1282.絶滅した種族も、培養可能?

「そういえば、この第九号迷宮はどこにあるんだい?」


 俺は、場所の確認をした。

 第八号迷宮『システマー迷宮』の統合指令室から転送されてやってきたので、この第九号迷宮のある場所が全くわからないんだよね。


「はい、周辺地図を表示します」


 俺の目の前に、地図の映像が表示された。


 この場所は……ピグシード辺境伯領の北西の端だな。

 こんな場所に、迷宮が隠されていたなんて……。


 ピグシード辺境伯領の北西の端と言っても、正確には領外の魔物の領域の中だ。


 場所はわかったが、迷宮自体はどういう構造なんだろう?


「この迷宮は、地下何階層になってる?」


「地下三十階層となっています」


「地上部分はあるのかい?」


「地上部分は、現在ありません」


「なるほどね。地上部分は今どうなっているの?」


「はい、鬱蒼とした森に覆われております」


 まぁそうだろうね。人が入り込まない魔物の領域だから。

 地図で見た感じからしても、魔物の領域の深いところにある感じだし。


「このテスト用迷宮の目的は、『ホムンクルス』の研究開発やアバターボディーの開発という事だけど、他には何かあるのかな?」


「そうですね……『ホムンクルス』製造技術は、魔物の培養技術とも関連していますが、通常生物を培養育成することも可能です」


「通常生物の培養……? 増やせるっていうことか?」


 あまり意味は無いような気がするが……食べるために養殖するような感じかな。

 でも魔物を狩って食べればいいから、無理に養殖する必要はないよね。

 ただ希少な生物とかを食用にするときは、種族の保存という意味では良いのかもしれない。


「はい貴重な生物を増やすことが可能です。

 ただそのデータが登録されていなければ、培養することはできません。

 無理に生み出す必要はないと思いますが……登録されている標本の中には、現在では絶滅した種族もあります。

 その種を培養し、種として復活させることも可能です。

 また、『ホムンクルス』製造技術を活用し多少の強化を施して培養することも可能ですので、種族として生き残れないような特性を改良することも、若干ですができます」


 なるほど……。

 『ホムンクルス』の技術を活かして強化してしまうのは少し抵抗があるが、絶滅してしまった動物を復活させるのはいいかもしれないな……。


「ちなみに……どんな動物がいるの?」


「まだ他の迷宮とのリンクによる情報交換が完全には終わっていませんので、正確ではありませんが、この時代にはほぼ生存していないと思われる生物を、いくつかピックアップできます。

 とりあえず四種ほど選びましたので、ご覧ください」


  『迷宮管理システム』がそう言って手を広げると、映像が現れた。

 簡単な図鑑のような感じだ。


 なになに……『グラウンドシーラカンス』……おお、陸を歩くシーラカンスってことか。

 ヒレが足のようになってるんだな。

 なんか面白そうだけど…… 三メートルくらいあるのか、でかいな。


 他には……『スカイペンギン』……空飛ぶペンギンか、すごいな!

 鳥の矜持を取り戻した的なことなのかな?

 ただ画像を見る限り、通常のペンギンとそれほど見た目が変わらないから、羽で飛ぶわけではないみたいだな。

 実際どんなふうに飛ぶのか見てみたい。


 次は……『モモンガベアー』……モモンガのように滑空する巨大熊。

 そんなのありか……。

 なんか迫力がすごそうだな。

 しかも色がピンク色だ。


 最後に……『チャーミングフロッグ』……見る者を虜にする可愛いカエルと書いてある。

 なにこれ! めっちゃ可愛い!

 ぬいぐるみみたいなんだけど。

 色は黄色だ。

 まるで……ど根性があるカエルみたいだが、それよりも全然可愛い。

 そもそもシャツの中に入っていないし……まぁそれはどうでもいいけど。


 このデフォルメキャラみたいな感じ、陸タコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティと通じるものがあるな。


 とりあえず四種をピックアップしたみたいだけど、全部実際に見てみたい。

 無理に復活させる必要は無いかと思っていたのだが、実際データを見ると見たくなってしまった。


 おそらく他にもまだ絶滅したか、かなり希少になってしまった生物のデータが残っているのだろう。

 今度ゆっくり確認してみても、いいかもしれないな。


「この子たちを培養して、生物にしたときに何か問題ってある?」


「『ホムンクルス』技術を導入しないで単に培養して生み出した場合、クローン生物となり寿命が短くなる可能性があります」


「なるほど、そういうことか。

 じゃぁ余計なところはいじらないで、寿命を本来持っていたであろう長さになるように改良することはできる?」


「はい、寿命を長くするのとは少し違いますが、寿命が長くなる要素を持った生物情報を組み込むことで可能です」


「それによって、種の特性に変化は無いの?」


「絶対とは言えませんが、基本的には大丈夫なはずです」


「そうか。

 あと……これらの生物を生み出したら、人々の害悪になるとかはないかな?」


「あくまで通常生物ですので、決定的に害を与える事はないと思います。

 ただ……例えば熊ならば、一般の人々には危険な生物ですので、そのような生物本来の特性は、当然持っています」


「まぁそれはそうだよね。

 ただ……俺の仲間にしてしまえば、人々に危害を加える事はないし、生態系に変な影響を与えないように、大森林に住わせればいいかな……」


「はい、それで問題ないと思います」


「そっか、じゃあこの子たちを見てみたいから、まずは一体ずつ培養してみてもらえる?」


「はい、かしこまりました。

 ただ休眠モードから目覚めたばかりで、システム稼働の検証が充分ではありません。

 場合によっては、『再起動復旧モード』の後に実行したほうが確実かもしれません」


「それはそうだな。そこら辺は任せるよ。別に急いでいるわけじゃないから」


 どのぐらい時間がかかるかわからないが、新たな仲間に出会えるかと思うと、めっちゃ楽しみだ。


 迷宮の説明は大体聞き終えたので、一旦この迷宮を後にすることにした。


 もちろん『迷宮管理システム』には、名前をつけてあげた。

 当然のことながら、名前はダリナインになった。


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