1129.子供たちのおやつが、主力商品になる予感。

「これは、今日クランの子供たちのために作った『ポテトチップス』というおやつです。よかったらどうぞ」


 俺は、ギルド長、副ギルド長のハートリエルさん、綺麗可愛い狐亜人受付嬢のリホリンちゃん、綺麗セクシーなグラマラス受付嬢のナナヨさんに、巨大バナナで作った『ポテトチップス』を食べてもらうことにした。


 クランの賛助会員になってくれたことへのお礼の意味も込めてだ。


 ギルド長と副ギルド長のハートリエルさんは、一旦様子を見るということで賛助会員にはなっていないが、いつもお世話になっているからね。


 これが巨大なバナナ『三日月バナナ』の実で作ったものであることを説明し、最近では手に入らなくなった『三日月バナナ』を手に入れた話も伝えた。


「ニア様、『三日月バナナ』を採って来たのですか? 凶暴な猿たちを従えたのですか? ワッハッハ。さすがですのう」


 ギルド長がウケている。


「楽勝よ! あの猿たちは、今後は無闇に人を襲ったりしないと思うけど、その話は広めないようにして。悪い人間はやっつけちゃって構わないって言ってあるから。悪い奴が行っちゃったら、今まで通りボコボコにされちゃうだろうから」


 ニアは、軽いノリでちょっと怖いことを言っている……。


「分りました。猿は今まで通り、危険な存在ということにしておきましょう。それにしても……懐かしいですなぁ。昔はよくあったし、クエストにも出てたのですよ」


「そうみたいね。そんなに懐かしいなら、ギルド長に一本あげるわよ」


 ニアそう言うと、『アイテムボックス』から巨大バナナを一つ取り出した。


 ドスンッという音と共に、みんなから驚きの声が上がる。


「おうおう、これじゃこれ! 懐かしいのう。ニア様、ほんとにもらっていいのですか?」


「もちろんよ」


「いやぁ、嬉しいですわい。ありがとうございます。それにしても……この実を使って、こんなに美味いもんができるとは……」


「今回は、たまたま手に入ったこのバナナの実を使いましたけど、ジャガイモでもできますから」


 バナナで作ったポテトチップスに感動しているギルド長に、本来はジャガイモで作るものだと伝えておかないとね。


「そうかい。これ……ギルド酒場でつまみとして出してもいいかのう? もちろん『ヨカイ商会』から仕入れるけどのう」


 ギルド長が、期待のこもった目をしている。

 気に入ってくれたようだ。


「そうですね……いいですよ。作り方は簡単なんです。薄く切って、油で揚げるだけですからね。発想だけの料理なんです」


「グリムさん、何言ってるんですか!? その発想が一番大事なんじゃないですか! ほんとにいいんですか? ギルド酒場に作り方を教えちゃって。グリムさんのところで作って、納品したほうがいいんじゃないですか?」


 リホリンちゃんが少し問い詰めるような感じで、そんな提案をしてくれた。


 俺のことを第一に考えてくれるの嬉しいのだが、ギルドの職員がギルドが経営する酒場に不利な提案をしていいんだろうか……?


「そうじゃのう。それでも良いかもしれんのう。この状態で納めてくれるなら、調理しなくていいから、楽でいいのう」


 ギルド長が、提案に乗っかってしまった……。


 確かに『ポテトチップス』だから、揚げたてじゃなくてもいい。

 それもアリだな。


 どっちがいいかなぁ?


「グリムさん、私の計算によれば、当面は『ポテトチップス』として完成品を納品した方が、両者にとってメリットが多いと思います。

 グリムさんのメリットは、もちろん売り上げが立つことです。

 クランで製造して、『ヨカイ商会』を経由してギルドに納品するかたちになると思いますが、クランにかなりの売り上げをもたらすはずです。

 もちろん薄利とは言え『ヨカイ商会』にも利益が落ちます。

 ギルド酒場のメリットとしては、調理の手間が省けます。

 調理人の負担を増やさずに、人気メニューを一つ獲得することができるのです」


 ナナヨさんが、冷静な分析をしてくれた。


 この人は、元冒険者で腕も立つのだが、商売もいけるみたいだ。


 それにしても……いつも話した後に、色っぽく見つめるのはやめてほしい。


 密かに……というか抜かりなく、ニアさんの『頭ポカポカ攻撃』が発動しているんだよね……トホホ。


「はい、はーい! この折箱に入れたやつも、いくつか納品してもらったらいいと思います! 

 お客さんが買って帰ると思います! 

 お持ち帰りのお土産にもいいし、迷宮に行く時に持っていってもいいと思うんですよね! 」


 今度はリホリンちゃんが、元気いっぱいに、手を上げながら提案してくれた。


 なんか学生みたいで、可愛い。


「やはり……当面はお前さんのクランで作って、完成品を納品したほうがいいんじゃないかのう。

 調理法はシンプルだとしても、その作り方が広まらないうちは、独占的に販売した方が良いだろう。

 そのうち、見よう見まねで類似品を作る者も、自然と出るじゃろう。

 そうなったから、正式に作り方を公開すれば良いのではないかのう」


 ギルド長が改めてそう言って、俺に返事を促すような視線を送った。


 ギルド長も、俺というかクランの利益を考えてくれているようだ。


「そうですね。その方向で検討してみます」


 子供たちに喜んでもらおうと軽い気持ちで作った『ポテトチップス』だが、人気商品になるかもしれない。


 というか、確実になるな。


 元の世界にいたときの感覚では、『ポテトチップス』が嫌いっていう人は、あまりいなかったと思うんだよね。


 クランの収入源として作るか……。


 ふと思ったが……味付けを塩だけじゃなくて、色々工夫したら、安定して商売として成り立つな。


 作り方自体は、みんなすぐに思いつくだろうが、特殊な味付けなら簡単には真似されないよね。


 のり塩、ガーリック、コンソメとか……。


 ハーブ塩とかもいいかもしれない。


 味のバリエーションを考えるのも、楽しそうだ。


 クランで作る野菜や卵などの直売所でも、折箱に入れて販売したらいいね。


 ここにいるみんなは、さっきから、すごい勢いで食べている。

 手が止まらず、常にバリバリという音がしているのだ。 


 俺は、ギルドの他のスタッフの皆さんにも配ってほしいと言って、折箱を五つを出した。


「こんなにもらっていいんですか!? みんな喜びます! ありがとうございます!」


 リホリンちゃんが、大喜びで尻尾を揺らしている。

 なんか可愛い。


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