1201.百八体の、特殊なスライム。

 幻惑の結界というものに隠されていた『スライムの砦』こと『スライム神殿 月の院』にいる『スライム』たちは、『アイアンスライム』という特殊クラスの『スライム』だ。


 百八体いる。


 この『アイアンスライム』たちは、レベル1なのだが、『種族固有スキル』を二つ持っている。

 『鉄壁の守り』と『数珠繋ぎの秘法ロザリオスライム』だ。

 あと、もともと普通の『スライム』がレベル1の時点で持っている『分解』『吸収』『種族通信』も引き継いで持っている。


 『鉄壁の守り』は、『波動鑑定』による詳細表示によれば……物理反射の能力と魔法耐性の能力で、常時発動しているようだ。


 つまり物理攻撃では、ほぼ倒せない『スライム』ということだ。

 強力な魔法だったら、『魔法耐性』があるといっても、少しずつは削れるだろうから、何発もぶち込めば倒せるだろう。

 レベル1だから『身体力(HP)』数値が低いからね。


 だから無敵というわけではない。

 だが、かなり強いだろう。


 そして、もう一つの『種族固有スキル』である『数珠繋ぎの秘法ロザリオスライム』は、同時にクラスチェンジした個体が合体し、新たな『スライム』となると表示されている。


 詳細表示を確認すると……その際、第一次限界であるレベル99を突破することができると書いてある。

 百八体で合体すれば、レベル108となり、ステータス数値も合わせたものになるようだ。


 それは、めっちゃ凄い。かもしれない。


 実は、リンちゃんは『合体指揮』という『種族固有スキル』を持っていて、他の『スライム』を自分に合体させたり『スライム』同士を合体させて、レベルの高い『スライム』を作ることができる。

 だが、今までのテストの結果では、レベル99までしか合体できなかったのだ。

 レベル100に至ることができなかったのである。


 前にニアも言っていたが、普通はレベル99を超えて100になることはできないと思われているらしい。

 そんな知識を、まことしやかに書いている本もあるそうだ。


 おそらく、一旦の限界がそこで来るということなのだろう。


 それが、この説明に表示されている第一次限界ということなのだろう。


 まぁ俺の場合は……そんなものははるかに通り越し、システムの設定を超えてしまっている状態なわけだけどね。


 それはともかく……このスライムたちが合体すると、リンちゃんの『合体指揮』で作った『スライム』よりも、レベルが高い『スライム』になるということだ。


 今のところ、この世界でレベル100以上の存在を見たことがないから、この『スライム』たちが合体したら、俺の知る中で、最高レベルということになる。もちろん俺自身を除いてだが。

 なんだか見てみたいな……。


「リンちゃん、試しに……この子たち……合体してくれないかなぁ?」


「お願いしてみる」


 リンちゃんはそう言うと、バウンドしながらお願いしてくれている。


 そして聞いていた『スライム』たちが、二回バウンドした後に、三回バウンドした。


 これは……肯定の二回バウンドと喜びの三回バウンドでは……?


「あるじ、特別にやってくれるって。でも一瞬だけみたい」


 おお、すごい!

 なんてサービス精神旺盛な……ありがたい!


 見ていると……みんなプルプル震えた後……数珠繋ぎにくっついた。


 そして百八体全てがくっついた後に、一瞬だけ光った。


 リンちゃんの『合体指揮』は、一つの大きな『スライム』になるのだが、この子たちは百八個の玉が繋がったみたいな感じになっている。


 そして先頭の子が、パカッと体を横に開いた。

 まるで細長い生き物が、口を開けたような感じになっている。


 巨大な蛇というか……ミミズというか……とにかく、そういう感じになっている。


 俺は『波動鑑定』をかける。


 そうすると……『特殊合体スライム ロザリオスライム』と表示される。


 しかもレベルが108だ。本当だった!

 第一次限界というやつを、突破している。


 『種族固有スキル』は、『アイアンスライム』と同じで『鉄壁の守り』となっている。


 この高レベルで、物理反射と魔法耐性を持っていたら……ほぼ無敵じゃないだろうか?

 レベル108では、強力な魔法でちょっとずつHPを削ったとしても、HPが多くて、削りきることなんてできないよね。


 まぁ物理反射も魔法耐性も、『共有スキル』として俺の『絆』メンバーにはセットされているから使えるのだが、俺の仲間以外では、これほど無敵感のある生物はいないのではないだろうか。


 『歓喜のロザリオ』と『嘆きのロザリオ』いう『種族固有スキル』もあるが、詳細が表示されない。


 おっと、もう合体を解いてしまった。


 みんな元の状態に戻った。


 『スライム聖女』が『セイチョウ迷宮』が危なくなったときに、防衛戦力に使えると言い残した意味がわかる。


 この『スライム』がいたら、ほぼ無敵だろう。


 少なくとも守りは鉄壁だからね。

 攻撃力だって、高レベルからくる高ステータスで、体当たりしただけでも相当強いだろう。



 俺は、『アイアンスライム』たちに礼を言って、この『スライムの砦』こと『スライムの神殿 月の院』を後にした。


 いやー、発見できて良かった。


 そして……フリークエスト的なものが発生してしまった。


 ……また忙しくなってしまいそうだ。


 これは、強制的に休息日を決めてしまわないとダメかもしれない。

 まぁ休んだばかりだから、しばらくは大丈夫だろうけどね。


 だがうっかりそんなことを思うと……引きこもっている『怠惰』スキルのタイディちゃんに、怒られそうだけどね。


 そう思った瞬間、頭の中に『チッ』という舌打ちが響いた……トホホ。


 彼女は引きこもりつつ、俺の状況を完璧に把握しているからね。

 まぁ俺自身なんで、当然ではあるんだけど。


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