1256.四大精霊の他にも、大精霊はいるらしい。
『ツリーハウスクラン』のシンボルでもある『デミトレント』たちの呼びかけに応え、訪れてくれた『キジムナー』のカジュルちゃんの力を借りて、『デミトレント』たちの強化に成功した。
それはすなわち、『ツリーハウスクラン』自体の安全対策の向上でもあった。
『デミトレント』たちが、新たに設置した生垣と一体化したので、敷地内だけなく敷地の外に対しても、目が行き届くようになったのだ。
みんなで植樹式も行い、カジュルちゃんのおかげで採れた『ワイルドグミ』の実と『クラブアップル』の実の試食も終わった。
即席で作った『りんご飴』も好評だった。
一息ついたところで、俺は改めて『キジムナー』のカジュルちゃんと、ゆっくり話をすることにした。
「カジュルちゃん、ありがとう。助かったよ。
よかったら……『キジムナー』という種族について、もう少し教えてくれないかな?」
「いいよ。『キジムナー』は、妖精族の中でも、ちょっと変わった種族なの。精霊と妖精の中間的な種族で、亜妖精に分類されているみたい。
確かに、精霊様に近い力を与えられているかもしれない。
私たちの種族自体、『樹木の大精霊 コダマ』様の眷属と言えるし」
「『樹木の大精霊 コダマ』様と言うのは、『土の大精霊 ノーム』様と同じような存在ってこと?」
「そうよ。四大精霊様たちと同じように、神様に近い偉大な方よ。
ただ今は、顕現されてはいないけどね。
私たち『キジムナー』のコダマド氏族が大神殿を管理しているんだけどね」
おっと……ここで、さらっとびっくり情報。
『樹木の大精霊 コダマ』様が、四大精霊様たちと似たような存在というのも新しい知識だが、なんとその大精霊の神殿を管理しているのが、カジュルちゃんの種族らしい。
さらっと凄い情報が二つも入っていて……消化するのが大変だ。
それにしても……大精霊は、四大精霊の他にもいたようだ。
「『キジムナー』の中でも、由緒正しい氏族ということなんだね。『キジムナー』は皆、植物と話をしたりできるの?」
「できるよ。
そもそもの話をすると……
樹木を含めた植物は、生きているけど魂が宿っていない生命。
だから、明確なコミュニケーションができないとされていたりするみたい。
これは微生物も一緒。
ただこの世のすべてのもの……魂のある生物も、魂が宿っていない植物や物質なども、全て霊素でできている。
精霊は、霊素が精錬されたものだから、すべてのものに精霊が宿っていると言ってもいいわけ。
だから……精霊とコミュニケーションできるなら、植物や鉱物ともコミュニケーションができるのよ。
実際にできる人は、あまりいないわけだけど。
そんな中で、私たちの種族は、植物とある程度のコミュニケーションができるの。簡単な会話もできる。
まぁこれは『トレント』たちもできるし、『ドライアド』のような植物系の妖精族もできると思うけどね」
なるほどね……確かに、レントンたちもできるみたいだけど。
「どの程度の会話ができるの?」
「そうだな……気持ちが伝わるというか、考えが直感的にわかるというか、そんな感じかな。
明確に会話ができるってわけじゃないから、この子たちみたいに『デミトレント』に覚醒して、しっかりお話ができるっていうのは、すごく楽しい」
「カジュルちゃんは、『デミトレント』に会うのは初めて?」
「そう。私の里にはいなかったし。『デミトレント』に覚醒するなんて、なかなかあることじゃないもの」
「そうなんだね。この子たちが覚醒してくれて、ほんとにありがたいね」
「そう。だから私もこの子達といっぱいお話ししたい」
「ところでカジュルちゃんは、いくつなの?」
俺は今更だが、カジュルちゃんの年齢が気になった。
この子めっちゃ頭がいい。
というか、もう話してる内容は、大人と同じだと思う。
「私は十歳。でも馬鹿にしないでね! 一族の中では、一番しっかりしてるって言われているんだから! 大人にだって負けないもん!」
なぜかちょっとほっぺを膨らませている。
子供に見られるのが、嫌なのかもしれない。
「そうなんだね。ほんとにしっかりしているね。一番しっかりしてるっていうのも、頷けるよ」
「えへん、そうでしょう」
カジュルちゃんは、嬉しそうに胸を張った。
そんな感じのところは、十歳の子供っぽいけど、頭の回転の良さと話す内容はもう完全に大人と言っていいね。
「ねぇねぇ、カジュルちゃん、私たちの仲間にならない?」
「そうなのだ! 家族になってほしいのだ!」
「好きになったの〜。家族になろうなの〜」
カジュルちゃんの話を一緒に聞いていた、ニア、リリイ、チャッピーが突然そんな話をした。
「いいよ。仲間になる」
カジュルちゃんは、ほとんど即答で返事をしちゃっているけど……。
絶対深く考えてないよね。
仲間になるっていうのを、お友達になる程度の事だと思っているようだが……ニアたちが誘ってるのは、もちろん俺の『絆』メンバーにならないかということだ。
そのことを、ちゃんと説明してあげないと。
「カジュルちゃん、ありがとう。
お友達としての仲間には大歓迎するよ。俺も嬉しい。
ただニアたちが誘ったのは、実は『絆』メンバーという俺の『固有スキル』が関係した特別な仲間になんだ」
「うん、大体の事は、知ってる。
私は、一般的な妖精族よりも精霊的な力が強いから、なんとなくわかるんだ。
あと『デミトレント』たちも、特別な力の仲間みたいなこと言ってたし」
カジュルちゃんが、軽く言い放った。
あれ……結構知っててオーケーしたってこと?
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