1274.一瞬の稼働と、困難な再稼働。
魔物の領域にあった遺跡は、やはり迷宮の遺跡であり、地下三十階層がダンジョンマスタールームになっていた。
迷宮のシステムが機能しておらず、遺跡と化しているが、前に復活させたテスト用第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』と同じように、復旧を試みようと思う。
設備ルームを探し、そこにある装置に魔力を流し、稼働しないか試めすのである。
基本的な作りは他のテスト用迷宮と同じだから、設備ルームも見当がつく。
そのドアをこじ開ける。
設備ルームで間違いないようだ。
魔力炉もある。
その近くに、補助動力として魔力を送り込める装置があるのも同様だ。
俺は、早速、魔力供給装置の一つに触れて、魔力を流し込んでみた。
魔力と一緒に、生命エネルギーと念も一緒に送り込むイメージで集中した。
そして前回同様、願いを込めて……「迷宮管理システム目覚めろ!」と心の中で叫んだ。
……だが反応は無い。
魔力も無理矢理俺が流し込んでいる感じで、システムが吸い上げるような感覚は全くない。
この反応は……第六号迷宮の時と同じだ。
という事は、ここで諦めたらいけないということだ。
まだ可能性はある。
俺は粘り強く魔力を流す。
そして強く念じる。
……どのぐらい時間が経っただろうか?
体感的には数時間経ったような感じだが、実際には数十分程度だろう。
それでも、前回復活させた第六号迷宮の時よりは、はるかに時間をかけている。
もう駄目かとあきらめかけたその時…………ほんの少し……魔力を吸い上げられる感覚が伝わってきた。
この感じは……第六号迷宮がギリギリ生きていたときのあの感じだ。
これなら復活できる気がする。
俺は、魔力をできるだけ絞って、ゆっくり流してみた。
すると……やはり少しずつ魔力を吸い上げていくのが分かった。
少しずつだが、稼働するためのエネルギーが補充されていっている。
だが……魔力は吸い上げているのだが、劇的な変化は無い。
稼働させるには、かなりの時間を要しそうだ。
粘り強く続けるしかない。
……少しして、ようやくいくつかのシステムのパネルが光を発した。
やっとシステムが稼働し始めたようだ。
さらにしばらく続けると……
「わ、わた……、ビ、ル、……ダ、……め、……きゅ……、か、……り、シス……テ……で……す……」
立体映像が現れた!
何とかシステムが稼働したようだ。
だが映像はほとんど見えない。
かなりザラつきを帯びている。
そしてすぐに立体映像は消えてしまった。
俺は、しばらく魔力と生命エネルギーを流し続けた。
だが相変わらず魔力の吸い上げが弱く、まだまだ稼働できないみたいだ。
このぐらい集中して魔力と生命エネルギーを流していると、この迷宮が稼働する前に付喪神化してしまうんじゃないかと思ってしまう。
まぁ付喪神化を促進する『波動』スキルの『生命力強化』コマンドは使っていないんだけどね。
そんなバカなことを思っていたら、ふと閃いた。
迷宮の付喪神となったイチョウちゃんなら、何か良い方法が思い浮かぶかもしれない。
俺は、イチョウちゃんに念話を入れた。
そして、イチョウちゃんを『救国の英雄』の『職業固有スキル』の『集いし力』を使って、転移で呼び寄せた。
「かなり酷い状態です。稼働できたのは、奇跡に近いと思います。
補助動力の魔力を吸い上げるシステム自体が損傷しているので、少ししか吸い上げられないみたいです。
上手くいくか分かりませんが……私の『種族固有スキル』で修復できるかやってみます」
イチョウちゃんが腕組みして、首を傾げながら言った。
どうやら、『種族固有スキル』の『システム自動復旧』を使うようだ。
本来は、自分のシステムについて使うものなんだろうが、この迷宮に使えないか試してみてくれるとのことだ。
まぁ『マシマグナ第四帝国』で作られた人造迷宮同士だから、テスト用迷宮と本格稼働迷宮第二世代型という違いはあっても、システムに親和性はあるだろう。
可能性はあるよね。
イチョウちゃんが補助動力装置に触れて、スキルを発動する。
……装置が微妙に振動している。
しばらく様子を見守る。
「システムが同期できないかやってみましたが、この程度の稼働状態では無理でした。
システムが同期できれば、私のコントロールで再起動復旧モードなどができる可能性もあったのですが、残念です。
魔力供給装置の修理は、ある程度できました。
今までよりは、少しマシになっていると思います。
あとは魔力を流し続けてもらうしかないかと……」
「わかった。ありがとう、イチョウちゃん」
俺は、再び魔力を流し始める。
……この感じ……感覚でわかる、今までよりも魔力の吸い上げが良くなっている。
これなら、時間も大幅に削減できそうだ。
引き続き魔力を流し続ける。
そしてしばらくすると……再び、『迷宮管理システム』の立体映像が現れた。
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