1127.胸が強調される、全身鎧って……。

 『ヘスティア王国』の第三王女であるファーネシーさんたちとの話は一段落したが、輸送隊が運んできた物資の確認をすることになり、なぜか俺も立ち会うことになった。


 『闇の掃除人』として助けたときに、セバスチャンさんがどうしても渡したいものがあると言っていたが、それは国王陛下からファーネシーさんへのプレゼントだったようだ。


 中堅冒険者であるDランクに昇格したお祝いらしい。


 食料を含めた多くの補給物資は失ってしまったが、運良く一番大事なものは失わずに済んだようだ。


 父親である国王からのプレゼントと言うのは、新調した全身鎧と武器だった。


 よほど全身鎧が好きなのかと思ったが、娘を心配する親バカな……親心の産物とも思えてきた。

 全身隈なく守れるようにという強い思いが、あるのではないだろうか。


 豪華な化粧箱から取り出された全身鎧は、ド派手で見事な鎧だった。


 深紅の鎧で、しかも少しメタリックに輝いている。

 中々にかっこいい。

 女性用のフォルムが際立っている。

 胸のところが強調されたデザインだ。


 今装着している鎧ではそれほどわからないが、もしかしたらファーネシーさんは、巨乳なのかもしれない。


 そしてデザインも洗練されていて、今の全身鎧よりは、ライトな感じだ。

 重装備感が薄くなっている。


 一部布のような素材が使われているので、フィット感というかスリム感があるんだよね。


 実際に装着してみないとわからないが、かなりスタイリッシュな感じではないだろうか。


 他の四人にも、同じデザインの鎧が新調されている。

 ただ色は、シルバーがベースで、両胸からへそのあたりにVの字にラインが入っている。

 ラインの色は、ブルー、イエロー、ピンク、グリーンとなっている。


 五人は、今装着してみたいと言って、着替えに行ってしまった。



 少しして、五人が再登場だ。


 やはり、ド派手だ!

 そして、かっこいい!


 予想した通り全身鎧とは言いつつも、フィット感スリム感があっていい感じだ。


 特に胸が強調されたデザインがすごい!


 みんな体にぴったりフィットすると喜んでいるが……この五人は、全員巨乳なのかもしれない。


 ちらっとそんなことを心の中で思っただけなのに、なぜかニアさんの『頭ポカポカ攻撃』が発動している。


 なぜにわかったの!? ……ニア、恐ろしい子……。


 それにしても、ファーネシーさんかっこいいな。

 全身が赤くメタリックに輝いている。

 他の四人もシルバーがメタリックに輝いているし、色違いのワンポイントがかっこいい。


 これを着て歩いたら、かなり目立つと思う。


 今までのような重装歩兵感は、だいぶ薄れているし、派手好きな冒険者に認められるんじゃないだろうか。


 ただ俺的には一つ問題がある。


 鎧のデザインが洗練されすぎていて、ついつい胸に目がいってしまうんだよなぁ。

 これは男の性だよね……?


