1273.遺跡の、探索。

 ニアの親衛隊で自警団組織『ニアーズハイ』との対面を終えた俺は、本日の一番の目的を果たすために『ツリーハウスクラン』を出た。


 やって来たのは、『アルテミナ公国』の東南の国境沿いにある魔物の領域だ。


 昨日情報を入手した遺跡にやって来たのだ。


 ドラッグン子爵の屋敷で手に入れた地図を見ながら移動したので、遺跡はすぐに見つけることができた。


 『飛行』スキルを使って、単独で飛んで来たのだが、上空から地図を頼りに探したので簡単に見つけることができたのだ。


 遺跡があった場所は、広い魔物の領域の山間に隠されているようにひっそりとあったので、地上からでは発見するのが困難だったと思う。


 それに遺跡と言っても、巨大な柱のようなものが何本か出ているだけなので、見た目の規模的にも発見が難しい。


 ただ近づけば、地下に続く入口がありダンジョンか地下遺跡である事は検討がつく。


 ドラッグン子爵は、地下遺跡と認識をしていたようだ。


 俺的には、人造迷宮なのではないかと思っているけどね。


 それにしても、ここをよく見つけたものだ。


 地上部分に人工物っぽい柱のようなものがあるとは言え、魔物の領域の山に囲まれた場所にひっそりとあるから、偶然発見するというのもかなり難しいはずだ。


 ドラッグン子爵はどうやって見つけたのか、訊いておけばよかった。


 ここまでたどり着くためには、相当な規模の護衛団が必要だろうから、普通に考えれば場所を知っていて入念な準備をして来たということになるんだろうけど。


 手に入れた魔導爆弾や金棒は、この地下遺跡を探索中に偶然隠し部屋を見つけて、そこで発見したとの事だった。


 これは、ドラッグン子爵に催眠をかけて尋問したときに聞いた情報なので確かだ。


 ただ、新発見の遺跡である場合、何かしらのお宝が見つかることが多いので、当然それを狙って訪れたようだ。


 早速遺跡の中に入ってみる。


 地下への通路を降りると、広いスペースになっていて雰囲気は巨大洞窟といった感じだ。


 しばらく周辺を確認しながら動き、ドラッグン子爵から聞き出した場所に、隠し部屋を見つけることができた。


 中に入ったが、当然のことながら何も残っていない。


 隠し部屋から出て、再び周囲を確認する。


 この地下スペースは、円形になっている。

 何かの施設の遺跡と言うには、ただの空洞であまりにも何もなさすぎる。

 雰囲気的には……迷宮っぽい。


 この空間が円形のスペースになっているということから考えても……俺が今までダンジョンマスターになった『マシマグナ第四帝国』のテスト用迷宮と同じものではないかと思えてくる。


 そう期待しているからか、なんとなく迷宮の気配のようなものも感じちゃうんだよね。気のせいかもしれないけど。


 いずれにしろ、もう少し詳しく調べてみよう。

 更に地下へと降りる通路があるかもしれないし。


 ……しばらく動き回ったが、残念ながら通路は見つからなかった。


 かと言って、このまま帰る気にもなれなかったので、俺は床を掘ってみることにした。


 いつものように切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』で、床をくり抜いた。


 三メートルほどくり抜くと、空洞が現れた。


 更に下にも空間があった。


 入ってみると、この感じは……当たりかもしれない。


 同様の広い円形のスペースが広がっていた。


 これは……やはりテスト用迷宮ではないだろうか。


 ただ、テスト用迷宮だったとしても、床に穴まで掘ったのに何も反応がないという事は、システムが完全に死んでしまっているのかもしれない。


 だが、前に復活させたほぼ死んでいた迷宮遺跡の例もあるから、何とかダンジョンマスタールームまで行って、復活できないかやってみたいところだ。


 まずは、この場で呼びかけてみよう。

 かすかに迷宮管理システムが稼働している可能性を試すことにした。


「迷宮管理システム、姿を現せ!」


 俺は、全力の気合で叫んだ。


 ……………………


 しばらく待ったが、何も現れない。


 何度か繰り返したが、やはり何の反応もなかった。


 やはり迷宮だったとしても、完全に機能停止しているようだ。


 最下層のダンジョンマスタールームに行くしかないようだ。


 この二つ目の階層でも、下の階への通路は見つからなかった。


 ダンジョン封鎖がなされた状態で機能停止したとしたら、通路を見つけることは困難なのだ。


 だが、どのテスト用迷宮も同じような作りになっているので、通路がありそうな場所の見当をつけて、注意深く探して、なんとかそれらしい壁を見つけることができた。


 そして、その壁を切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』で人が通れる大きさに切断した。


 当たりだった。

 その先には、通路が広がっていたのだ。


 俺はこの作業を繰り返し、地下三十階までたどり着いた。


 入ると、そこは明らかに様子が違う場所……そうダンジョンマスタールームだった。


 やはりここは、テスト用迷宮だった。

 おそらく、俺が探している第七号迷宮だろう。


 ただこの感じでは、システムは死んでいるっぽい。


 ダメ元で、この前第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』を復活させたときと同じ手順で、機能回復しないかやってみよう。

 奇跡が起きることを信じて。



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