1142.ゴーレムを強化する、魔具。

「ニア、リリイ、チャッピー、ゴーレムの術者がどこかに潜伏しているはずだ。探し出して拘束して。でも、万が一の危険を考えて、三人一緒に行動して」


 俺は、ゴーレムを稼働させている術者を倒すために、その捜索をニアたちに依頼した。


「オッケー!」

「了解なのだ!」

「任せてなの〜」


 三人は、揃って飛び出していった。


 チャッピーが先導している。

 チャッピーは、勘がいいから、すぐに見つけてくれるだろう。


 悪魔の襲撃の可能性もあるから、三人一緒に行動してと頼んだが……感覚的には、悪魔の襲撃ではないと思っている。


 悪魔と何度か対峙したときの独特の感じが、ないんだよね。


 それに悪魔が襲って来たにしては、攻撃が薄いと思うんだよね。

 このゴーレムは強いとは言え、所詮ゴーレムだからね。


 もっとも、ここが普通のクランだったら、十分な脅威だろうけど。


 俺たちの実力をわかってない奴が、襲って来たということだろう。

 可能性として一番考えられるのは……『ドクロベルクラン』だな……。


 だが……奴らに、これほどゴーレムを使えるスキル持ちがいるだろうか?


 こんなことなら、昼に行った時に『波動鑑定』しておけばよかった。


 待てよ……そうだ! このゴーレムを『波動鑑定』してみよう。


 『波動鑑定』すると……『名称』が『土人形スヤッキー』となっている。

 『階級』は『上級ハイ』だ。


 当然だが、生物のステータス画面ではなく、物品のステータス画面が表示される。


 そして『状態』表示に、『土魔術——土由来の人形ソイルゴーレムによるゴーレム化状態』と表示されている。


 やはり俺の『ボタニカルゴーレム』の土素材版のようだ。

 先に人形を作っておいて、それに魔法を発動し動かすという方法だ。


 魔法としては、何もない土から人形を形成し使役する『ゴーレム創造』の方が高度なんだろうが、出来上がりのゴーレムの強さは、あらかじめ作られた人形を動かすこの魔法の方が、強くできる可能性が高い。


 ただよく見てみると、『表示』が『土魔法』ではなく『土魔術』となっている。

 ……魔法道具のようなもので、術を発動させているのかもしれない。

 まぁ魔術は、理論的には練習すれば誰でも身に付けられることになっているから、身に付けた者が術を発動しているのかもしれないけどね。


 それにしても、このゴーレムは、なぜ破壊したところが集まってきて再生するのだろう?


 『波動鑑定』しても、それらしき表示は見られないので、謎のままだが……しょうがない。

 もともとの人形が、何かそういう機能を持った魔法道具的なものなのかもしれない。


 まぁ今考えていても、しょうがないけどね。


 『養育館』の方を襲っている弱いゴーレムを『波動鑑定』すると……『名称』が『土魔法によるゴーレム』となっている。

 『階級』は、表示されない。


 魔法によって、土素材から一時的に作り上げているだけだから、『階級』が表示されないのかもしれない。

 『状態』表示にも、特に何も記されていない。



「グリムさん、ゴーレムの中に変な装置が入ってます!」


 そう言いながら俺のところに駆け寄ってきたのは、『美火美びびび』のリーダーニャンムスンさんだ。


 再生するゴーレムを、一体完全に破壊したようだ。


「これが?」


「はい、ゴーレムの体の中心というか胸のところに、ついていたんです。これが取り出せたからか、もう再生しませんでした!」


 おお! 再生する秘密はこれなのか!?


 俺に手渡してくれたのは……拳大の丸いケースのようなものだ。

 中に、『魔芯核』が埋め込まれている。

 ケースのようなものには、上下に幾つもの突起がある。


 『波動鑑定』をかけると……『名称』が『魔芯核シナプス』と表示された。


 詳細表示を確認すると……『ゴーレム用の魔具で、『魔芯核』をセットし稼働させる疑似魔法神経。ゴーレム用の人形にセットすることで、ゴーレム化した際に、動きが良くなり強力になる。『魔芯核』をエネルギー源とすることにより、長時間稼働させることが可能』と表示されている。


 なるほど、この魔法神経の働きで、破壊されても素材が戻ってきて再生するのだろう。


 このゴーレムの強さの秘密は、この装置のようだ。


「ニャンムスンさん、これを取り出すことができれば、ゴーレムは再生できないはずです。他のメンバーに伝えて下さい!」


「了解しました。体の中心を狙います!」


 ニャンムスンさんは、すぐに戦闘に復帰した。


 ニャンムスンさんのおかげで、大きな発見ができた。


 それにしても、こんな特別な装置……どうやって手に入れたんだろう?



(グリム、見つけたわよ! 隣の倉庫の中にいた。襲って来たのは、『ドクロベルクラン』の連中よ!)


 ニアから念話が入った。


 ゴーレムを操っている術者を、見つけてくれたようだ。

 そして、襲撃者の正体は、『ドクロベルクラン』だった。


(すぐに制圧できそう?)


(ちょっと時間がかかるかも。すごい数のゴーレムに取り囲まれてるのよね。周辺被害を考えない戦いをするなら、すぐなんだけどさ)


(わかった。焦る必要は無いから、なるべく周辺被害を出さない戦いで頼むよ)


 ニアさんがめちゃくちゃやったら、周辺被害がほんとに出ちゃうからね。


(わかったわ。こいつら倒しても、すぐ再生しちゃうから面倒くさいのよね)


(ニア、今わかったんだけど、体の中心部分に拳大の装置が埋め込まれている。それを外してしまえば、もう再生できないよ)


(そうなの! オッケー、じゃあ体の真ん中を狙えばいいわね!)


(それでいいと思う)


(リリイとチャッピーにも伝えて、すぐに制圧しちゃうわ!)


 よし、ニアたちが術者を見つけてくれたから、このゴーレムによる攻撃はじきに終わるだろう。


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