1272.自警団同士の、連携。
ニアの残念親衛隊改め自警団『ニアーズハイ』の隊長シュウレンさんから、もう一つ報告があった。
もともとこの迷宮都市にある自警団とも連携をすることになったというのだ。
その自警団というのは、引退した冒険者たちが作っている組織で、見回り活動などをしてくれているとのことだ。
メインの活動場所は、若手の冒険者しかいない北区で、時々中区の見回りもしてくれているのだそうだ。
そのリーダーをしている人と、シュウレンさんは親しいらしい。
協力を呼びかけたところ、今後連携しようという話になったのだそうだ。
わずか数時間の間にそんな話までまとめているとは、シュウレンさんはかなり優秀だ。
シュウレンさんの話によれば、その従来の自警団組織も『ツリーハウスクラン』の賛助会員になりたいという希望があるとのことなので、人格的に問題なければ認めると伝えてあげた。
シュウレンさんは、良い報告ができると喜んでくれた。
従来の自警団組織は、今まで通り北区を中心に活動してもらう予定だそうだ。
そのおかげで『ニアーズハイ』は、ホームと言える南区とその隣の中区で活動すればいいので、移動に時間が取られずに非常に助かるらしい。
話によると、その自警団の拠点は、北区に一応あるみたいなのだが、あまり広くないのだそうだ。
そこで、俺が所有している元宿屋だった場所の一部を提供することにした。
もともとは、初心者用の『セイチョウ迷宮』で活動するクランメンバーの拠点として使わせることにしていた。
かなり広いホテルのような作りなので、その一部を使わせてあげても、クランの若手メンバーの場所がなくなるということはない。
それに自警団のメンバーが賛助会員になってくれるなら、クランの準メンバーになるわけだから、使ってもらっても全く問題ないことになる。
従来の自警団組織は、非公式の組織でボランティア組織なわけだが、地道な活動で多くの人々にその存在を認知されているらしい。
俺も自警団があるという事は、この迷宮都市に来た最初の頃に聞いていたが、その存在は忘れてしまっていた。
よく考えたら、そういう有志の人たちと協力するのはアリな話だった。
この連携は、『ニアーズハイ』の最初のお手柄と言える。
シュウレンさんによれば、『ニアーズハイ』と共に、今後炊き出しなどの活動にも協力してくれるとのことだ。
炊き出しの人手が増えるのは、地味にありがたい。
ちなみに自警団の活動の歴史は古く、引退した冒険者の有志が受け継いできたようだ。
そんな由緒ある自警団なので名前があって、『ゲッコウ自警団』と言うらしい。
迷宮都市『ゲッコウ市』を守る自警団だから『ゲッコウ自警団』というのは、何のひねりもないが……ネーミングについて、俺がとやかく言う資格は無い……。
どちらかと言うと、いつもとやかく言われる立場だし……。
構成メンバーは引退した冒険者なわけだが、稼いだお金で悠々自適に暮らしながら趣味的に自警団活動している人や、自分で飲食店をやりながら空き時間で見回りをするという感じで自警団活動している人など様々らしい。
自警団の存在は、事実上迷宮都市でも認められていて、非公式な組織ではあるが太守のムーンリバー伯爵も黙認しているようだ。
ただ、できれば今後の活動で支障をきたさないように、俺の方でムーンリバー伯爵と衛兵隊特別部隊のムーニーさんに、『ニアーズハイ』の設立と『ゲッコウ自警団』との連携について、話をしておこうと思う。
協力できることはしたほうがいいし、情報が通っていないがために、行き違いで揉め事が起きたら良くないからね。
ニアの残念親衛隊は、ニアに熱狂している残念な人たちという認識でしかなかったが、こうして組織化されると頼もしいし、愉快なメンバーである。
みんないい人たちで、十把一絡げに残念な奴らと認識をしていたことを反省したい。ごめんなさい。
そんなふうに思いつつ、俺は改めて一人ひとりに声をかけた。
『ニアーズハイ』の幹部たちとの顔合わせは、こうして終わった。
…………ニアの残念親衛隊改め自警団『ニアーズハイ』は、このしばらく後に『アルテミナ公国』全土のみならず、周辺国にも及ぶ大規模組織になるのであった。
そして『フェアリー商会』の下部組織である『舎弟ズ』と並ぶ、人々の日々の暮らしの守り手として、熱く支持されるのであった。
この二つの組織が同時に置かれた市町は、チンピラや無法者のはびこる余地はなくなり、安全都市として認識されるようになる。
逆に二つの組織が置かれていない市町からは、設置を切望されるのであった。
……なんてナレーションが脳内に勝手に流れた気がするが……気のせいだよね?
未来予知なんかじゃないよね?
そんなことにならないことを祈ろう……。
まぁなってくれても、人々の生活が守られるからいいけどさ。
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