1253.デミトレントの、パワーアップ作戦。

 『デミトレント』のヒダリーたちが、クランのメンバーを守れるようにもっと力が欲しいと訴えてきて、それは『キジムナー』のカジュルちゃんの力を借りれば、できると言ってきた。


 カジュルちゃんによれば、『キジムナー』の『種族固有スキル』に『樹木結び』というのがあり、それを使えば、根が届く範囲で、離れた場所にある木と融合することができると言うのだ。


 融合すれば、自分の体と一体として機能させることができるので、『デミトレント』は、存在場所を広げることができるのである。


 これにより、今よりも攻撃できる範囲や回復してあげる範囲を、格段に広げることができるわけである。


 確かに、それはかなりすごいことだ。


「それで……実際は、どうすればいいの?」


 俺は、カジュルちゃんに尋ねた。


「この『ツリーハウスクラン』の周囲に設置してある塀を撤去してください。

 そして……生垣にしちゃうのです!

 その生垣の木に、『デミトレント』たちの根を『接根つぎね』すればで、接合して、生垣を自分の体とすることができるのです!」


 おお、なるほど!

 完全にイメージできた!

 そしてこれは、俺が求めていたというか……爆弾テロを受けた今のクランに必要な防犯対策にもなり得る!


「それができれば……この『ツリーハウスクラン』の広大な敷地の外周に、『デミトレント』たちを配置するのと同じことになる。逆に言えば、『デミトレント』たちに囲まれた敷地と言うこともできる!

 そうすると……自然に『デミトレント』たちは、外部である道路と接しているから、今回の爆弾テロのような事態にも気づきやすい。

 怪しい動きをする人とか、変な荷車とかをすぐに察知できる。

 即座に防衛措置などを行うことも可能なわけだ」


「その通り!」

「そうなんです!」


 カジュルちゃんと、ヒダリーが、“我が意を得たり”と声を弾ませた。


「生垣になっている木を通じて、『種族固有スキル』の『形骸土木けいがいどぼく』を使えば、枝葉を伸ばせるから、かなり広範囲にわたって、敵を攻撃したりできちゃうよね」


「そうなんです。僕たち四体の力を合わせれば、この広い『ツリーハウスクラン』の敷地内も、その外側も、かなり広範囲にカバーできます!」


 ヒダリーが声を弾ませた。


 『デミトレント』の『種族固有スキル』の『形骸土木けいがいどぼく』は、枝葉や根を、自由に動かすことができるスキルなんだよね。

 だから、仮に怪しい奴が何かを置いて走り去ったとしても、枝を伸ばして追いかけて、拘束するなんてことも、できちゃうと思う。


「すごくいいね!」 


 俺は親指を突き出した。


「うん、かなりお勧め! よかったら、生垣にぴったりの木を、私が用意してあげるけど」


 カジュルちゃんが、ジャンプしながら言った。

 俺たちのためにやってくれるのだが、彼女自身もすごく楽しそうだ。


「それはありがたい、ぜひお願いするよ」


「任せて! オススメは……『ワイルドグミ』の木ね。生垣として強固だし、グミの実がなるの。美味しい実も食べられて、お勧め!」


 おお、グミの実か……。

 元の世界で食べたことがある。

 小さな細長い赤い実を、皮ごと食べて、甘かった記憶がある。

 ちょっとねっとりした感じでもあった気がする。

 ジャムにもできたはずだ。


 いいね!

 一石二鳥というか……一石三鳥くらいの価値はあるな。

 生垣としての価値、『デミトレント』たちの体の一部となって防衛機能が果たせる価値、美味しい実が食べれる価値……いいことだらけじゃないか!


「それいいねぇ! 美味しい実が食べれるなんて、最高だよ。ぜひお願いしたい」


「ふふふ、やっぱりそこがポイントよね! 

 実は……もう一つ、お勧めがありのです!

 それは……『クラブアップル』っていう小さなリンゴがなる木よ。この木も生垣にすることができるの。

 まぁ本当は、自然に生育させていく中で板垣のように仕立てるのは、結構大変なんだけど。

 でも、私の力をもってすれば問題なしです!」


 おお、クラブアップル!

 知ってる!

 俺の元いた世界にもあった。

 リンゴよりも全然小さい……ミニリンゴだ。

 姫リンゴとも呼ばれていた。

 夜店の屋台なんかで、『りんご飴』を作る時に使われたりしていた。


 この世界の一般に普及しているリンゴは、俺の元いた世界のリンゴよりも小さくて、みかん位のサイズなのだ。

 だから、姫リンゴに近い感じなのだが、実際の姫リンゴは、もっとちっちゃいんだよね。


 この世界で取れる姫リンゴ……『クラブアップル』が、俺の元いた世界の姫リンゴと同じ位のサイズ感だったら、屋台の『りんご飴』が再現できちゃうなぁ。

 なんかめっちゃ楽しみになってきた!


「『クラブアップル』、それもすごくいいね! それも生垣にしたいな」


「いいわよ。とりあえず、この二種類で作っちゃいましょう」


「ありがとう。ちなみに『クラブアップル』の実って、どのぐらいの大きさ?」


 俺はどうしても気になり、尋ねてしまった。


「うーんとねぇ……このぐらいかな」


 カジュルちゃんが手で作った大きさは、俺が思ってるようなピンポン玉くらいのサイズだった。


 まさに、『りんご飴』の大きさだ!


 これは完全に、『りんご飴』が再現できそうだ!

 というか……もう俺の頭の中には、『りんご飴』のことしかなくなってきている……いかんいかん、自重しなければ。


「えーと、割合はどうする……?」


「そうだね……できれば、『クラブアップル』が多く採れたほうがいいから……長さがある西側の生垣と東側の生垣を『クラブアップル』にして、南側と北側の生垣を『ワイルドグミ』にするっていうのはどうかな?」


「いいよ」


 結構な数が必要になる気がするが……カジュルちゃんは、軽く了承してくれた。


 めっちゃ楽しみだ!


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