、オリョウの鱗の合計四種類だ。


「な! ……こ、これは素晴らしい!

 厳かで綺麗で……なんて輝きだ……。

 こんな物を素材に組み込んだら……一体どんな剣ができるのか……」


 トウショウさんは、感動に打ち震え膝をつき涙を流している。


 それはいいのだが、あまりの感動に、しばらくこの状態が続いてしまいそうだ。


「トウショウさん、あまり時間がないので、早速始めませんか?」


 感動に浸っているところをぶち壊すようで申し訳ないが、声をかけさせてもらった。


「あ、すみません。

 見とれてしまって……。

 ……はじめましょう」


「この鱗はどうやって使うのですか?」


「……素材に混ぜて使いますが……これほどの鱗だと、どんな剣ができるか……実際にやってみないとわからないですね……」


「鱗の質で異なる性質になるということですよね?」


「はい、ですから……亜竜『ヒュドラ』の鱗を混ぜた剣と、この『特別竜エキストラドラゴン』の鱗三種類それぞれを混ぜた剣を作った方がいいでしょうね」


「そうすると最低四本の剣を作る必要があるという事ですね?」


「はい。少し大変ですが、それがいいと思います。

 そして……この四種類の鱗全てを混ぜて作ったらどうなるか……これもぜひとも試したいですね」


「なるほど……“全部入れ”ですね。確かに凄そうですね。

 あと……全部ではなく二種類とか三種類とか、いろいろ試してみるのもいいかもしれないですね」


「ねぇねぇ、それぞれ作ってみるなら、私専用の剣も欲しいんだけど!」


 ニアが、わくわく顔でそんなことを言ってきた。


 ニアもついてきているのだ。





 ◇ ◇ ◇


 ————トピックス『絆メンバー通信〜クラン周りの仲間たち編④空での独り言『飛猿』のヤシチ〜』————


 ◯『ツリーハウスクラン』上空、『飛猿』のヤシチ


「クランの上空の警備を任されてるから、毎日飛んでるけど、結構飽きるんだぜ。

 でも敬愛するニア様の指示だから、がんばるんだぜ。


 とは言っても、最近は『デミトレント』たちの頭上に休憩所を作らせてもらって、こっそりのんびりしているんだぜ。


 決してサボっているわけじゃないんだぜ。休憩は大事なんだぜ。


 でも、あんまり寝てるとニア様が飛んできて、ボコボコにされるんだぜ。

 あの強さには憧れるんだぜ。

 決して負け惜しみじゃないんだぜ。


 そう言えば、最近『ツリーハウスクラン』の支所ができたから、そっちの上空の警備をするために『飛猿』の里から、補充要員が来るってニア様が言ってたんだぜ。

 幼なじみのオギンだけは来ないように祈るぜ。

 決して怖いわけじゃないぜ、尻に敷かれているわけでもないんだぜ。


 あいつは、お湯場の近くにいると、色気を出して魅了してくるから厄介なんだぜ。

 ……ブルブル、なぜか震えてしまったんだぜ」


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