1143.まさか、改造人間!?

「ひぃぃぃぃっ」

「ぎぃぃぃぃっ」

「うぃぃぃぃっ」

「「「いぃぃぃぃっ」」」


 ん! 『養育館』の方から、悲鳴のようなものが聞こえた!


 あれは……敵の悲鳴だったようだ。


 現れた敵を制圧したらしい。


 男が六人、煙を上げて倒れている。

 あいつらは……!?

 カッパードをはじめとしたおかっぱたちだ!


 確か…… 『刈髪怒奇頭カッパドキア』とかいう、ふざけた名前のパーティーだ。


 全員、さらさらのおかっぱ頭だったが……今はチリチリ頭になって、気絶している。


「悪いことをしちゃ、ダメだっちゃ!」


 虎耳の六歳児ラムルちゃんが、おかっぱたちに向けて言い放った。


 おかっぱたちの状態からして……どうもラムルちゃんが、『雷使い』スキルを活かして、電撃を放ったようだ。


 六歳児にやられて、お説教される中堅冒険者って……。


 それにしても……トレードマークとも言えるおかっぱヘアーが、チリチリヘアーに変わっている……。


 あいつら、やられる時まで笑える。


 あと……ラムルちゃん……今、「だっちゃ」って言ったよね?


 誰だよ、だっちゃ口調教えちゃったの!?


 てか、見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんしかいないけどさ。


 いたいけな幼女に、何仕込んじゃってるわけよ!?


 まぁ可愛かったから、いいけどさぁ。


 ラムルちゃんは、『雷使い』スキルを使いこなすために、毎日大森林で他の『使い人』の子たちと特訓している。

 だから、もう力の加減もできるようになっていて、人を殺さないで制圧できる程度の制御が、十分にできるのだ。


 だからカッパードたちは、気絶しているだけで致命傷にはなっていない。


 しばらくは、動けないだろうけどね。


 (フミナさん大丈夫ですか?)


 俺は、念話を繋いでフミナさんに状況を確認した。


 (はい、今子供たちを拐おう密かに近づいていた者を、ラムルちゃんの電撃で制圧したところです)


 (わかりました。相手は『ドクロベルクラン』の連中です。他にも伏兵がいるかもしれません。十分気をつけてください)


 (はい、分かりました。それから、イチョウちゃんが、なぜかゴーレムを動かしている術者の居場所がわかったようで、教えてくれました。今エメラルディアさんが制圧しに行きました。後ろの家の屋根に潜んでいたようです)


 (そうですか。わかりました)


 イチョウちゃんが、場所を察知したのか……。


 そういえば、この襲撃も、イチョウちゃんが最初に俺に教えに来てくれた。


 なんだろう……?

 彼女は特別なスキルでも持っているのか?


 そういえば、彼女を『波動鑑定』していなかった。

 孤児たちひとりひとりを、『波動鑑定』で確認しているわけではないからね。

 この襲撃を制圧したら、確認してみよう。



 (グリムさん、エメラルディアです。近くにいたゴーレムの術者を全て拘束しました。全部で六人です。六人とも腕が魔法道具みたいになっていて、どうもその力でゴーレムを操っていたみたいです)


 おっと、また新しい情報だ。

 そして、もう制圧してくれたようだ。


 (ありがとうございます。拘束した者たちを連れて来てもらえますか?)


 (分りました。すぐに連れて行きます)



 エメラルディアさんは、すぐに六人を運んできてくれた。


 縄でぐるぐる巻きにして、引きずりながらすごい速さで駆けて来たのだ。


 確かに両腕に魔法道具がはまっている。

 というか……両腕自体が魔法道具と一体化している。

 まるで機械の腕がついた状態だ。


 『波動鑑定』をかけると…………ん! どういうことだ!?


 『状態』表示に、『改造人間状態』と表示されている。


 なんだ……?


 『種族』は、あくまで『人族』なのだが、『状態』表示が『改造人間状態』となっているのだ。


 改造人間って!?

 ……変身する的な?

 まさかね……?


 腕が魔法道具となって、改造されているからか?


 腕を改めて確認すると……腕自体が完全に魔法道具というか、俺的には機械の腕に見える。

 本来の腕を切断して、取り付けているように見えるが……?


 腕の部分に焦点を当てて、『波動鑑定』をかける。


 『名称』が『魔具 ゴーレム創造術式構築アーム』と表示される。

 なんと『究極級アルティメット』階級のアイテムだ。


 詳細表示を確認すると……『生体の器官と一体化することで発動する『生体融合魔具』。『土魔法——ゴーレム創造』を術式化した『土魔術——ゴーレム創造』を発動できる』と表示されている。


 この装置によって、上級の土魔法である『ゴーレム創造』と同じことができるようだ。


 ただし、腕として体に組み込む必要があるということなのだろう。


 この術者たちを捕まえて、意識を刈り取ったことで、『養育館』に現れていた即席の弱いゴーレムたちは、稼働状態が停止し崩れ去った。

 土の塊になっている。



 ——ゴオォォンッ

 ——グギャァァァッ


 この音……今度は、ニアたちが戦っている隣の倉庫からだ!


 (グリム、大変! ゴーレムを操っていた冒険者たちが、人じゃなくなっちゃった!)


 ニアから早速念話が入ったが、少し慌てている。


 (どういうこと!?)


 (これ……『魔物人まものびと』……間違いない! 『魔物人まものびと』になっちゃってる!)


 え! 『魔物人まものびと』……?


 『正義の爪痕』が『魔物化促進ワイン』を作って、それを飲んだ人がマイナスの感情を引き金に、人の意識を保ったまま魔物に変わる……それが『魔物人まものびと』だ。

 それと同じ状態だと言うのか?


 もう『魔物化促進ワイン』は流通していないはず……。

 『正義の爪痕』も壊滅させた。

 なぜ?


 生き残りがいたのか?


 いや待てよ……影で糸を引いていた悪魔だったら、その成果を盗むことも可能なはず。


 まさかこの襲撃にも……悪魔が絡んでいるのか?


 『ドクロベルクラン』が作り出したとは思えない。

 悪魔は、『ドクロベルクラン』にも関わっているというのか?


 (グリム、倒しちゃうわよ?)


 (うん。もう人に戻すことはできないし、やむを得ない。俺も、すぐそっちに向かうよ!)


 この目で確かめないと……


 俺は、ニアたちが戦っている隣の倉庫に向うことにした。


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