1185.実は、負荷がかかっていた。

 (あの……『怠惰』スキルについて、詳しく教えてくれないかな?)


 俺は、引きこもりスタイルで俺の脳内イメージに現れてくれた『怠惰』スキルさんに、改めて尋ねてみた。


 (だから、説明に書いてあるでしょうよ! 休むほどに能力が上がるし、周りの出来事も良くなるのよ!)


 (それがよくわからないんだけどなぁ……。どのぐらい休めばいいわけ?)


 (ほんとあんたって、察しが悪いのよね。

 あんたさぁ、『フェアリー商会』のスタッフにはさぁ、週休三日で休ませるわけでしょ? 

 まぁこっちの一週間は十日なわけだけどさぁ。

 最低それと同じくらいは、休めってことよ。

 あとは……睡眠時間ね。夜中にさぁ、いろいろ作ったりしたい気持ちもわかるけどさぁ、ちょっとセーブしろってことよ!)


 なるほど。

 この人……口は悪いけど、意外とちゃんと教えてくれるいい人みたいだ。


 (てか、他人事のように言ってるけど、私もあんた自身ですけど!)


 そうなんだよねぇ……。

 そう考えると……俺の魂の願望の中に、引きこもり要素があるってことだよね。


 (そりゃそうでしょうよ! 引きこもりって、結構楽しいからね! まぁオタク要素もあるしさ。

 あんたの中には、大体の要素があるから! 

 要素の詰め放題状態ね!)


 なんか……軽くディスられてるような気がするのは……気のせいだろうか?


 (それから……ナビーちゃんが、リアルにあんたを補佐する役目だとすれば、私は……引きこもって、あんたの健康管理をするみたいな役割を担っていると思ってくれればいいわ)


 ほう、なるほど。

 それはめっちゃありがたい。


 (わかったら、ちゃんと感謝してさぁ、私が登場しなくていいようにしてくれる! 引きこもりはさぁ、引きこもっているうちが華なんだから!)


 うーん、なんか……わかるような、わからないような……。


 (忘れないうちに、教えといてあげるけどね、オーバーワークで能力が下がるとか、休んで能力が上がるっていう時の能力は……『基本ステータス』や『サブステータス』の数値じゃないから。

 まぁ関連はしてるけどね。

 例えば、自然回復量が違うのよ。ここんところは、本来の適正状態よりも低い自然回復量だったわけよ。

 どうせ鈍いから気づいてなかっただろうけどさ)


 そうだったのか……確かに気づいてなかったなぁ。


 (それからねぇ、もっと大事なのは……『基本ステータス』や『サブステータス』に現れない所に、大きく影響してるのよ。

 特に、スキルの身に付き易さとか……スキル内のコマンドの発生率とか。

 十分に休めてないと……『怠惰』スキルの効果で、そこら辺の能力が大幅に制限されちゃうのよね。

 それなりにはスキルも増えてきたし、コマンドも増えたと思うけど、本来ならもっと楽に取得できたり、発生したりしてたはずなのよ! 

 『固有スキル』として後から開放された『自問自答』スキルなんかは、まだスキルレベルmaxになってないけど、レベルの上がり方が、かなり遅くなってたのよ。

 今回、休養したことで、やっとスキルレベルが6に上がったけどね)


 なるほど。

 そんな不利益があったのか……。

 全然気づいてなかった。


 ていうか……普通わからないよね。

 それならそうと、わかるように教えてくれればいいのに。


 (ちょっとなにそれ!? 文句言ってるわけ!? まったく、呆れちゃうわ! 

 大体ね、普通なら過労死してもおかしくない状態だったのよ! 

 『限界突破ステータス』だからってね、調子ぶっこきすぎなのよ!)


 やばい……キレている。

 俺の心の呟きが、怒らせてしまったようだ。


 ここは素直に謝るしかない。

 ……ごめんなさい。


 『限界突破ステータス』の弊害というか……ホントならもっと体がしんどかったりするところが、そういうものを感じないで済んだから、働きすぎ状態になっていたわけだよね。


 実際、『限界突破ステータス』のおかげで、体力的にも精神的にも特にダメージはなかった。

 でも見えないところで、影響を受けていたと言うことなのだ。


 (もっとメリハリをつけなきゃダメよ! あんたの場合さぁ、敵と戦うとかさぁ、どうしてもハードワークしなきゃいけない時があるんだから、何もない時ぐらいのんびりしなきゃだめよ)


 確かにその通りだな。

 これを機会に、気をつけるしかない。


 (あーそれから言っとくけどさぁ、私の事は、基本呼び出さないでよね。落ち着いて引きこもれないからさ)


 じゃあ……あまり会えないのか……残念だなぁ。


 (いいわよ別に。こっちはちゃんとわかってるから)


 ナビーと一緒で……あっちは俺の状況が全てわかってるのに、俺は意図しなければわからないという理不尽な状況に置かれてしまうようだ……トホホ。


 (そういえばさぁ、君にも名前をつけていいかな?)


 (……嫌な予感しかしないけど……まぁ好きにつければ)


 (そうだなぁ……『怠惰』スキルの化身みたいな感じだから……タイディとかどうかな?)


 (げ、予想通り安直な名前を付けた。そんなことだろうと思ったわよ。

 どうせならね……七つの大罪の『怠惰』の英語のスロースからとって、スローとか、そんなのが思いつけないわけ! 

 あ、いや、やっぱダメだわ。それはそれでダメね。めっちゃゆっくりな感じで嫌だわ……。

 くそっ! 所詮あんたの分身だから、私自身にも名づけセンスがないのよ、くそっ、くそっ、くそっ)


 やばい……一人でキレだした。


 てか、この人もめっちゃキャラ濃いんですけど。


 (ほっといてくれる!)


 うげ、……はい、ほっときます。

 名前は……タイディでいいのかな?


 (もうそれでいいわよ!)


 (ありがとう、タイディ、あと何か気をつけることは、あるかな?)


 (とにかく、ちゃんと休養をとることね。次に強制発動したら、もっと長い休眠になるかもしれないわよ! 

 あと今回の強制休養によって、かなりパワーアップしてるはず。新たにスキル内コマンドが発生してるから、確認しておいて)


 おっと……なんと、スキル内コマンドが発生してるのか!

 それは確認しなければ!


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