1263.レベリング大会、実施。

 今後の『ツリーハウスクラン』の防衛の要は、パワーアップした『デミトレント』たちになることをメンバーに伝えたのだが、一つだけ問題がある。


 それは……『デミトレント』たちが、未だレベル1だということだ。


 そこで、この場で『デミトレント』たちを、レベル20程度までレベリングをすることをみんなに伝えた。


 どこかに連れて行ってレベル上げをすることができないから、ここに魔物を連れてくることになる。

 驚かないように事前に、伝えたのだ。


 すると、なぜか冒険者を中心に大きな歓声が上がった。


 そして若手の冒険者が、自分たちもレベル20までパワーレベリングさせて欲しいと、参加を申し出てきたのだ。


 俺は、パワーレベリングはもったいないという話を改めてした。


 動くことができない『デミトレント』たちはしょうがないし、戦いを主眼としない人たちに生き残る力をつけさせるためにパワーレベリングをするのはしょうがないと思っている。


 だが、冒険者はこれから戦いを主体に生きていくんだから、じっくり地力をつけたほうがいいと思っている。


 まぁパワーレベリングというか、急激なレベルアップの象徴とも言うべき俺が言うのもなんだが……。


 だがそんな俺の話もむなしく、「レベル20くらいまでならパワーレベリングしちゃってもいいんじゃない」とニアがお気楽に言ってしまったために、若手冒険者たちから大歓声が起こり、認めざるを得ない感じになってしまった。


 まぁ今までも仲間たちには、レベル20くらいまでのパワーレベリングはさせてきたし、いいと言えばいいんだけどね。


 もっとも、冷静になって考えると若手冒険者たちといっても、みんな既にレベル20に近い。

 ここで無理にパワーレベリングする必要はないと思うんだけど。


 でもまぁ……ノリというか、少しでも早くレベルをあげたいという気持ちからなのだろう。


 今回は、やらせてあげることにしよう。


 そんな許可を正式に出したら……今度は、子供たちからも声が上がった。


 年嵩の子たちが、自分たちも鍛えたいと言ってきたのだ。


 子供たちこそパワーレベリングはもったいないのだが、ここにいる子供たちが全員冒険者になるわけでもないし、今後のためにはレベル20くらいはあったほうがいいかもしれない。


 『ツリーハウスクラン』の防衛体制が強化されると言っても、何が起こるか分からないし、危険をゼロにはできないからね。


 そんな風に思っていると、


「子供たち、特に年嵩家の子たちは、自分の身を守れる力があった方がいいわよ。小さな子たちを守ることもできるし。何よりも、強くしてあげることが、その子達のためになると思う」


 ニアもそう言ってきたので、子供たちのレベリングも許可することにした。


 普通の大人でも、一般人の中にレベル20以上の人はあまりない。

 それを考えると、子供たちが全員レベル20って……末恐ろしい気がするが、まぁしょうがない。

 子供たちの安全のためだからね。

 結果的に……スーパーキッズ軍団になってもしょうがない。

 そう自分に言い聞かせた……。


 俺が関わっている他の孤児院や養護院と違って、この『ツリーハウスクラン』の危険度は、かなり高いからね。


 子供たちのレベルを上げておくことが、確かに安全マージンにはなるのだ。



 そんな感じで、『デミトレント』のレベリングが、新人冒険者と子供たちも含めた大規模なものになってしまった。


 そして早速、レベリングを開始することにした。


 迷宮自身であるイチョウちゃんの力で、迷宮の魔物をイチョウちゃんの前に転送できるのだが、それをこの状態でやるのは少しまずい。

 イチョウちゃんが迷宮の付喪神である事は、『絆』メンバー以外には内緒で、クランメンバーにも秘匿するつもりだからだ。


 そこで俺は、『箱庭ファーム』の魔法道具を取り出して、そこから魔物を取り出すという体裁を整えつつ、他の人に分からないようにイチョウちゃんに魔物を転送してもらった。


 これには、フミナさんやエメラルディアさんといった『絆』メンバーも協力してくれて、上手く死角を作ってくれた。


 そして、壮絶なレベリング大会が始まったのである。


 壮絶と言っても、特に凄い戦いが繰り広げられたわけではない。

 ただ、町中で魔物と戦っていること自体が、壮絶と言えば壮絶だが。


 もちろん周りに迷惑がかからないように、気をつけたけどね。


 魔物を倒すこと自体は、問題なかった。


 自由に動き回れないように拘束した上で、攻撃を加えてもらって、最初に『デミトレント』たちのレベルを上げてしまった。


 その後は、『デミトレント』たちが枝を伸ばして魔物を拘束して動けないところを、新人冒険者や参加する子供たちが槍等で攻撃して倒すといった感じになった。


 まさにレベル上げだけを目的とした完全なパワーレベリングだが、まぁいいだろう。



 ……しばらくして、効率の良いレベリング大会は終了した。


 無事に済んで良かったのだが……この軽い気持ちで実施したレベリング大会が……予想だにしない結果を招くことになった。


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