1261.回復の泉、いいよね!
イチョウちゃんが提案してくれた、なるべく冒険者が死なない迷宮への改造には、もう一つ面白い構想があった。
それは、所々に回復ルームみたいなものを作りたいというのである。
『共有スキル』にある回復の魔法を発動させる特別な空間を作るか、迷宮のシステムで生産可能なポーションを利用した『回復の泉』みたいなものも作れると言うのだ。
詳しく訊くと……増設可能な迷宮内設備の中に、『回復の泉』という施設があるらしい。
ただ『回復の泉』は、ポーションを飲むよりも回復するのに時間がかかる仕様になっているとのことだ。
それでも俺は、『回復の泉』が作れることに心踊った。
効率だけ考えれば、回復用の特別な空間を作って、迷宮自身であるイチョウちゃんが回復魔法をかけてやるのが一番いいだろう。
もしくは回復スペースに回復薬をセットして、自由に飲んでもらうという方法もいいかもしれない。
ただこの場合は、盗難とかの恐れがあるけどね。
でも俺的には、『回復の泉』がいい! ロマンなのだ!
ダンジョンといえば、『回復の泉』でしょ!
逆になぜ今まで思いつかなかったのか、ちょっと自己嫌悪になるくらいだ。
とにかく……『回復の泉』はいい!
古き良きRPGみたいな感じである。
何のゲームか忘れてしまったが、好きだったゲームに『回復の泉』があった気がする。
と言うわけで、俺の勝手な情熱で『回復の泉』を作ることにした。
それから、回復の泉で思いついてしまったが、セーフティーゾーンに休憩スペースを作って、温泉を作ってもいいかもしれない。
これについてもイチョウちゃんに確認した。
さすがに効能のある温泉を意図的に作るのは難しいようだが、お湯を発生させることはできるらしいので、温泉的なものは作れてしまう。
これも、面白そうだ。
セーフティーゾーンの中に、『回復の泉』や温泉、休憩スペースを作るのは面白い。
本来危険な迷宮内に、安全に休養できる場所があるのは、めっちゃすごいことだと思う。
まぁこれもやりすぎちゃうと、駆け出しの冒険者だけでなく中級以上の冒険者も来てしまって、本末転倒になっちゃうけどね。
この点は、ノリでやりすぎないように注意しなければならない。
……イチョウちゃんと、迷宮エリアの変更や増設についての大枠の打ち合わせを終了した。
結局セーフティーゾーンについては、ある程度の頻度で迷宮全体にいくつか作ることにした。
この迷宮は階層構造ではなく、アリの巣状の構造になっているので、フロアから次のフロアに移動する通路に隠し扉を作るかたちで、新たに小さめのフロアを増設することにした。
あえて隠し扉にしたのは、最初は新たなフロアを発見するという楽しみも作りたかったからである。
まぁ新フロアといっても、セーフティーゾーンなんだけどね。
そして、最終的には温泉の構想は自重した。
よくよく考えてみれば、『回復の泉』で汚れを落とすことも可能なのである。
休憩スペースについても、ただテントが張れるようなスペースという程度に抑えることにした。
我ながら自重できて良かった……えらいぞ俺!
それから、改めてこの迷宮の持っている生産システムについても打ち合わせをした。
前に確認しているのだが、この迷宮は…… 吸血鬼の始祖で元『癒しの勇者』のヒナさんの家となっている『希望迷宮』とほぼ同じ生産設備を持っている。
『希望迷宮』は『マシマグナ第四帝国』が作った本格稼働迷宮の第一号迷宮で、第一世代型と言われる迷宮の一号迷宮でもある。
『セイチョウ迷宮』は、第二世代型の中の第二号迷宮である。
『希望迷宮』に比べれば、次世代型としてバージョンアップされているわけだが、生産設備はそれほど変わらないらしい。
『セイチョウ迷宮』の現状としては、中堅以上の冒険者が集まって来ないように、貴重なアイテムは宝箱にセットしていない。
それゆえに、現代では希少な物が作れる生産設備もほとんど稼働していない状態である。
その生産設備は、大きく分けると、武器、宝石、魔法薬の三種だ。
三種類とも、第一世代型の『希望迷宮』と同じ物が作れる設備である。
まず武器は、『
『
鉄をベースにできている鋼に、様々なものを配合させたもので、安価でありながら強度もあり、優れた合金のようだ。
現代にも同じような合金はあるらしいのだが、この『
ここの設備では、剣、槍、長柄斧、戦斧、弓、小盾、盾が、それぞれ鋳造で作れる。
『
この『
特別な武器として、『魔鋼』の武器の『
これは、魔法の武器である。
もっとも魔法の武器といっても、単純に魔力を通すことができて、それにより強化できるという程度だ。
技コマンドがあるような特殊な魔法の武器ではない。
これも鋳造で型にはめて作る装置で、複雑なことはできないようだ。
この『魔鋼』で生産スロットに設定があるのは、剣、槍、長柄斧、戦斧、長柄鎚、戦鎚、小盾、盾、大盾とのことで、弓はない。
ちなみに、『魔鋼』自体は現代でも生産技術があって、作られている武器ではある。
だが、『鋼』に魔物からとれる『魔芯核』を混ぜて作るのでコストもかかるし、技術も必要であり高価な武器となっている。
そして現代に伝わっている『魔鋼』の武器の作り方は、基本的に鍛造なので、大量に生産することも難しいようだ。
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