1237.ギルド長の、涙。
『ツリーハウスクラン』に所属する冒険者メンバーは、現時点で、二十四組百三十三名になっている。
冒険者以外のメンバーは……まず『養育部門』の子供たち九十七人だ。
当初九十九人だったが、リーダーのツリッシュちゃんと、サブリーダーのハウジーちゃんが『冒険者部門』に所属しているので、その数を差し引いたのだ。
スタッフメンバーは、三十一人である。
内訳は……
○クラン全体の管理をする管理長のバーバラさんと、その部下の三人。
ちなみに部下の三人は、バーバラさんの代わりに奴隷の保護活動をしているので、ほとんど『ツリーハウスクラン』にはいない。
○副管理長として、クラン全体の総務的な仕事をしてくれているショムニーさん。
彼は、俺が奴隷商館から保護した初老の男性である。
○『養育部門』の長である養育長は、熊亜人のプップさん。
彼は元『ドクロベルクラン』に属していたパーティーの奴隷で、迷宮での『
○養鶏や野菜の栽培などの農業活動と、直売所の運営や屋台の運営などの商業活動を行う『事業部門』の長である事業長は、狼亜人のベオさん。
彼は『闇オークション』で、落札する形で保護した人で、エクセちゃんとセレンちゃんの父親でもある。
○農業指導をしてくれる農家のおじさんバナボさんと使用人十人の合わせて十一人。
○『炊事チーム』の長であるホールリダさんを含めた飲食店四人組。
○迷宮の地図作りを担当してくれる地図売りのイグジーくんとお母さんのパリーさん。
パリーさんは、『冒険者館』の管理人にもなってくれている。
○それから俺が呼んだ助っ人メンバー……『魔盾 千手盾』の付喪神のフミナさん、『ホムンクルス』のニコちゃん、『高速飛行艇 アルシャドウ号』の付喪神のエメラルディアさん、『雷使い』のラムルちゃんだ。
今は、この四人に『セイチョウ迷宮』の迷宮管理システムであるイチョウちゃん(四歳児のアバターボディ)も参加して、一緒に行動している。
まぁ一緒に行動していると言っても、『ツリーハウスクラン』で他の子供たちと遊んでいるだけだけどね。
○さらに特殊なメンバーとして、俺専用の執事とメイドとして紹介してある『スライマン』のスラリーとスラミティーちゃんがいる。
ただ現時点で、この二人が『ツリーハウスクラン』にいることは少ない。
日中は俺の指示で、『アルテミナ公国』全土を旅しているのだ。
まぁ旅をしていると言っても、転移の魔法道具を与えているので、すぐに戻って来れるんだけどね。
『エンペラースライム』のリンちゃんとともに、各市町の周辺だけでなく全土をくまなく回ってもらうことにしたのだ。
野良の『スライム』たちを集めつつ、悪魔たちの根城を探す為だ。
前に『セイチョウ迷宮』で遭遇した悪魔にマーカーを打ち込んであるので、その波動情報を検知できれば、存在場所が分かるのである。
俺は、『波動検知』で探すことができるが、これは俺にしか使えない。
ただ、『共有スキル』にセットしてある『万物探索』を使えば、同様に感じ取ることができるのである。
スキルレベルが10なので、俺の『波動検知』に近い性能を発揮できる。知っているものなら、検知できるのである。
本当は、自分でやろうと思ったのだが、各市町のみならず全土を回るのはかなり大変なので、下調べ的な意味を含めて、まずはスラリー達にお願いすることにしたのだ。
○冒険者で『ヘスティア王国』第三王女ファーネシーさんの執事セバスチャンさんも、クランメンバーになっている。
○それから『ツリーハウスクラン』に住んでいるわけではないが、特別にクランメンバーとなっているのが、迷宮都市太守のムーンリバー伯爵の孫娘ルージュちゃんだ。
動物メンバーもいる。
クラン農場にいる白馬、黒馬、ヤギ、鶏たちや『白金牛』モバスチャンだ。
『飛猿』のヤシチは、ニアの指示で『ツリーハウスクラン』の周辺を警戒していることが多いが、クランメンバーというよりはニアさんの部下という感じだ。
特別メンバーとして、『デミトレント』として覚醒した『ワイルドカジュマル』四体もいる。
彼らは、魂が宿った木で、いわば動けない『トレント』といった感じなのだが、クランのメンバーにはその存在を解禁している。
子供たちがいつも楽しそうに話しているので、隠すには無理があるからね。
そこで今回集まっている人たちにも、そのことを公開した。
魂を宿した木があることが、迷宮都市に広まってしまう可能性もあるが、まぁその時はその時だ。
もし悪さを仕掛けてくるような奴がいたら、返り討ちにすればいいし。
『デミトレント』たちも俺の『絆』メンバーになっているので、まだレベルが低いといっても『共有スキル』が使える。
ある程度身を守ることもできるのだ。
それに冒険者たちも大勢いるし、俺の仲間の盾の付喪神のフミナさん達もいるから、また夜襲されても、よほどの相手でない限りは窮地に陥ることはないはずだ。
発足式に集まった皆さんは、『デミトレント』四体についての俺の説明を聞いて、かなり驚いていた。
『トレント』という存在は結構有名だが、実際に見たことがある人はほとんどいない。
おそらくレントンがこの場にいたら、それだけでもすごい注目を集めていただろう。
そして『デミトレント』については、その存在自体が知られていないので、俺の説明に驚き、そして感動していた。
そして一番感動していたのは……『冒険者ギルド』のギルド長だ。
この家は、もともとギルド長が所有者だったが、俺が買い取ったのである。
若い頃には、冒険者仲間と一緒に住んでいたらしい。
このツリーハウスは、ギルド長も先輩冒険者から引き継いだのだそうだ。
代々引き継いできた場所のようで、何年前から存在していたのかは、ギルド長もわからないとのことだ。
ただ四本の大きな木と、もともとあった樹上のツリーハウスと木の後ろにある付属の家には、思い入れがあったわけである。
ギルド長は、四本の木それぞれのところをめぐり、泣きながら木と話をしていた。
あのギルド長が涙を流すのだから……相当な感動だったのだろう。
若かりし頃の自分たちを見守っていた木と話ができるなんて、確かにすごい感動するだろうね。
『デミトレント』達には、木だった時の記憶というか情報が断片的に存在しているようで、ギルド長のことが認識できたようだ。
ギルド長を“泣き虫マー坊”と呼んでいたのが、かすかに聞こえてしまったのだ。
どうもギルド長は、幼い時からここに住んでいたらしい。
幼い時から冒険者をしていたのか、身内が冒険者だったのか、冒険者に育てられたのか、どんな事情かわからないが、一度聞いてみたいものだ。
「いやぁ……お主にここを買ってもらって正解だったのう。まさかここの木たちに魂が宿って、話ができるようになるとはのう。年甲斐もなく泣いてしもうたわ、ワッハッハ」
ギルド長は木との話を終えて戻ってくると、俺にそう言って豪快に笑った。
泣いたことを隠そうともせず、涙を流しながらの泣き笑いだった。
「あの『デミトレント』たちは、ワシが住んでいた頃の記憶も少なからずあるようじゃ。昔話ができて感無量じゃわい。今後、ちょくちょく来さしてもらうことにするよ」
「いつでも来てください」
俺がそう言うと、ギルド長はいい笑顔で頷いた。
ギルド長は、『冒険者ギルド』の長と言う立場から賛助会員にはなっていないのだが、実質的にはクランメンバーみたいなもんだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます