1292.危うく、セクハラ認定。
呪われた回復薬を飲んで狂乱状態になっている冒険者を解呪するためにやって来た『月光教会』の巫女は、実は『光柱の巫女』の『称号』を持つ人だった。
そして、彼女が持っている『神聖魔法——
ただ、ここで一つ疑問が沸いた。
クランメンバーになってくれた地図売りのイグジーくんのお母さんの呪いは、『月光教会』に頼んでも解呪できなかったと言っていた。
だが……この巫女の力なら、できたと思うんだけど……。
たまたまその時にいなかったのかな?
それとも、一般に向けては能力を隠しているのか?
まぁ今回こうして解呪しに来てくれているのだから、能力を完全に隠しているというわけではないんだろうけどね。
衛兵隊の要請や冒険者ギルドの要請があるから協力してくれたが、一般人に対しては原則として秘匿していると考えるのが、妥当かもしれない。
ただ、この巫女の雰囲気からすれば、呪われた人を放って置くようには見えないから、その時に不在で他の巫女が担当したのかもしれないね。
まぁ俺が勝手に想像してもしょうがないけど。
俺が、『波動鑑定』をするために、じっと見つめてしまっていたからか……彼女が俺を見ている。
しまった、やっちまったかもしれない。
決して色っぽくてグラマーなお姉さんだから見つめてしまったわけではないのだが……。
その点については、強くして主張したいところだが……いきなり、そんなことをいうのは、逆に変な奴だよね。
微妙に気まずい感じになってしまったので、ここは名乗るしかない。
「私は、冒険者のグリムと申します。素晴らしい解呪能力に、つい見とれてしまいました。失礼いたしました」
俺はそう言って、苦笑いしながら頭を下げた。
「いえ、お気になさらずに。
あなた様が、『キング殺し』のシンオベロン卿ですね。
お噂は聞いています。
そんなあなたに、いきなり熱く見つめられるのは……少し恥ずかしく思います。
わ、私にも心の準備というものが……それに神に仕える身ですし……」
彼女は、凛として話していたのだが、途中から顔を真っ赤にした。
するとお付きの人たちが、一斉に彼女を取り囲んでガードするような姿勢をとった。
え、……完全に敵視されてますけど……。
殺気立った視線が俺に刺さる。
なにこの害虫を見るような目……。
隣で『水使い』のアクアリアさんも、苦笑いしている。
そして、買取センター長のドンベンさんはスルーだ。
てか、フォローしてくれよ。
ニアに言いつけちゃうよ。
まぁ本当にニアに言いつけたら、逆に俺が『頭ポカポカ攻撃』の制裁を受けるとは思うけどさ。
改めて考えると、ここにニアがいなくて良かった。
「いいのです。大丈夫です。
私は……この方に心を奪われたりしません。
自分の職責はわかっていますから。
まだ名乗ってもいないのですから、挨拶だけはさせてください」
巫女さんは、殺気立つお付きの人たちを必死で制した。
それを受けて、お付きの人たちはしぶしぶガード体勢を解いてくれた。
その後、彼女は俺の前に進み出る。
「失礼いたしました。私は、『月光教会』の巫女のムーンラビーと申します。
これも何かのご縁でしょう。
またお会いしたいですが……いえ、近々お会いすることになるでしょう。
それではまた」
巫女ムーンラビーさんは、そう言うと一礼して去って行った。
あっという間だったな。
金髪ロングのサラサラ髪が印象的な色っぽい美人さんだった。
さっき『波動鑑定』させてもらった時に見た情報によれば、年齢は二十八歳だった。
まぁ年齢的にも大人の女性という感じだよね。
ただ初対面の状況としては、我ながら微妙だ。
お付きの人たちの視線を浴びたせいか、セクハラ男にでもなった気分だ……トホホ。
こんなことじゃ、ニアはもとよりナビー達にも何を言われるかわからない。
そう思った瞬間、『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーの「セクハラには死を!」という言葉が脳内に響いた。
少し遅れて、『オペレーター』コマンドのレタの「先輩、最低です!」という声と、『怠惰』スキルのタイディの「チッ」という舌打ちが聞こえてきた……トホホ。
いつも、ふと頭の中でこの人たちのことを考えるのが引き金になっちゃうんだよね。
思わず考えちゃうから、避けられない……トホホ。
俺は、帰り際にギルド受付に寄って、回復薬の回収交換作業についての状況を確認した。
今朝始めたばかりだが、かなり頑張って宣伝してくれたようで、結構回収できていた。
やはり同等品と交換するというのが効いたようだ。
順調で良かった。
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