1092.魔芯核の売却で、収支プラスです!
「ギルド長、もしよろしければ、『魔芯核』を今お渡ししてしまいたいのですが?」
俺は、改めてギルド長に許可を求めた。
「わ、わかった。受け取ろう」
ギルド長はそう言うと、俺を一番大きな応接室というか広い会議室に案内した。
ギルド長の指示に従い、大量の『魔芯核』を魔法カバンから出す体で『波動収納』から取り出した。
動ける職員を全て動員して、査定をしてくれるとの事だ。
『魔芯核』の買取は、ギルドの職員なら、やろうと思えば誰にでもできるのだそうだ。
買取基準が明確に決まっていて、大きさや色を判断する見本付きの査定基準表があるらしい。
査定を待ちながら、実際の手順を見せてもらうことにした。
査定基準表に出ている『魔芯核』の色合いは、まるで写真のようだ。
『精密画』スキルを持っている人が作ったに違いない。
ギルド長に確認したら、おそらくそうだろうとのことだ。
かなり昔から使っているもので、資料をみないと正確にはわからないと言っていたけどね。
査定の判断を容易にするために、他にも『魔芯核』の現物見本も用意されている。
判断に迷ったときの参考にするようだ。
今まであまり気にしたことがなかったが、『魔芯核』を改めて『波動鑑定』してみると、『魔芯核』と表示されている。
ふと気になって、詳細表示と念じてみたら……『イビル・バッファローの魔芯核』と表示された。
これには少し驚いた。
俺の『波動鑑定』で見ると、詳細表示が現れ、何の魔物の『魔芯核』だったのかがわかる。
通常の『鑑定』スキルでは、おそらく詳細表示は現れないだろう。
今までそんな話を聞いたことがないからね。
俺は、『共有スキル』にセットされている『鑑定』スキルでも試してみたが、詳細表示が見れてしまった。
だが、直感的に感じるが……おそらくスキルレベルが10だからだろう。
普通の人が持っているスキルレベルの『鑑定』では、おそらく詳細表示は見れないと思う。
これも、ギルド長に尋ねてみた。
『鑑定』スキルを持つ者が見ても、何の魔物の『魔芯核』かは、わからないはずだと言っていた。
やはり『鑑定』のスキルレベルが、一定以上高くないと無理なのだろう。
『階級』については、普通は『
ただ上位種になると、『
今まで気にしていなかったけど、そういうことのようだ。
キング魔物の『魔芯核』の『階級』は、『
ただギルド長の話では、『魔芯核』の買取価格をつける上で『階級』は必ずしも重要ではないとのことだ。
あくまで大きさや色合いが重要視されるらしい。
大きさは、もちろん量を表し、色合いは質を表すのだそうだ。
魔法道具を作る素材や動かす燃料としての意味合いから考えれば、確かに『階級』よりも量と質が大事なのだろう。
大体の場合は、『階級』が高ければ量も質も高くなるわけだが、場合によってはそうでもないらしい。
上位種の魔物でも、『魔芯核』のサイズが小さければ、通常種の魔物の『魔芯核』に、金額では劣るということが起きるそうだ。
今まであまり深く考えたことがなかったが、今回いろいろ勉強になった。
俺は、ギルド長にダメ元で、ギルドで使っている『魔芯核』の査定基準表をもらえないかとお願いしてみた。
「これはギルドの重要な資料じゃが……まぁいいじゃろう。
似たようなものも出回っておるしな。
闇取引に使われていたり、国によっては正規に買い取る商会が使っておったりするからの。
大量の魔物の買取も待ってもらっておるし、特別じゃ!」
ギルド長から、なんと、そんな返事が返ってきた!
超ラッキー!
一つもらってしまった!
そして査定が終わった。
一緒に査定の手順を見たり、ギルド長と話をしていたからか、思ったよりも早く終わった印象だ。
査定をお願いした俺の大量の『魔芯核』の内訳は……
○一昨日の迷宮都市への三方向からの魔物の襲撃の撃退による俺の取り分……猪魔物六十頭、バッファロー魔物百十二頭、鶏魔物百五十九体、ワニ魔物は七十体。
○昨日の迷宮内での『
○キング魔物四体……猪魔物のキング、バッファロー魔物のキング、鶏魔物のキング、ワニ魔物のキング、カエル魔物のキング
……となる。
査定結果は……
○通常の魔物を全て合わせると五百四十五体となり、『魔芯核』の合計買取金額は、千三百八十一万ゴルとなった。
○キング魔物四体の『魔芯核』の合計は、百六十万ゴルとなった。
すべて合計すると……千五百四十一万ゴルとなる。
……かなりの金額になってくれた。
さっき魔法道具店で、ハイテンションに任せ大人買いしてしまい千三百五万使ってきたが、その分を余裕で回収してしまった!
あんなに使ったのに、本日の収支がプラスというのは嬉しいね。
『魔芯核』の代金をいただいて、引き上げようと思っていたら、ギルド長に引き止められた。
「実はのう……『
「やはり過去には、あまり例のないことなんですか?」
「うーん、そこら辺のことを調べておるのじゃ。キングになるには、何か条件があるようでのう。レベルが上がれば自動的にキングになるということではないのじゃ」
「やはりそうなんですね。何かが起きているということですよね?」
「もちろん、それは間違いないのう。
長いギルドの歴史の中で、何度かあったようじゃ。
ただほとんどが、古い時代のもので、今のところ詳しい資料を見つけられておらん。そもそもないかも知れんしのう」
「今分かる範囲で、何か情報はありますか?」
「何者かが意図的に引き起こしている可能性、もしくは、この世界を襲っている大きな渦というか……異変による、いわば自然現象として起きている可能性、この二点が考えられる」
「なるほど……何者かが意図的に仕組んでいる可能性もあれば、自然現象の一種みたいな可能性もあるということですね」
「そうじゃ。もし仕組んでいるとしたら……やはり悪魔じゃろうのう。でも、仮にそうなら、なぜ直接攻撃しないのかのう?」
「そうですね……今まで悪魔と戦った経験や、調べたところによると、上位の強い悪魔ほど、簡単には実体化できないみたいです。
実体化のためには、大量に人の怨念が必要で、それを集めるために、人の邪念を利用したり、契約を結んで手駒にするようです。
だから裏で何かを仕掛けるというのは、奴らの常套手段です」
「なるほど……そうなのか。困ったもんじゃのう」
「そうですね。非常にいやらしい相手と言えますね」
「……それから、自然現象の一環と言えるかどうかわからんが、勇者の出現であったり、魔王の出現があったりする、まさに激動の時代には、魔物のキング種が多発することもあり得るらしい」
ギルド長が、付け加えてくれた。
まぁ完全に、激動の時代と言えるんだよね。
というか、『光柱の巫女』に降りた神託的に言えば、『魔の時代』だけどね。
そして、実際問題……一応、俺勇者だし、ていうか大勇者……。
そう考えると、今回のキング種の多発は、悪魔の仕業ではなく自然現象かもしれないけどね。
でも普通に考えたら、『
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