1262.生産設備の稼働率は、低いままで。

 この『セイチョウ迷宮』が持っている宝石の生産設備も、吸血鬼の始祖であるヒナさんの家になっている『希望迷宮』の生産設備と同じものだ。


 生産できるのは、通常の宝石とは違い人工的に作り出す『クリスタルジュエリー』と呼ばれるものである。

 いわば人工宝石であり、現代においてはほとんど流通していないものだ。

 その製造技術が伝わっていないのだから、当然と言えば当然だが。


 見た感じは、ガラス玉をかなり高級にした感じである。


 様々な色のものを作ることができ、輝きは通常の宝石に負けていない。


 『マシマグナ第四帝国』時代には、人造クリスタルとも呼ばれていたようだ。


 迷宮で設置する場合は、原石を宝箱に入れたり、加工した装飾品にして宝箱に入れることもできる。


 指輪、ネックレス、腕輪、髪留め、ティアラなどの標準仕様の型が登録されていて、いつでも作れるのだ。


 前にヒナさんから聞いたが、『クリスタルジュエリー』の形成には『魔芯核』も使っているので、『魔芯核』の割合を多くすると、透明度は落ちるが魔力を帯びた『クリスタルジュエリー』が作れるとの事だった。

 魔法石の代用品としても、使用可能らしい。


 上手く活用すれば、単なる装飾品ではなく有益な装飾品にすることができる。

 魔法道具の機能を持った装飾品を作ることが可能なのだ。


 ただ、持たせる魔法の効果の組み込みは、迷宮の生産プログラムの中にはないから、魔法道具作りができる職人がいないと実際には作れない。


 まぁ俺の場合は、『ドワーフ』のミネちゃん達に頼めば、すぐに作れてしまうけど。


 今度改めて、魔法石バージョンにした『クリスタルジュエリー』をプレゼントしておこう。



 魔法薬の生産設備で作ることができるのは……『身体力(HP)回復薬』『スタミナ力回復薬』『気力回復薬』『魔力(MP)回復薬』という『基本ステータス』を回復するものと、『解毒薬』『麻痺解除薬』だ。


 『下級イージー』から『上級ハイ』までが、生産可能だ。


 『上級ハイ』の魔法薬が簡単にできてしまうのは、かなりすごいことなんだよね。


 まぁこれを流通させることは、もちろんできないけどね。

 既存の薬師達がみんな食べれなくなってしまうからね。



 やはり初心者用の迷宮という趣旨を貫徹させるためには、良い武器や宝石などはセットできない。

 魔法薬も、『下級イージー』をメインにして、『中級ミドル』を少し混ぜる程度にセットするしかない。


 今まで通り、これらの生産設備は、ほとんど稼働させない状態にするしかないのである。


 まぁ俺のコレクター魂を満足させるために、作れる武器や宝石は一通り作ってもらうことにはしたけどね。


 あと武器については、新人冒険者の足しになるように鋼の武器はセットすることにした。

 これは中堅冒険者にとっては、魅力のない武器なので問題ないだろう。

 この迷宮の生産設備は、ただの鋼の武器も作れるのだ。


 今までは、それすらもほとんどセットしていなかったのだが、鋼の武器ぐらいはセットしたいというイチョウちゃんの強い希望があったのだ。



 そんなこんなで、迷宮の今後の運営方針を決めて、俺たちは『ツリーハウスクラン』に戻ることにした。


 今後、俺がダンジョンマスターとなっているテスト用迷宮のシリーズたちも、随時付喪神化していこうと思っている。


 まぁ未だ多くの迷宮は、再起動復旧中なんだけどね。


 すぐにでも取り掛かれる迷宮がいくつかあるから、取り掛かるつもりだ。


 人造迷宮がみんな付喪神したら……すごく楽しいそうな感じもするし、ちょっと怖い感じもするが……まぁいいだろう。

 深く考えるのはやめておこう……。


 移動型ダンジョン『シェルター迷宮』が付喪神化したら、他の迷宮と違って、迷宮本体でどこへでも行けてしまう。

 考えるとちょっと怖いな……。

 やはり深く考えるのはやめておこう。


 まぁ付喪神化かすれば、必ず俺の眷属になるだろうから、俺の指示には確実に従ってくれるだろう。


 むしろ二度と悪魔に利用されるないように、付喪神化してしまった方がいいかもしれない。




 ◇




 俺は、迷宮の付喪神となったイチョウちゃんとともに、『ツリーハウスクラン』に戻って来た。


 そして、待っていたニア、リリイ、チャッピー、盾の付喪神のフミナさん、船の付喪神のエメラルディアさん、『ホムンクルス』のニコちゃん、『雷使い』のラムルちゃんといった『絆』メンバーに、イチョウちゃんの付喪神化について説明をした。


 みんな驚きつつも、凄く喜んでくれた。


 リリイとチャッピーは、今までのイチョウちゃんと全く変わらない感じで接している。

 付喪神化しているので、『迷宮管理システム』だったイチョウちゃんとは微妙に違うのだが、劇的な変化があるわけではない。

 だから、違和感は無いようだ。



 もう日が暮れて、冒険者たちも戻って来ているので、みんなに集合してもらった。


 まぁ集合をかけると、かなりの大所帯になっている『ツリーハウスクラン』は、もはや外の広場に集まるしかない感じだ。


 いつもイベントを行っている中央にある二本の『デミトレント』たちの前の広場が、集合場所だ。


 日中不在だった冒険者たちも、すでに他のメンバーから聞いているようだったが、今日あったテロ事件について改めて詳しく説明した。


 皆、神妙な面持ちで冷静に聞いてくれた。


 そして、今後の対策についての話もした。


 それに伴って、新たに仲間になってくれたレアな妖精族『キジムナー』のカジュルちゃんのことも、改めて紹介した。


 カジュルちゃんの力で、『デミトレント』たちがパワーアップして、周囲の生け垣と一体化したことも説明した。


 植樹の時にいなかったメンバーは、かなり驚いていた。


 まぁ突然生け垣ができてるし、それが『デミトレント』たちと一体になっているって言うんだから、それは驚くよね。


 ちなみに、今後の対策のメインは、当然で『デミトレント』たちになるのだが、冒険者メンバーもクランにいる時は、なるべく周囲に気を配ってくれると言うことだった。


  『デミトレント』たちが周囲を固め、上空は『飛猿』のヤシチが警戒してるから、今後は鉄壁なんだけどね。


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