1252.キジムナー、第二形態!?

 『ツリーハウスクラン』のシンボル的存在で、『デミトレント』して覚醒したヒダリーたちの念による呼びかけに応じ、レアな妖精族『キジムナー』のカジュルちゃんがやって来てくれた。


 四十センチくらいの赤い毛玉だったのだが、俺たちと話している途中で光りだし、「へーんーしーん、トォォォォ!」という仮面のヒーローのような掛け声とともに、ジャンプしたのだった。


 そして、赤い毛玉の中から、三十センチくらいの女の子が飛び出した。


 毛玉だったものは、縮んでマントみたいな形で背中に付いている。


 なにこれ……?

 どういうこと?


 出てきた女の子は、赤毛の少女で、和服っぽい民族衣装のようなベージュの服を着ている。


 ニアが四十センチくらいだから、それより少し小さいわけだが、この女の子の見た目が十歳ぐらいに見えるので、サイズ感としてはニアと同じだ。

 羽妖精サイズと表現していいだろう。


 どうも『キジムナー』は、丸い毛玉のような形態だけでなく、人型にもなれるらしい。

 まぁ冷静に考えると……亜妖精とは言え妖精族のくくりなんだから、人型である方が普通だよね。


「私、こっちの姿にもなれるの。よろしく」


 カジュルちゃんが、地上に着地して笑顔を作った。


「すごい、カジュルちゃん、人型にもなれるのね! 

 私の故郷の妖精たちの森には『キジムナー』はいなかったから、知らなかった」


 ニアは、自分と同じサイズ感の妖精族が現れて嬉しいのか、カジュルちゃんを抱きしめた。

 カジュルちゃんも嬉しいそうに、ニアに抱きつきながら……二人で一緒にジャンプしている。


 なんかこう見ると、姉妹のように見えていい感じだ。


 『キジムナー』は、二つの形態で活動できるようだ。


 俺は改めて、話を聞いた。


「この子たち『デミトレント』の念が、縁のある私のおばあちゃんに届いたの。それを、私も共有したから、この子たちと念話で話ができるわけなの。

 念話が繋がるようになったのはつい最近だけど、このクランの事やグリムさん達のことは、ある程度聞いているよ。

 私……しばらくこのクランにいようと思うんだけど、いいかなぁ?」


 カジュルちゃんが、少し照れくさそうに言った。


「それは構わないけど、里に帰らなくても平気なの?」


 俺としては大歓迎だけど、まだ子供だし、里の人たちや家族が心配すると思うんだけど。


「うん大丈夫! おばあちゃんや家族のみんなもオッケーしてるし。いつでも転移で戻れるから。

 なによりも、貴重な『デミトレント』になった子たちと、一緒に過ごしたいんだよね。人間の子供たちとも遊んでみたいし」


 なるほど。許可はもらっているのか。

 てか……ほんとだよねぇ?


「カジュルちゃんの里は、遠いの?」


「うーん、そうだね。この大陸の東の果てを越えた島にあるから。すごく遠いと思う」


 おお、そんな遠くにあるのか。

 できれば、一度遊びにいかせてもらいたい。

 もうちょっと仲良くなったら、お願いしてみよう。


「おばあさんや里の人たちから許可が出ているのなら、ここにいてくれて構わないけど、どんな部屋を用意したらいいかなぁ?」


「ああ、私用の部屋は要らないよ。『デミトレント』たちのところに、寝床を作るから大丈夫」


「そうなんだね。じゃぁ何か必要なものがあったら言って」


「うん、ありがとう。そうだ! それよりもさぁ……ヒダリーたちから頼まれたんだけど、このクランを守れる力が欲しいんだって」


「マスター、そうなんです! ぼくたち、ここから動けないけど、クランのみんなを守れる力が欲しいです。

 マスターの眷属になって、『共有スキル』が使えるからある程度のことはできるけど、もっとみんなを守れるようになりたいんです!」


 ヒダリーが切実に訴えてきた。


「そんなふうに思ってくれて、ありがとうヒダリー。だけど……これ以上守れる力をつける何か特別な方法があるの……?」


 まぁレベルを上げるという手はあるが、そういうこととは違うことを考えてるんだよね……?


 ちなみに、この子たちは、『デミトレント』になりたてで、まだレベル1なのだ。

 近々魔物を連れて来て、レベル上げをしてあげようとは思っていたけど……。

 普段は子供たちがいるから、なかなか実行に移せないでいたんだよね。

 もちろん子供たちがいても、安全対策はしっかりするから、危険という意味ではないのだが。

 小さな子たちには、あまり魔物を倒す光景を見せたくないのだ。

 グロいからね。


「マスター、『キジムナー』のカジュルちゃんの力を借りれば、できそうなことがあるんです!」


 ヒダリーが少し溜めを作った後、声を弾ませた。


「それはどういう?」


「じゃあ……私から説明するね。『キジムナー』の『種族固有スキル』に『樹木結び』というのがあります。これは違う種類の樹木の枝や幹を継ぎ合わせる『接木つぎき』や根を繋ぐ『接根つぎね』などができるのです」


 よくわからないが……『接木』というのは、俺の元いた世界でも農業の技術にはあった。

 根を繋ぐのは、聞いたことがないけどね。


「それを使ってどうするの?」


「このスキルを使えば……根が届く範囲なら、離れた場所にある違う木と融合することができるってわけ。

 融合すれば、自分の体と一体として機能させることができるの。つまり、自分の存在場所を広げることができるのです!」


「おお、なるほど! 『デミトレント』たちは、この場を動けないけど、離れた場所にある木と融合すれば、その木を通じて攻撃したり、回復したりできるってことだよね!」


「その通り!」


 俺に意図が通じたのが嬉しかったらしく、カジュルちゃんは、嬉しそうに手を突き上げてジャンプした。


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