 そう思いながら、チラッとニアさんを見ると……俺の心を察したらしく、すぐさま『頭ポカポカ攻撃』を発動した……トホホ。



 次に武器が出された。


 一つは、深紅のハルバードだ。

 長柄斧の先に槍の穂先もついてる形状の武器だ。


 ファーネシーさん用の武装だ。


 今までは、剣を使っていたそうなので、ハルバードも使いこなせるのか疑問に思ったが、彼女は幼い頃から訓練を積んでいて、一通りの武器は使いこなせるのだそうだ。


 セバスチャンさんの話によれば、国王が娘の身を案じて、少しでも敵と距離ができる槍系の武器で、調達させたとのことだ。


 ……やはり親バカっぽい匂いがプンプンする。

 というか……親バカ臭しかしない……。


 ビャクライン公爵と国王陛下のせいで、親バカ臭に敏感になってるんだよね。


 そんな事はどうでもいいが。


 他の四人の武器は、新調されていないようだ。


 ただ、魔法のライフル銃のようなものが三丁ある。


 これは、セバスチャンさんが知り合いの伝手つてを通じて、取り寄せたものらしい。


 セバスチャンさんは、元冒険者だけあってファーネシーさんのパーティーが、アンバランスなことを心配していたようだ。


 それで遠距離攻撃手段となるように、魔法のライフル銃を調達したとのことだ。


 セバスチャンさん曰く、弓を一から身に付けるよりは、魔法銃の方が早く使い物になるとのことだ。


 誰が使うかとかは、特に想定していないそうだ。


 ただできれば、新しいメンバーを追加して、その人に使わせた方がパーティーのバランスは良くなるだろうと言っていた。


 俺も全くその通りだと思う。





 ◇





 夕方になって、『冒険者ギルド』を訪れた。


 目的は、悪名高い『ドクロベルクラン』についての情報を集めるためだ。

 面接の時に、助けてほしいと頼ってきた冒険者を、ほっとくこともできないからね。


 早速、三階のギルド長室に向かう。


 ギルド長室の手前で、副ギルド長のハートリエルさんが出迎えてくれた。


 実は、念話で用件を伝えておいたのだ。


 彼女はもう『絆』メンバーだから、いつでも『念話』で連絡が取れるからね。


 ギルド長にも、話を通してくれている。


 出迎えてくれたハートリエルさんは、いつものツンとした冷たい感じに戻っていた。


 この前のデレっとした感じは、全く見せない。


 これが、ツンデレの真骨頂ってところなんだろうか?

 まぁそんなことは、どうでもいいが。


 ギルド長室に入ると、ギルド長と俺の担当の綺麗可愛い受付嬢リホリンちゃんと、綺麗セクシーな受付嬢ナナヨさんも、待っていた。


 何かの打ち合わせをしていたようだ。


「すみませんギルド長、お時間をいただいて。打ち合わせ中でしたか?」


「いやいや、いいのじゃ。クランの採用者も決めたようじゃのう?」


「はい、何とか絞りましたが、だいぶ多くなってしまいました」


「まぁそうじゃろうのう。聞いたぞ、Bランクパーティーの『闘雷武とらいぶ』が入ったそうじゃないか。まったくお前さんって奴は、どれだけ驚かせてくれるんじゃない。今朝から、ギルド職員も冒険者も、その話題で持ちきりじゃぞ」


 ギルド長が、愉快そうにニヤけながら言った。


「もう広まっているんですか?」


 俺は、そう言いつつ、リホリンちゃんとナナヨさんに視線を送った。


 彼女たちは、昨日手伝ってくれていたから『闘雷武とらいぶ』の皆さんが面接に来たことも知っているし、即決したことも知っている。


 彼女たちを責めるつもりはないが、噂の出所かと思って、つい見ちゃったんだよね。


 まぁ冷静に考えれば、掲示板に張り出ししてあるから、それを見た人が朝一で広めたっていう可能性もあるけどね。


 ちなみに彼女たちは、今日俺がいなかった時間帯に、選考結果を見に来てくれたらしい。


 だからある程度の報告は、ギルド長にも入っているはずだ。


「すみません。広めたってわけじゃないんですけど、冒険者の皆さんに訊かれちゃうもんですから。でも、昨日面接に来てた人たちが、『闘雷武とらいぶ』の皆さんを見てましたから、昨日の時点でその情報は、駆け巡ってたみたいです……」


 リホリンちゃんが、申し訳なさそうな顔で言った。


「いえ、別に責めてるわけじゃないですから、気にしないでください」


「『闘雷武とらいぶ』が、お前さんのクランに入ったのは、お前さんが思ってるよりも、はるかに凄いことなのじゃぞ。あやつらは、だいぶ変わっとってのう。孤高のパーティーとも言われておる。じゃから、本当に、衝撃の出来事なのじゃ!」


「そうなんですね。私も意外でしたけど、ほんとにありがたいことです」


 俺はそう言って、苦笑いをした。


 そんなに衝撃の出来事だったとは……。



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