1335.鬼人族のシュキさんと、改めてご対面。
翌日、俺のもとに知らせが入った。
昨日の打ち合わせ通り、ムーンリバー伯爵が公都からの使者である副宰相に対し、行動を起こしたとの知らせだった。
逮捕拘束した貴族たちを釈放しろという要求を、正式に突っ張ねたのだ。
激昂した副宰相は、連れて来た兵士に指示を出して、武力行使をしてきたらしい。
だが、それを予想していた伯爵は、潜ませていた兵に取り押さえさせて、全員拘束したそうだ。
このことは、迷宮都市にいる国の密偵から公都にも伝わるだろう。
後は、向こうの出方を待つだけだ。
第一段階は予定通り伯爵が進めてくれたわけだ。
報告を聞いて、そんな思いを巡らせていたところに、来客が訪れた。
やって来たのは、鬼人族のシュキさんだ。
襲撃者などではなく、『ツリーハウスクラン』の正式なお客様だ。
突然の訪問ではなく、事前に連絡を受けていたのである。
シュキさんは、三日前の襲撃の時に突如現れて、スズメバチ魔物のキング戦に助力してくれて、その後も魔物の討伐に協力してくれた。
だが、戦いが終わるとそのまま立ち去ってしまっていたのである。
一緒に来ていた『コボルト』のブルールさんが後で念話で連絡してくれたのだが、急用があってすぐに立ち去ってしまったとのことだった。
『冒険者ギルド』の副ギルド長の『ハーフエルフ』ハートリエルさんとすぐに打ち合わせをする必要があったらしい。
ハートリエルさんは、レジスタンス組織のリーダーでもあるから、組織がらみのことかもしれない。
シュキさんは、その後すぐにレジスタンス組織に戻る必要があって、再び迷宮都市を離れたのだそうだ。
そして用件を片づけ、またやって来てくれたというわけだ。
この間三日ほどだから、本当に忙しい人だ。
ハートリエルさんに聞いたのだが、やはりレジスタンス組織で問題があったらしく、その対応に追われていたようだ。
早くシュキさんと話がしたいと思っていたから、楽しみである。
応接室に入ると、ブルールさんも一緒に来てくれていた。
前に会った時は戦いの最中で、はっきり確認できなかったが、シュキさんはやはりスラッと背が高い。
少しだけ赤みがかった肌で、精悍な顔つきである。
綺麗な黒髪で額の両サイドに、小さな角が生えている。
前回は黒いマントを羽織っていて、わかりづらかったが、やはり着物みたいな服を着ている。
ただ動きやすくするためか、袖がないことと、丈が短くスカートみたいな感じになっている。
ちなみに今回も黒いマントを着てきたようだが、今は外して脇に抱えている。
クールビューティーな感じの整った顔つき、全体の精錬された雰囲気が独特だ。
前回は胸あたりまでの髪をそのまま伸ばしていたが、今日はポニーテールになっている。
そんな雰囲気も相まって、やはり女侍っぽいと感じてしまう。
ちなみに考えないようにしていたが、胸が結構、いや、かなり大きい。
スレンダーなのにグラマラスである。
ただこんなことを少しでも思うと、すぐに脳内批判に合うので、すぐに思考を切り替える。
それに一秒でも長くこんな思考をしていると、一緒に来ているニアさんにもバレるしね。
と思った瞬間——
(相変わらずセクハラです! セクハラには死を!)
(先輩最低です!)
(チッ)
脳内のナビー、レタ、タイディに、注意を受けた。
そして次の瞬間には、ニアさんの『頭ポカポカ攻撃』が発動していた。
なぜに……?
俺の脳内の三人はわかるけど、なぜにニアまで俺の心が瞬間的にわかってるわけ?
やっぱりニアって、恐ろしい子……。
まぁそれはともかく、しっかり挨拶しないとね。
と言うか、まともに挨拶する前に、ニアさんの『頭ポカポカ攻撃』が発動しているので、シュキさんはポカンとしているし、ブルールさんは苦笑いをしている。
何この微妙な空気……。
「改めまして、グリムです。よろしく」
俺は変な空気を振り払うためにも、頑張って挨拶をした。
「こちらこそ改めまして、シュキです。よろしくお願いします」
「やっとお話ができますね。どうぞ、かけてください」
俺は席に促し、話を始めた。
まずシュキさんとブルールさんから、レジスタンス組織が保護している人たち受け入れについて、改めて感謝を述べられた。
今まで各地から保護し匿っていた人たちが、多くなり過ぎて困っていたところを、俺の手配で『コウリュウド王国』のピグシード辺境伯領の復興予定の町に逃し、匿うことにしていたのだが、無事にみんな移れたとのことだ。
まぁその報告もサーヤたちから受けていたけどね。
保護していた人たちを無事に移動させて、レジスタンス組織も落ち着いたらしい。
そこで、実働部隊の指揮をとっていたシュキさんも、迷宮都市に来たらしいのだが、多くの人を保護しなければならない事態が発生したと緊急連絡が入ったのだそうだ。
それが迷宮都市に入ってすぐのことで、その後、俺のところを訪れたが戦いが発生したのでそこに参戦し、その後はハートリエルさんのところに急行したらしい。
そしてハートリエルさんと相談後、すぐに迷宮都市を離れたということだった。
今までその対応をしていて、保護しなければならない事態がなくなったので、再び迷宮都市に来たとのことだ。
何かよくわからないが、いろいろ大変だったというのはわかる。
俺は、改めて詳しく聞いた。
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