1334.これからの、方針。

 改めて考えると凄いなぁ。


 ここに来て、突然俺の周りに『勇者』の『称号』や『勇者の可能性』の『称号』を得る人たちが出現している。


 俺の『大勇者』の『職業固有スキル』の影響かもしれないけどね。


 『真の勇者』として『職業』に『勇者』を得ているのが、チャッピーとタマルさんの二人。


 『真の勇者』としては覚醒してないが『勇者』の『称号』を得ているのがツリッシュちゃんとルージュちゃん、そして0歳児のジェネルくんの合わせて三人。


 『勇者の可能性』という『称号』を得たのがツリッシュちゃんの相棒のハウジーちゃん、養育館のカーゼルちゃんとミズリー君の二人の合わせて三人。


 現時点で『勇者』がらみの称号を得た人が、八人もいる。


 英雄譚の九人の勇者みたいな感じになりそうなんだけど。

 いや、すでに勇者団と言ってもいいんじゃないだろうか。


 まぁ可能性の『称号』にとどまっている子がいるから、勇者予備軍と言ったほうがいいかもしれないけどね。


 いずれにしても、近い将来新生勇者団ができるのは間違いなさそうだ。

 なんか楽しみだなぁ。


 俺がそんな思考を巡らせていると……ムーンリバー伯爵が俺の顔を覗き込んで、訊いてきた。


 少しぼーっとしてしまっていたようだ。


「シンオベロン卿、それで今後のことだが……具体的にはどうするのだね?」


「はい、まずは公都からの使者である副宰相の要求を突っぱねてください。

 そうすると、おそらく副宰相は怒って一旦公都に戻るか、連れてきた兵で武力行使してくるでしょう」


「そうだろうな……」


「もし公都に帰るならそのまま返し、暴れるようなら拘束して檻に入れてください。

 その結果、公都からムーンリバー伯爵の討伐軍が派遣されるとは思いますが」


 俺は、苦笑いしながら言った。


 伯爵も顔をひきつらせながら、口を開く。


「……確かにその可能性が高い……」


「その時に、やってくる国軍に改めて戦いを挑みます。

 そこで、死んだと思われている王女のトワイライトさんに登場してもらいます。

 この国の現状……悪魔の影響下にあることを、迷宮都市の人々や討伐に来た兵士たちに訴えます。

 そして、この国を取り戻す戦いを始めるのだと宣言します」


「なるほど、人々を鼓舞するとともに、あわよくば国軍の兵士をも取り込むというわけですか?」


「はい、そうです。

 そして、その軍を退けた後は、公都に向けて進軍します。

 この時、状況によっては他の市町と連携したり、市町を救いながら進軍します」


「なるほど……正面から公都に乗り込んで、正々堂々と反旗を翻すのですな。

 そして、仮にそこで悪魔が出てくれば、我々の正当性が証明されると……」


「そうですね。

 ただ、悪魔が出てくる可能性は低いでしょう。

 悪魔たちは、巧妙に隠れていますから、正面切っては出てこないでしょうね。

 出てきてくれれば、私の方で倒してしまうのですが」


「……ガッハッハ、そうですか。

 悪魔が出てくれば倒してしまうと簡単に言ってしまうのは、貴公だけだがね、ガッハッハ」


 伯爵は、顔を引き攣らせていたのだが、何か吹っ切れたように笑いながらそう言った。


 それに釣られるように周りの人たちも笑みをこぼし、何か変な雰囲気になった。


 気にせずに話を続けよう。


「ですから、悪魔のことは一旦棚上げにし、まずはこの国を奪還することを優先します。

 悪魔が事実上支配下に置いたこの国を取り返せば、悪魔も動き出さざるを得ないでしょうからね。

 ただ、奴らの狙いや計画がわからない以上、この国を放棄して、また潜伏する可能性もあります。

 まぁその時はその時ですが。

 とにかく、この国を取り戻すということを最優先したいと思います」


「なるほど、分りました。

 ただ……万が一悪魔が出てきた場合、一般の兵士や公都の人々に大きな被害が出ないでしょうか?」


「はい、その可能性は考えなければいけませんね。

 兵士のほうは、大丈夫だと思います。 

 悪魔の対処は、私と仲間たちでおこないますから、その場合一般の兵士たちは、なるべく距離をとって撤収するように、事前に周知させておきましょう。

 公都の人々については、実際には難しい部分もありますが……できるだけの対策は考えようと思います」


「わかりました。

 今後は、貴公の作戦指揮に従いましょう」


「ありがとうございます。

 ただ私が前面に出る事は避けたいと思います。

 あくまでも、決起軍を指揮するのはムーンリバー伯爵でお願いします。

 そして旗頭として先頭に立ち戦場を駆け巡るのが、生きていた王女であるトワイライトさんと、そのパートナーで勇者の血筋のタマルさんということになります」


「了解しました。

 最大限の力を尽くします。

 このときのために、七年間屈辱に耐えてきたのですから」


 伯爵がそう言うと、伯爵家の人々が改めて跪き頭を下げた。


「それで……トワイライト様方は、今後はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」


「決起の時までは、今までいた『コウリュウド王国』の『フェアリー商会』に戻ってもらいます。

 『ツリーハウスクラン』に居てもらっても良いのですが、万が一生存の情報が漏れると困りますから。

 まぁ今の時点では、漏れたところで大きな支障にはならないとは思っていますけどね。

 インパクトが強い方がいいのは間違いないですから」


「そうですか。分りました」


 伯爵は、少しだけ残念そうな感じで顔を曇らせた。


 もっとゆっくり話がしたかったのかもしれない。

 もしくは、自分の家で歓待したいという気持ちがあるのかもしれない。


 まぁそれは、国を取り戻してからゆっくりやってもらうしかないね。


 俺たちは、今後の事についていくつか打ち合わせをした後、解散した。



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