1236.クラン、発足式。

 『エリアマスター』討伐の祝勝会は、戦利品の説明のパートで一旦終了となり、登壇していた俺たちは解放された。


 正式な式典は、一応終了なのだが、そのまま第二部が始まった。


 第二部は、吟遊詩人による弾き語りである。


 『サブマスター』戦と『エリアマスター』戦の戦闘の様子が、面白おかしく、そしてワクワクするアクション活劇として語られ、大いに会場を盛り上げていた。


 同行し戦いの様子を見ていたギルドの職員や、『強き一撃クラン』のメンバーたちから聞き取りをして、ストーリーを作ったようだ。


 吟遊詩人の語り口が素晴らしく、聞いていて面白かったのだが……俺たちが助っ人として活躍した場面が熱く、そしてかっこよく語られていて、少しこそばゆかった。


 主役のピンチに駆けつける助っ人というのは、どうしてもかっこよく写ってしまうので、レオニールさん達の活躍を若干奪い気味な話になっていて、心苦しかった。

 もっとも、さすが吟遊詩人で、最後のとどめを刺すシーンでは、クランメンバーやレオニールさんの活躍をしっかり伝えていて、かっこよく終わってくれていたので、ホッとした。


 みんな大興奮だった。


 討伐劇を語り終えた後に、吟遊詩人がなぜか『ツリーハウスクラン』が、近々何十年ぶりかの『レイド』を行うことを検討しているという話をしてしまった。

 そして、冒険者たちに『レイド』に参加できるように、今から気合を入れて自分を磨こうと呼びかけていた。

 もちろん会場は、興奮の坩堝と化していた。


 勝手にそんな告知をされて困ってしまったが、俺個人に対しての呼びかけはなかったのでスルーした。

 どう考えても、ギルド長が情報提供してるよね。


 『レイド』をやるかどうかの正式な返答は、まだしてないと思うんだけど……なんとなく、はめられた気がする。


 まぁ吟遊詩人の話は、『レイド』を検討中という告知だから、必ずやらなければならないというわけではない。

 だが……こんな大勢の前で告知され、皆が期待の大歓声を上げているのを見たら、やらざるを得ないよね。


 ギルド長から提案をされたときに、面白そうだからやろうと思っていたからいいんだけどさ。



 吟遊詩人の弾き語りの間は、『強き一撃クラン』の皆さんは、ゆっくりくつろいで食事をとっていた。


 そして第二部の弾き語りが終わったところで、パレードがスタートした。


 もうすっかり夕方の時間帯で、暗くなってきているが、この南区から中区を通って北区までパレードをするのだ。


 そして北区の宿で一泊して、翌朝、パレードをしながら戻ってくるという予定だ。


 俺たちも一緒にパレードをしようと誘われたのだが、あくまで主役は『強き一撃クラン』で、俺たちは助っ人なので、固辞させてもらった。




 ◇




 翌日夕方、『ツリーハウスクラン』は大忙しだ。


 これから『ツリーハウスクラン』の発足式が始まるからだ。


 クランメンバー及び賛助会員を集めて、正式な発足式をやることにしたのだ。


 前にギルド長にそんな提案を受け、準備を進めていたのである。


 もちろん関係者には、事前に連絡済みだ。


 もともとあった『ツリーハウス屋敷』の周辺の土地を購入することができ、区画ブロック丸ごと『ツリーハウスクラン』のものになったので、大人数が集まっても全く問題ない。


 関係者が集まっているだけだが、それでも三百人以上になった。


 前に衛兵隊独立部隊隊長のムーニーさんに、迷宮都市で一大勢力になっていると言われたが、そう言われてもしょうがないかもしれない。


 現時点でのクランのメンバーは……保護した子供たち、大人のスタッフ、冒険者と大きく三つに分類することができる。

 これとは別に準メンバーとしての賛助会員が、かなりの数に及んでいる。

 最初は子供たちを保護するためにクランを作ったのだが、現時点では冒険者の数が大きく上回って、本来の“冒険者の集まりとしてのクラン”の性質が強くなっている。

 冒険者だけで、すごい数になっているのだ。


 『ツリーハウスクラン』に所属する冒険者パーティーは、合計で、二十四組百三十三名になっている。


 ○Bランクパーティーは一組で、『闘雷武とらいぶ』の五人だ。

 リーダーアミスさんを中心に、冒険者に対する指導も行ってくれている。


 ○Cランクパーティーは一組で、俺たち『シンオベロン(仮)』だ。

 俺、ニア、リリイ、チャッピーの四人である。


 ○Dランクパーティーは、六組四十一名である。


 『美火美びびび』は、ニャンムスンさんをリーダーとする七人だ。

 新人冒険者の育成を、メインで担当してくれている。

 リーダーニャンムスンさんは、クランの冒険者部門の長である冒険者長も務めてくれている。


 『黒き飽食』は、ニクスキーさんをリーダーとする五人で、通称ガングロおじさん五人組だ。

 クラン全体の食事を作る『炊事チーム』にも入っている。

 と言うよりは……冒険者稼業は事実上引退して、炊事を担当してくれているのだ。


 『守護炎の騎士』は、ファーネシーさんをリーダーとする十一人だ。

 元々は、『ヘスティア王国』第三王女のファーネシーさんとその護衛の五人のパーティーだった。

 そこに、『ドクロベルクラン』から搾取されていた女性二人組の冒険者オーツさんとライさん、そして薬師娘三人組が加わった。

 赤髪のオーツさんは『火魔法』、茶髪のライさんは『土魔法』が使える。

 薬師娘三人組は、『魔法のライフル銃』を使った長距離攻撃と『竹筒水鉄砲』を使った回復支援を行う。

 さらに新たに俺の仲間になってくれた『水使い』のアクアリアさんがメンバーに加わって、『ヒーラー』ポジションを担当してくれる。


 『影の包囲網』は、ハッパさんをリーダーとする九人だ。

 騙されて奴隷にされ、セイバーン公爵領の『マットウ商会』に売られていたところを、助けた人たちである。

 ニャンムスンさん達『美火美びびび』のメンバーを助けたときに、一緒に助けた人たちなのだ。


 今は冒険者に復帰する準備をしているが、俺の依頼で『黒の賢者』についての情報や迷宮都市での悪事などを調べてくれている。

 事実上、『ツリーハウスクラン』の情報収集担当のような感じになってくれているのだ。

 二つの冒険者パーティー合わせて九人だったのだが、今回正式に一つの冒険者パーティーとして合併したのだ。

 クランに役立つ影の情報を幅広く集めたいという願いを込めてパーティー名をつけたらしいが……もはや冒険者パーティーとしての名前では無いような気が……。

 まぁいいだろう。


 『ドクロベルクラン』から搾取されていて、俺たちのクランに移籍してきた二組のDランクパーティーも合併をして、『守護の大木』というパーティーを結成した。

 十人のパーティーだ。

 『ツリーハウスクラン』に恩返しするために、クランを守る大木になりたいという意味を込めて名前をつけたらしい。


 ○Eランクパーティーは、十組五十三名だ。

 採用が八組四十三名で、『ドクロベルクラン』からの移籍が二組十人となる。


 ○Fランクパーティーは、六組二十九名だ。

 採用が五組二十名で、育成新人第一号が『希望の枝ブランチオブホープ』の九名だ。



 みんな『冒険者館』に移り住んでいるので、毎日賑やかである。


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