1240.呪われた武器も、競り落とす。

 俺の作った『魔法薬ショットガン』の商品説明のための寸劇パートも終わり、いよいよ競りが始まった。


 相場も何もない商品だが、ギルドがつけたスタート価格は十万ゴルだった。


 寸劇の効果か……入札者の数が多い。

 競りに参加しているお金のある冒険者や武具屋、そして貴族もめっちゃ参加している。


 回復用の魔法道具だから、多方面に需要があるようだ。


 ……どんどん値段が上がっている。


 ……そして最終的な落札価格は……なんと九十五万ゴルになってしまった。


 さらに驚いたのは、落札したのが『強き一撃クラン』のクランマスターレオニールさんだったことだ。


 実は、『エリアマスター』戦の後に、レオニールさんに一つあげているのだ。

 それなのに激しい入札を競り勝ち、落札していた。


 それだけこの道具の性能を、評価してくれているのだろう。


 落札が決まると、立ち上がってガッツポーズをとっていたので、義理で入札してくれたわけじゃなくて、ほんとに欲しかったようだ。


 言ってくれれば、もう一つぐらいあげたんだけどね。


 レオニールさんと目が合ったのだが、めちゃめちゃ爽やかな笑みを浮かべていた。相変わらずのキラースマイルだ。


 その後、剣や槍などいくつかの武器が出品されたが、特に欲しい性能ではなかったので、競り落とす事はなかった。


 だが俺の食指が動いてしまう面白いものが、次に出品された。


 それは、呪われた武器である。


 呪われた武器も、堂々と出品されているのだ。

 もちろん呪われた武器と告知した上でのことである。


 冒険者たちは、多少呪われた武器でも、性能が良ければ買って使うという話だった。

 そんな風潮もあるので、堂々と公開オークションに出品されているようだ。


 呪われた武器は……大きめのナタだった。

 剣といってもいい位のサイズだ。


 『炎獄の鉈』という『名称』で、炎を纏うことができるのだ。

 俺的には、ちょっとしたロマン武器だ。


 ただし、魔力を通して炎を纏わせると呪いが発動し、両腕に火傷を負うらしい。

 鉈の炎が手に回るのではなく、呪いで火傷を負うようだ。

 呪いによる火傷なので回復薬の効きが悪く、毎日回復薬を使っても、完治するには数日を要すると説明されていた。


 『階級』が『極上級プライム』になっているので、武器としての威力はかなり高いのだと思う。


 『極上級プライム』の『魔法の武器マジックウェポン』は、本来ならかなりの値段がつくが、呪われた武器ということもあり、十万ゴルからのスタートだった。


 安いスタートが功を奏し、多くの冒険者たちが値段を指している。


 四十万ゴルまで上がったところで、競りのスピードが弱くなった。


 ここで俺も競りに参加した。

 競り落とそうと思っている。


 何せ新しく仲間になってくれた『水使い』のアクアリアさんのスキルの力で、呪いを浄化することができるから、競り落とさない手はないのだ。


 ただ呪いの部分と機能が密接に結びついている場合、呪いを浄化すると火傷を負わない代わりに、炎を纏う機能も無くなる可能性もある。

 そういう意味では……落札するのは、賭けでもあるけどね。


 もっとも、その可能性が高い場合は、ゆっくり時間をかけて付喪神化させるという手もある。

 そうすれば呪いの部分だけをなくして、機能を維持できる可能性が高い。


 それも併せて考えれば、やはり頑張って落札した方が良いのだ。


 四十五万ゴルを超えたところで、俺と他数人の競り合いとなった。


 一万づつの競り上がりではあったが、俺が一歩も引かなかったので、他の人たちは諦めたようだ。

 最終的には、五十二万ゴルで落札できた。


 次に行われたのは、『サブマスター』の素材と『エリアマスター』の素材の競りだ。


 いくつかのパーツごとに競りが行われたが、かなりの金額になっていた。

 合計すると、五百万ゴル以上にはなっていた。


 最後のパートは、戦利品のパートだ。


 最初に『ゲッコウパール』と『ゲッコウクリスタル』の競りが行われた。


 二つとも、『ゲッコウ迷宮』でしか手に入らない特別な宝石で、拳大の大きさだ。

 二つ合わせて、一千万を超える金額になっていた。

 これだけで、『強き一撃クラン』はかなり儲かったはずだ。


 最後が、『魔法の武器マジックウェポン』である『魔鎌 鎌斬カマキリ』となった。


 『極上級プライム』の『魔法の武器マジックウェポン』ということもあり、競りは百万スタートだった。


 だが案の定、競る人の数は少なかった。

 鎌を武器として使う人はあまりいないからね。


 俺も競りに参加している。

 少しでも値段が上がるようにしてあげたいし、最終的に俺が競り落としてもいいと思っている。


 これがもし剣だったら、五百万とか一千万ゴルの値段がついてもおかしくないはずだ。

 鎌はおそらく、その半分位ではないだろうか。


 競りは、三百万ゴルを超えたあたりから鈍くなった。

 このままでは、終わってしまいそうだ。

 ……そこで俺は、思い切って四百万ゴルの値段を差した。


 すると、会場にどよめきが起こり、それ以上競る者はいなく、俺が落札してしまった。


 なぜこんなことをしたかと言うと、レオニールさん達へのご祝儀という意味を含めて、落札したからだ。

 せっかく頑張って『エリアマスター』を倒したのに、『極上級プライム』の『魔法の武器マジックウェポン』で、三百万そこそこじゃ、切ないと思うんだよね。

 オークション最後の品目でもあるし、尻つぼみで終わるのは、後味が悪いしね。


 俺が落札した事は、青空オークションなので当然みんなわかっていて、レオニールさんが俺の方を向いて、また爽やかな笑顔を作っていた。


 この大鎌は、場合によってはリリイに使わせてもいいかもしれない。

 リリイの使い魔となった『ジャックランタン』は、大きな鎌の武器を持っているが、リリイも持ってダブルで大鎌を構えたら、様になるんじゃないかと思う。

 まぁただの閃きだけどね。


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