1283.『迷宮管理システム』の、サブシステム。
第九号迷宮『ホムン迷宮』から第八号迷宮『システマー迷宮』に戻った俺は、すぐに第零号迷宮に転送してもらった。
またもや、一瞬でダンジョンマスタールームやって来た。
すぐに、立体映像が現れた。
だがいつもの日本人顔の女性ではない。
現れたのは……白髪白髭のおじいさんだった。
白髪が長く伸びていて、ローブを着ているので完全に魔法使いみたいな感じだ。
この人が、この第零号迷宮の『迷宮管理システム』のようだ。
ダリエイトの話では、人造迷宮の技術を開発した賢者コータローの思考をベースに取り込んだ超魔法AIと言っていた。
「よく来たのう。わしはこの第零号迷宮『ブレイン迷宮』の『迷宮管理システム』だ。
マスターよ、よろしく頼む。
この口調は、魔法AIの思考ベースになっておる賢者コータローの晩年の話し方なので許してほしい」
「私は、グリムと申します。よろしくお願いします」
「マスターグリムよ、よくぞ来てくれた。
それにしても……本当にこの英知を引き継ぐ者が現れるとは、驚きである」
「この迷宮も、長く休眠していたのですか?」
「第九号迷宮とほぼ同じ時期じゃから、約三千四百年前から休眠しておるのう。
この技術を悪用されぬために、初めから休眠予定ではあったのだがのう」
「なるほど、初めから技術を秘匿するために、そしてできれば後世に伝えるために、この迷宮を作ったということですか?」
「そういうことになるのう。
各テスト用迷宮と連結してたおかげで、大体の状況は把握しておる。
マスターのような強大な……世界の王とも言える存在が現れるこの時代は、やはり大きな脅威にさらされているようだのう。
この迷宮の技術は、マスターであるあなたに引き継がれる。
どう使うかは、自由だ。
ただ迷宮の技術そのものは、悪魔や魔王を倒す力になるかどうかはわからんがのう。
それから、戦わせる駒にするためだけに『ホムンクルス』を作るのは、できればやめてほしい。
もちろん家族として、愛し慈しむならば良いのだが」
「わかっています。人造迷宮の技術は、むやみやたらに使うつもりはありません。
もちろん『ホムンクルス』で生命を作り出す事も、基本的にはしないつもりです。
私の仲間にも『ホムンクルス』の少女がいますので、悲しい思いをさせたくありません」
「そうであるか。それはよかった」
立体映像のおじいさんは、安心したように微笑んだ。
「あの……あなたは、人造迷宮の技術を開発した賢者コータロー様の思考を取り込んでいるという事ですが、意識を継承しているのですか?」
「難しい質問だのう。厳密に言えば、賢者コータローの思考や意識そのものではない。
思考や意識を魔法AIのベース設定として、組み込まれているだけなのだ。
だから意識を受け継いでいるというのとは、少し違うのう。
ただ実際には……仮に賢者コータローがここにいたとして、ある種の質問には『迷宮管理システム』であるわしと同様に答えるであろう。
だから、思考や意識が限りなく近いとは言える。
だが、わしはあくまで魔法AIだから、賢者コータローとは違う部分もかなりある」
「なるほど、そうなんですね」
「それから、この第零号迷宮『ブレイン迷宮』は、人造迷宮技術やその知識の根幹で、守るべき重要な拠点なので、『迷宮管理システム』のサブシステムとして、もう一人組み込んでおるのだ」
そんな言葉の次の瞬間、立体映像がもう一体現れた。
これまた白髪と白髭のおじいさんだが、王冠を被り豪奢な衣装を身に付けている。
かなり威厳のある感じだ。
「マスターよ、よくぞ来られた。
我は、この第零号迷宮『ブレイン迷宮』の『迷宮管理システムサブシステム』である。
魔法AIのベースとして組み込まれているのは、今から三千四百年ほど前に存在していた『マシマグナ第四帝国』の皇帝である。
それ故、偉そうな口調は許してもらいたい」
そう言って、大仰に挨拶した。
このサブシステムは、当時の皇帝の思考をベースにしているのか。
「むさ苦しいじじいが、二人も出てきて申し訳ないのう。
実は、わしのベースとなった賢者コータローが活動していた当時の皇帝が親友であったのだ」
「そうなんですね」
「こやつ、いや皇帝陛下のおかげで、人造迷宮の技術を悪用されないように封印したり、『ホムンクルス』の開発研究を中断したりという処置ができたのだ。
わしのベースとなっている賢者コータローと皇帝ゴールディは親友で、皇帝が退位してからは、この第零号迷宮で共に研究したり遊んで余生を過ごしたのだ。
それで、『迷宮管理システム』に自分の思考パターンを組み込むときに、こやつがわがままを言ってしょうがなかったので、サブシステムに組み込んだのだ」
「これこれ、そんなことをばらさなくてもよかろうが。
まぁ我は、あくまで思考のベースに組み込まれているだけで、我自身のわがままじゃないから、恥ずかしくはないけどのう」
何やら立体映像のじいさん二人が、若干揉めている。
と言うか、戯れている感じだ。
まぁいいけどさ。
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