1239.公開オークション、始まる。
翌朝、俺は『冒険者ギルド』前の広場に来ている。
これから『冒険者ギルド』主催の公開オークションが行われるのだ。
『強き一撃クラン』が『エリアマスター』を討伐して手に入れた戦利品や『エリアマスター』『サブマスター』の素材が競りにかけられる。
戦利品でオークションにかかるものは、三つしかないし、その中で武器は一つしかない。
貴重な『エリアマスター』『サブマスター』の素材は、パーツにしたらかなりあるが、冒険者がすぐに使える武器になっているわけではない。
そんなこともあって、『冒険者ギルド』では、他にも特徴のある武具などの出品を広く呼びかけていた。
賑やかしも必要だろうしね。
そんなことを耳にしたので、もしかしたら掘り出し物が出品されるかと思い、見に来たのだ。
見に来たといっても……もちろん見るだけではない。
受付をして、オークションに参加するつもりだ。
オークションというだけで、なぜか心が踊っちゃうんだよね。
戦利品の中で、競りにかかる武器は『魔鎌
そんな時は、俺が競り落としてあげようと思っている。
値段が上がるようにサクラ入札をしてあげるつもりだが、最終的に俺が競り落としてもいいと思っている。
『
一度『波動収納』にしまっているで、『波動複写』でいくらでもコピーできるんだけど、落札しまえば、堂々とクランのメンバーに使わせてあげることができるからね。
それから、俺も賑やかしでお手製の魔法道具を出品しようと思っている。
まぁ魔法道具と言えるほど魔法道具らしい道具ではないんだけどね。
何を出すかと言うと……『サブマスター』戦の時に使った回復用アイテム『魔法薬ショットガン』だ。
回復薬を装填して発射できるもので、竹筒水鉄砲を強化した特別仕様のものだ。
『魔竹』で作っていて、魔力を流すことで威力のある水弾を発射することができるのだ。
今後、一般に販売するつもりはないのだが、試しにオークションには出してみようと思ったんだよね。
昨日のクラン発足式の時にギルド長に聞いたら、多少の宣伝はしてくれるという事だったので、競りにかかる時に、簡易版の『竹筒水鉄砲』は『ツリーハウスクラン』で販売しているという宣伝をしてもらおうと思っている。
そうすれば、一般の冒険者が『竹筒水鉄砲』を手に入れ、仲間たちの回復に役立ててくれるようになるだろうからね。
『竹筒水鉄砲』自体もオークションにかけようかとも思ったのだが、万が一にもせり上がっていい値段がつくと、この後一般に販売するときの値段に影響しちゃうので控えたのだ。
安く販売してあげようと思っているからね。
それに、頑張って競り落とした人が、後から損した気持ちになるのも、可哀想だし。
このオークションには、冒険者だけではなく、武具屋や魔法道具屋、そして多くの貴族も参加するそうだ。
ギルド長によれば、『エリアマスター』や『サブマスター』の素材は、武具屋や魔法道具屋が主に落札するだろうとのことだ。
特別な武器は、裕福な貴族が落札する可能性が高いとも言っていた。
公開オークションは、『冒険者ギルド』前から迷宮前までに広がる大きな広場で行われる青空オークションだ。
それ自体が一種のお祭りというか、昨日の午前中まで行われていた祝勝会の追加行事みたいな感じなのだ。
見物人が、大勢集まっている。
『冒険者ギルド』前に特設の受付が設けられていて、一般公募の出品者と、落札参加者の受付が行われている。
俺は、出品と落札の両方の参加受付をした。
広場に設けられた特設ステージの前には、落札者が座るスペースが設けられていて、そこに案内された。
特別に行われる簡易なオークションなので、値段の差し方は口頭で値段を言うというシンプルなものだ。
受付で渡された札を掲げながら、値段をさして競り合っていくのである。
競り順は、一般公募の品を最初にやり、次に『サブマスター』の素材、『エリアマスター』の素材を行う。
最後に戦利品となる。
早速、オークションが始まった。
最初の商品は……なんと、俺が出品した『魔法薬ショットガン』だった。
競りを盛り上げるための商品として選ばれてしまったようだ。
前にセイバーン公爵領の『領都セイバーン』で参加した『闇オークション』のときのデジャブ感が半端ない。
まぁいいけどさ。
このオークションの総合司会は、俺担当の綺麗可愛い受付嬢のリホリンちゃんだ。
ノリノリで、めっちゃ可愛くがんばっている。
リホリンちゃんの可愛いアナウンスだけで、既にかなりの盛り上がりになっている。
そして、なぜか商品説明が、ショーみたいな感じになっている。
機能を実演するのだが、寸劇みたいな感じで繰り広げられているのだ。
怪我した冒険者に、離れた位置から回復薬を発射するという寸劇である。
もちろん実際に怪我はしてないんだが、液体が飛ぶところを見せているのだ。
しかも最初は、出品アイテムでない『竹筒水鉄砲』で回復薬をかけ、便利だということを演者が訴えかけた上で、さらに便利な特別な物を持ってると、ドヤ顔で別の冒険者が現れるのである。
そして、遠距離から回復薬を発射し、驚かせるという展開なのだ。
ちなみに寸劇を演じているのは……ニアさんの残念親衛隊のメンバーになっている中堅冒険者たちだった。
強制的に動員されたのか、立候補したのかわからないが、まあまあの演技力ではあった。
突然の寸劇の始まりに、会場は大いに盛り上がった。
寸劇が終わったところで、改めて競りにかかる品についてリホリンちゃんが説明をしてくれた。
その中で、今話題の『ツリーハウスクラン』が開発した特別な回復用アイテムであると紹介され、本日から一般に向けて販売する『竹筒水鉄砲』とは別に、クランメンバー限定の非売品が、特別にオークションに出品されたと説明し、大いに煽ってくれたのだ。
もちろんその中で、一般に市販する『竹筒水鉄砲の性能』と価格も案内され、欲しい人は『ツリーハウスクラン』で買い求めてほしいと完璧な宣伝もしてくれていた。
さすがリホリンちゃんである。
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