1130.クランの、情報。
「そろそろ本題に入るかのう。訪ねてきた目的は、『ドクロベルクラン』のことじゃろう?」
ギルド長が、苦虫を噛み潰したような渋い顔した。
「はい。実は昨日の面接に『ドクロベルクラン』に入っている冒険者が来まして、助けを求められたのです」
俺はそう言って、女性冒険者から聞かされた話を伝えた。
甘い言葉でしつこく勧誘され、入った後は手のひら返しで冷遇された挙げ句、上納金を要求される。
払えないと借金として膨らんでいき、抜けることもできずに、搾取され続けているという話だ。
「まったくもって困った奴らじゃ。じゃが……前にも言ったが、それぐらいのことでは、ギルドとしては介入できん。騙したという証拠や理不尽な暴力とかが、証明できれば別じゃがな」
「ええ、わかっています。ギルドの立場は、十分わかっています。ギルドに動いてもらおうというのではなく、私がその冒険者をどうにかして助けたいのです。そのための情報が欲しいのです。『ドクロベルクラン』の情報、注意点があれば教えてください」
「それは良いが……対決する気か?」
「いえいえ、あくまで穏便に解決できればと思っております」
「まぁできれば、そうしてほしいところじゃな。クラン同士の抗争なんて、いい事は一つもないからのう」
ギルド長はそう言うと、リホリンちゃんに頷いて合図を送った。
「では私から、『ドクロベルクラン』についての情報を、かいつまんでお伝えします」
リホリンちゃんはそう言って、『冒険者ギルド』に登録してある情報をもとに、クランの基本的情報を特別に教えてくれた。
それによれば……
『ドクロベルクラン』を構成しているのは、十の冒険者パーティー。
クランマスターは、Cランクパーティー『
サブリーダーが二人いて、ポロンジョ氏と合わせた三人組が有名らしい。
ポロンジョ氏は若い女性で、サブリーダーの二人はトヤッキーとボンズラーというおじさんなのだそうだ。
他にDランクのパーティーが六つ、Eランクのパーティーが三つという内訳になり、総勢四十九人にも及ぶ大きなクランらしい。
十のパーティーで構成されていると言っても、実質はマスターのいるCランクパーティーと、Dランクパーティー六つのうちの四つで運営しているクランと言われているそうだ。
残りのDランクパーティー二組とEランクパーティー三組は、搾取の対象でしかないらしい。
ただこれは、冒険者の間で言われていた噂を総合的に判断したもので、正確かどうかはわからないとのことだ。
「Dランクパーティーの中にも、搾取されているところがあるんですか?」
俺は、不思議に思い尋ねてみた。
駆け出しや若手の冒険者ならまだしも、ある程度実力がある中堅冒険者まで搾取されるなんて、少し信じがたい。
「はい、断言はできませんが、噂を総合するとそうなると思います」
リホリンちゃんが答え、周りの皆さんは渋い顔をしている。
「経験も実力もある中堅パーティーでも、抜けられないものなのでしょうか?」
「そうですね。借金を背負わされちゃいますし、何か脅されている可能性もあると思います。痛め付けられて、奴隷として売られる可能性もありますし」
「リーダーをやってるポロンジョという人は、強いのですか?」
「そうですね。迷宮都市に八組しかいないCランクパーティーの一つのリーダーですからね。一流冒険者です」
「クランに引き込んだ冒険者を搾取の対象にしてる以外に、何か悪いことをしている噂はないのですか?」
「それが……何かやっているようなんですが、巧妙に隠しているようで、はっきりしたことはわからないんです。何かの研究をしているという噂も耳にはしているんですけどね……」
「そうなんですね」
まぁギルドで普通に集められる情報は、この程度だよね。
「すまんのう。大した情報は無いのじゃ。まだ本格的には調べておらんのじゃよ。理由もなくクランの内情を、ギルドが調べるわけにはいかんからのう。それに同じように内部で揉めているという評判が立っているクランは、他にも二、三あるからのう」
「そうなんですか」
「そうじゃ。搾取しているところもあれば、冒険にいかせないで、無理矢理商売させていると噂されているところもある」
なるほど、素行が良くないクランが他にもいくつかあるわけだ。
「今クランは、どのぐらいあるんでしょうか?」
「現在は、十二、三といったところじゃろ」
「正確には、グリムさんのクランで十二組となります。あと……正式にクランとしては登録していませんが、事実上クランと言える実態があるグループもあります。複数のパーティーが、集まっているところがあるんです。まぁクランと言うよりは、仲良しグループですけどね」
「一番規模の大きいクランは、何人ぐらいなんでしょうか?」
「今までの最大規模のクランは、『ドクロベルクラン』の四十九名です。
現在の最大規模のクランは、もちろんグリムさんの『ツリーハウスクラン』です。
登録の時点で、子供たちだけで百人を超えていますし、これから冒険者としてクランに入る人たちを追加登録すると、冒険者の数だけでも『ドクロベルクラン』を抜いちゃいますよね?」
「ええ、そうなりますね……」
奇しくも、最大規模のクランになってしまったようだ。
まぁ子供たちが百人超えだったから、もともと人数では最大規模だろうと思っていたけどね。
「そういえば、クランメンバーの追加リストを忘れずに出していってくださいね」
「わかりました。後で渡します」
リホリンちゃんが、しっかり担当としての仕事をしてくれるのでありがたい。
「優良なクランもあるのじゃ。今二組しかいないBランクパーティーの残り一組もクランを作っていて、そこはかなり良い。
ただ新人の育成には、力を入れていないがのう。
Cランクパーティーが二つ入っていたのじゃが、最近追加でもう二組入れて、『エリアマスター』の討伐に向けて準備中じゃ」
「それは素晴らしいですね。そういう……共同で『エリアマスター』を討伐するというのが、本来のクランの目的ですもんね」
「そうなのじゃよ。いずれ紹介する機会もあるじゃろう」
「ぜひお願いします。楽しみです」
おそらく、そのクランが迷宮都市で実力的には一番のクランなのだろう。
ぜひ会ったみたいものだ。
まぁ超一流の冒険者という事からすれば、既にBランクパーティーの一組である『
いろんな冒険者の話を、聞いてみたいんだよね。
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