1257.キジムナーの種族固有スキルは、釣り名人?

 ニア、リリイ、チャッピーが、『キジムナー』のカジュルちゃんを気に入ったらしく、仲間にならないかと誘った。


 それに対しカジュルちゃんは、軽くオーケーの返事をしていた。

 そこで、友達という意味だけではなく、『絆』メンバーという特別な仲間であることを告げたのだが、大体のことはお見通しだったようだ。

 その上での返事だったのである。


 それはいいんだけど……さっきの話によれば、カジュルちゃんは、『樹木の大精霊 コダマ』様の大神殿を守っている特別な氏族の子だ。

 自由に俺の仲間になっていいのか……はなはだ疑問だ。

 おばあさんや家族の皆さんに確認したほうがいいと思うけど。

 そんな話をしたのだが……


「ああ大丈夫大丈夫。おばあちゃんと念話で繋がってるし。いい機会だから、外で修行してきなさいだって。

 感覚として……グリムさんの特別な仲間になるのって、家族になるとか、眷属的な状態になるとか、お嫁さんになるみたいな感じだっていうのは、おばあちゃんも理解してるけど、問題ないみたい。何ならお嫁さんに行ってもいいって言ってるし」


 そう言ってカジュルちゃんは、少し頬を赤らめた。

 なにその話……?


 おばあちゃんと念話で繋がっていて、ここでの状況を随時把握してもらっているのは、いいとして……。

 そして、外で修行というのもいいとして……。

 俺のお嫁さんになってもいいって、どういうこと……?

 それは簡単に決めちゃっダメだと思うんですけど……。


 まるで『ドワーフ』のミネちゃんみたいじゃないか。

 『ドワーフ』の里の皆さんは、ミネちゃんは俺のところに嫁に行ったものと思っているみたいなことを、何度か聞いたし。

 そういえば、ミネちゃんもカジュルちゃんと同じ十歳なんだよね。


 十歳で結婚の話は、早すぎると思うんですけど……。


 てか、そもそもお嫁さんになる必要はないし。

 家族的な仲間でいいんですけど。

 当然、お嫁さん発言はスルーするしかないが……。


「おばあさんや里の皆さんが問題ないなら、大歓迎だよ」


 俺は、少し苦笑いしつつ、そう返事をした。


 と言うことで、新たな妖精族『キジムナー』のカジュルちゃんが、『絆』メンバーになった。


 妖精族としては、七人目だ。


 『クイーンピクシー』のニア、『トライアド』のフラニー、『アメイジングシルキー』のサーヤ、『ドワーフ』のミネちゃん、『コボルト』のブルールさん、『ハーフエルフ』のハートリエルさん、に続いての七人目なのだ。


 まぁ妖精族と言っても、亜妖精を含めて妖精族としているけどね。

 『ハーフエルフ』と『キジムナー』は、一応、亜妖精として分類されているようだ。



 俺は、改めてカジュルちゃんのステータスを確認させてもらった。


 レベルは20だった。


 『通常スキル』として俺が持っていないものは……『植物魔法——発芽力』『植物魔法——生育加速』だ。


 『植物魔法——発芽力』は、初級の植物魔法で、種子の発芽力を強化する魔法のようだ。


 『植物魔法——生育加速』は、中級の植物魔法で、植物の生育を早めることができるらしい。


 さっき、生垣にした樹木たちの生育を加速したのは、『キジムナー』としての『種族固有スキル』の『樹木の楽園』を使っていたようだが、この魔法でも似たようなことができるらしい。


 ニアの『雷魔法——植物成長』など、植物の成長を加速するスキルは既に持っていたが、これはこれでありがたいスキルだ。


 植物魔法自体、レアな魔法スキルと言われているからね。



 ちなみにカジュルちゃんは、他にもいくつか『通常スキル』を持っている。

 それは俺が既に持っているものではあるが……十歳児が所持していると考えると、結構すごいスキルが二つあった。


 一つは、『アイテムボックス』スキルだ。

 このスキルを持っているだけでも、かなり凄いと思う。


 二つ目は、『操鞭術』だ。

 これは、俺も身に付けたスキルである。

 カジュルちゃんは、鞭を使った戦闘ができるらしい。


 それから『キジムナー』としての『種族固有スキル』も持っている。

 しかも三つもだ。


 一つ目は『樹木の楽園』だ。


 これは先ほど苗木を急成長させたスキルで、スキル内コマンドに『自在成長』というのがあって、それを使ったとのことだ。

 このほかに『焼畑ファイヤー』『縁話』『宿り木転移』というスキル内コマンドがある。


 『焼畑ファイヤー』は、火を放てるコマンドらしい。

 焼畑農業のような形で、森や畑を再生することができるのだそうだ。

 攻撃手段としても使えるとのことだ。


 『縁話』は、自分と縁がある樹木と念話ができるというもので、『宿り木転移』は、その樹木に転移できるというものらしい。


 二つ目は、『樹木結び』だ。


 これはさっき、『デミトレント』たちと生垣を融合させてくれたように、自由に『接木つぎき』や『接根つぎね』ができるというものである。


 三つ目は、『釣り名人』だ。


 これは、魚を捕まえることが簡単にできるというスキルらしい。


 なぜ、樹木の妖精の『キジムナー』の『種族固有スキル』に『釣り名人』があるのかと面食らったが……確か俺の元いた世界の『キジムナー』は、樹木に宿る精霊というだけではなく、漁の神様として、大漁をもたらす存在として、親しまれていたという話があった。

 そんなことを、ふと思い出したのだ。


 まぁ『釣り名人』なんて面白いし、すごくいいよね。


 釣りといえば……『魚使い』ジョージの『使い魔ファミリア』である陸ダコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティーが、俺の仲間たちの中では有名だ。


 一度勝負してもらったら、面白いかもしれない。


 『釣り名人』は『種族固有スキル』だけに、おそらくチートな感じで釣れちゃうんだろうけど、オクティーも八本の腕に魔法の釣竿を持ち、チートに釣り上げるから、いい勝負になるだろう。


 チート同士の勝負……面白そうだ。


 ただこの二人が勝負したら……周辺の魚がいなくなるかもしれない。


 そして下手したら、超大物の魚の魔物を釣り上げちゃうかもしれない。


 まぁそれはそれで、楽しみだけど。

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